↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
3/27

3 エイジとブブたん

 地面に広がった破片が消えていく、そして何かが残った。


 小銅貨だ!

 いっぱい転がっている。


「な、なんで!?」

 僕は慌てて拾い集めた。


「どういう仕組みなんだよぉぉぉ!」

 叫びながらも手は止まらない。


 お金はポケットに押し込んだ。

 今の僕には、大切な命綱だ。


 雑貨屋を見つけて、コップと水筒、皮の鞄が買えた。


 出費は小銀貨1枚、1000ガルだ。


 少年から水も買うことができた。


 恐る恐る飲んでみる。

 無味無臭……たぶん安全。


 目の前で水売りの少年が立ち上がったので、なんとなく声を掛ける。


「もう閉店なの?」

「これは暇つぶし。今からダンジョン」


「冒険者なんだ! ねえ、高難易度ダンジョンってどれくらいあるの?」

「Sクラスだけで十数はある」


「マジで!?」

 それ全部攻略するのに何年かかるんだよ。


 しかも高難易度ダンジョンなんて、きっと命がけだ。

 義彦たち、大丈夫なんだろうか。


 心配したけど、心のどこかで……


 僕と藤崎君。

 ハズレスキルで、むしろ助かったのかもしれない。


 そんな情けないことを、考えてしまった。


 ◇


 ブタの貯金箱をもう一度召喚。

 鞄に入れて、日が暮れるまでぼんやり、ただ歩いていた。


 ゲームの中みたいに【冒険者ギルド】もあった。


 改めて実感。

 ――本当に異世界なんだ。


 通りを歩く人たちの中には獣の耳や尻尾を持つ獣人までいる。

 ジッと見ていると睨まれた。


 怖い。

 暗くなる前に宿を探そう。安くて清潔な宿を。


 そう思って歩いていると――


「キャンキャン!」


 後ろから犬の鳴き声が聞こえた。

 振り返ると、灰色の子犬が全力で走って来る。


「あれ……藤崎君?」


 僕が手を広げると、子犬は迷わず飛び込んできた。


「わっ!」


 胸に収まった小さな体は温かい。

 息を切らしながら僕にしがみついている。


 あの藤崎君が、今は僕の腕の中にいる。

 ……不思議な気分だった。


「大丈夫?」


 僕は慌てて水を差し出した。

 ペチャペチャと水を舐める姿が、反則級に可愛い。


 水を飲み終わると子犬の体がふわりと光る。

 次の瞬間、藤崎君の姿に戻っていた。


 良かった! 裸じゃない!

 衣服を着ている。


 貯金箱といい、ホントどういう仕組みなんだ?

 まあいいけど。


「やっと見つけた……」

 藤崎君はニッと笑う。


「僕を追いかけて来たの?」


 近くで見ると、本当に綺麗な顔なんだよ。

 同じ男子なのに、見惚れてしまう。


「匂いを追ってね。30分で戻るんだ。クールタイムもそれくらい」


「30分は犬のまま?」

「ああ。クソスキルだよ。小犬なんて最低だ」


 30分しか変身できないという理由で、彼も追放されたらしい。


 僕も追放されてからの出来事を話した。


「お金が手に入るスキル!? 凄いじゃん!」


「でも小銅貨だけだよ」


「それでも羨ましいよ。犬よりずっといい」


 そんなことない。

 犬の藤崎君、すごく可愛いし。

 ……さすがに言えないけど。


「とりあえず宿を探そう。藤崎君が一緒だと安心する」


「俺は番犬にもならないけど? 寄生していいのか?」


「クラスメイトだもん。いいに決まってる」


 一人ぼっちじゃなくてよかった。



 少し歩くと、藤崎君が足を止める。


 一泊1500ガル、朝夕食付きの宿。


「ここ、清潔な匂いがする」

「分かるの?」


「嗅覚が鋭くなったみたいなんだ」

「そっか」


 僕たちはその宿に入り、二人部屋を取った。

 朝夕食事付きだ。


 早速、ブタの貯金箱を取り出してひっくり返す。


 ジャラジャラジャラ!

 大量の小銅貨が床に落ちた。


 二人で数えると3275枚! 明日の宿代にはなる。


 藤崎君は首を傾げた。


「貯金箱の容量以上のお金が入ってないか?」


「魔法の貯金箱なので底なしなのかもね。3275、これ、歩き回った歩数くらいじゃないかな」


「じゃあ試してみよう」


 藤崎君に言われ、僕は部屋の中を歩いた──25歩。


 すると。

 中には25枚の小銅貨が入っていた。

「やっぱりだ。一歩で小銅貨が1枚手に入る」


「面白いな、へへっ」


 彼の笑顔に胸が弾む。

 学校では遠い存在だったのに、今は同じ部屋で話しているなんて。


「俺の歩数も、加えられたらいいのに」

「冒険者になって、パーティー組んだらどうかな」

「いいね、試してみよう」


 僕は貯金箱に「ブブたん」と名前を付けた。

 母さんの愛猫の名前だ。


「じゃあ俺のこと、エイジって呼んでよ」

「う、うん」


「よろしく、唯斗」

「よろしく、エイジ」


 僕達は拳を軽くぶつけ合った。


 追放された時の絶望は、かなり薄れていた。


 エイジがいる。

 お金も増える。


 明日にはもっと色々分かるはずだ。


 異世界生活を二人で乗り切るんだ。


 ――ああ、お金って本当にありがたい。


 ありがとう、ブブたん。


読んでいただいて、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。