49 宿敵の登場
ダンジョン攻略を再開して1週間が過ぎた。残り1253日。
カウ将軍の指導のおかげで、僕とロイの剣の腕もかなり上達していた。
そんな中、クーの父ちゃんが解放されたと連絡が入り、クーは急いで父ちゃんに会いに行った。
獣人国のプリンセスも快方に向かっているらしい。おまけに、僕たちは5千万ガルを報酬として受け取った。
「へぇ、祥子はちゃんと真面目にやったんだな」
「成功して良かったよ。問題が1つクリアーだ」
ところが、新たな問題が発生していた。
祥子が獣人国の城に居座り、ノクティルム王国への帰還を拒否しているらしい。
「あ……、レベル上げにウンザリしたんだろうな」
「多分ね。薬を調合しただけでVIP待遇。そりゃ帰りたくないだろうね」
そのせいで、ノクティルム王国と獣人国が揉めている。
獣人国は祥子本人の意思を尊重すると主張。対するノクティルム王国側は、カンカンに怒っているそうだ。
「勇者PTのレベル上げが中断されるのは良いことだ」
「祥子と連絡が取りたいけどな」
エイジは眉をひそめた。
「王国に俺たちの生存が知られないか?」
「彼女に”死に戻り”の件だけでも伝えたいんだけど」
「ん……祥子は、自分勝手だからイマイチ信用できない」
「……うん」
エイジにそう言われても、祥子が獣人国にいる間だけが、チャンスな気がした。
今夜手紙でも書いてみようと、僕は考えた。
◇
クーもいないことだし、資金調達のためにAクラスダンジョンへ向かうことにした。
「今日はカウ将軍はいないのですか?」
ロイが尋ねる。
「ああ、いないな。アイツ、口うるさいから静かでいいじゃん」
「……そうですか」
ロイはちょっと残念そうだ。
僕たちは気軽に〈鉱石ダンジョン〉へ入っていった。
ここでは悪魔作業員たちが、地上では手に入らない貴重な鉱石を慎重に採掘している。時々ゴーレムが襲ってくるけど、退治係が作業員たちを守っていた。
僕たちはモンスターを倒しながら、どんどん奥へ進んでいく。
数十分で、1階の中ボス部屋に到着。ボスゴーレムをあっさり倒し、ドロップ品を回収した。
「うーん、Aクラスだと全然物足りないね」
「ワン!」
ワンコが吠えた、その時だった──
「あら、強くなったものね」
背後から聞き覚えのある声。
宿敵の登場だ。
手下を十数人も引き連れたゴリアドが、ボス部屋の出口を塞いでいた。
「ゴリアド!」
「これ以上強くなっちゃ困るわ。大人しくするようエバ様に言われなかった?」
「何しに来たんだ!」
「坊やたちの確保に決まってるでしょ?」
ゴリアドはカウ将軍がいないこの時を狙っていたのかもしれない。
「それ、魔王も承知しているのか?」
「ふふ、ダンジョン内は無法地帯。何が起こっても、魔王様すら関係ないのよ」
ゴリアドはエイジが魔王の息子だとは、知らないんだな。
まだ実力差はある。人数でも負けている。それでも、以前のような恐怖は感じなかった。
ちょうどいい。
この無法地帯で決着をつけてやる!
メンバーとの連携は完璧だ。
フィルが召喚獣を呼び出すと、僕はスキルを発動した。
「速歩!」
一気に加速し、まずは後方にいる手下たちを狙う。動きを封じてから、最後にゴリアドを全力で叩く作戦だ。
メンバーたちも一斉に動き出した。
ところが、僕はすぐに違和感を覚えた。
いつもなら〈速歩〉を使えば敵はほぼ静止して見える。それなのに、ゴリアドたちはゆっくりと僕たちに向かってくる。
「あっちも、素早さのバフを重ね掛けしているようです」
「そうみたいだね。エゴ様、敵を殺さないよう実力30%くらいで」
「ムッ……」
不満そうな唸り声が聞こえた。
人が相手だと、手加減して倒さなければならない。全力で攻撃するより、よっぽど難しい。
僕は勇者の剣を、ブブたんに交代した。
「ブブたん、頼む!」
狙うのは敵の手足。動きを封じるため、次々とブブレーザーを撃ち込んでいく。
ところが――。
キーン!
突然、耳鳴りがした。
その瞬間、〈速歩〉が強制的に解除されてしまった。
さらに、ゴリアド側から〈口封じ〉まで飛んでくるが、15秒だ、問題ない。
さすがSクラス冒険者。簡単には勝たせてくれないようだ。
ゴリアドは余裕たっぷりに、パンパンと手を叩いた。
「なんだか凄いスキルを持ってるじゃない。ところで、ダーリンはどこよ?」
ダーリンって……エイジのことか?
目の前にいるのにな。
「グルゥ……グワアアッ!」
猛然とケルベロスに変身したエイジがゴリアドに飛び掛かった。しかし、ゴリアドは片手でケルベロスをあっさりと跳ねのけた。
「生意気な犬ね。ダーリンがいないなら容赦しないわ! 皆殺しよ!」
興奮したゴリアドの顔が真っ赤に染まる。
ここからが、本当の勝負だ。
読んでいただいて、ありがとうございました。




