50 ゴリアドの最後
ゴリアドの全身が赤く染まっていく。
ブワッ!!
突然、ゴリアドの体が大きく膨れ上がった。
みるみる巨大化し、元の倍以上の大きさになる。バトルスーツは弾け飛び、全身から凶暴な気配が噴き出していた。
「ガァァアアアーーーー!!」
巨大ゴリラと化したゴリアドが咆哮を上げ、両腕でドシドシと胸を叩く。自分を奮い立たせているようだ。
「バーサク?」
ラスがつぶやいた。
なるほど。凶暴化するスキルか。
もう遠慮している場合じゃない。
「一気に片を付ける! 思いっきりやれ!」
僕が叫んだ直後、敵の魔法攻撃が一斉に飛んできた。
炎と雷が僕たちに迫る。
でも、ブブたんの〈攻撃魔法2倍返しシールド〉が発動!
飛んできた魔法がそのまま跳ね返り、敵陣を直撃した。
「ぎやぁあああ!」
悲鳴とともに数名が倒れる。
すかさずフィルのタランチュラが蜘蛛の糸を吐き出した。倒れた敵だけでなく、周囲の手下たちまで次々と絡め取り、動きを封じていく。
「速歩!」
「絶対零度!」
ラスが広範囲に氷魔法を放った。
冷気がボス部屋を駆け抜け、敵の足元を一瞬で凍らせる。
敵の魔法防御が強力なせいか、全身までは凍らせきれなかった。けれど、動きは止まった。
そこへ召喚獣たちとロイが突っ込む。
ロイはエゴ様で敵の武器を弾き飛ばし、召喚獣たちも連携して手下を次々と捕縛。
あっという間に敵の数が減っていく。
危険なのは、凶暴化したゴリアドだけだ。
ケルベロスがゴリアドを牽制し続けてくれているが、繰り出される強力な拳を食らえば死ぬかもしれない。
「なぜ〈速歩〉の効果が薄いんだ?」
「こっちにデバフが重ね掛けされているみたいです」
キーン!
嫌な耳鳴りがして、また〈速歩〉が解除された。
その瞬間、ゴリアドが巨大な腕を振り回す。
ドゴッ!!
強烈なブローが、ケルベロスの横腹にめり込んだ。
まともに食らったケルベロスが地面に倒れ、血を吐く。
ゴリアドはとどめを刺そうと、拳を振り上げた。
「ブブカッター!」
縦横無尽に飛び交うレーザーの刃が、ゴリアドに襲いかかる。
けれどゴリアドはすぐさま気づき、高くジャンプして回避した。
「ガアァァァアア!」
咆哮を上げたゴリアドが、今度は僕を標的に定める。
そして、再び天井近くまで大きくジャンプした!
僕はブブたんから勇者の剣に持ち替え、迫り来るゴリアドに剣先を向ける。
牙を剥き出して、巨大な体が上空から落ちてくる。
ゴリアドの拳が、僕に触れる──そのほんのわずかな瞬間。
僕は体を捻って、剣を大きく振り抜いた。
「一閃!」
ザシュッ!
手元に、確かな手ごたえ。
地響きと共に、ゴリアドの巨大な体が地面にめり込んだ。
ボトッと僕の足元に転がったのは、ゴリアドの巨大な片腕。
僕はその腕に、容赦なく剣を突き刺した。
直後、ケルベロスの〈凶悪ブレス〉がゴリアドを呑み込む。
これは即死スキルだ。
すぐにロイはゴリアドに駆け寄る。
「気絶しただけです。ゴリアドには即死回避スキルがあるのですね」
「チッ!」
ラスはゴリアドの尻を思いっきり蹴った。
◇
ゴリアドと手下たちは、全員タランチュラの糸でぐるぐる巻きにされていた。顔だけ飛び出した、まるで大きな繭だ。
「あんた達、このままじゃすまないわよ! 解放しなきゃ許さないから!」
ゴリアドは捕まったあとも、ギャーギャーと文句を垂れ続けている。
「うーん、この始末はどうしよう」
「若様を狙ったんです。カウ将軍に差し出せばどうですか」
「残った腕も、斬り落とせばいい」
よほど恨みが溜まっていたのか、ラスは物騒なことを口にした。
「〈速歩〉がなきゃ、危なかったな」
フィルが思い出すようにつぶやき、タバコの煙を吐いた。
──まったくだ。
けれど、〈速歩〉は2度もすぐに解除されてしまった。
「アルカード戦で分かっていたのに、手を打たなかった。今後は何か策を練らないと」
「ク~ン……」
ワンコも自分の力不足を感じているのか、しょんぼりと耳を下げていた。
僕はポンポンと頭を撫でてやる。
そこへ、カウ将軍がやってきた。
現場の状況に、驚いた顔で足が止まる。
「何があったのだ?」
ロイが答えた。
「ゴリアドファミリーに襲われました。若様を捕獲しに来たのです」
「若を? 何と無礼な!」
次の瞬間、カウ将軍が容赦なく大剣を振り上げた。
ザンッ!
捕縛されていた手下たちの首が、次々と宙を舞う。
「将軍!」
僕は慌てて止めようとしたけれど、間に合わなかった。
仲間を皆殺しにされたゴリアドは、顔を歪め、捕縛された体をジタバタさせている。
「ちょっと! こんなの許されないわよ!」
「黙れ!」
「いやぁあああ──助けて!」
叫ぶゴリアドの体を、カウ将軍は一刀両断に斬り裂いた。
ドロッと大量の血が地面を赤く染めていく。
あまりの残酷さに、僕たちは誰も動けない。
「ふん! 当然の報いだ」
「こ、殺さずとも……」
「奴隷よ。主が襲われて、貴様がケリを付けずしてどうする!」
「ぐっ……!」
ロイはうなだれて、肩を落とした。
「僕は、できれば……殺したくなかった」
「甘い!」
一蹴された。
そうか。
これこそが、カウ悪魔大将軍の本性なんだ。
今まで、彼が冷酷な悪魔だということを、僕は忘れていた。
胸の中に嫌なモヤモヤは残る。
しかし、ゴリアドだって僕らを皆殺しにしようとした。
これはゴリアドが選んだ結末だ。
読んでいただいて、ありがとうございました。




