48 ダンジョン攻略再開
3時間後、獣人国王都に到着。
カウ将軍のおかげで、僕たちは難なく獣人国の城に入り、獣人国王に謁見できた。
やはり、獣人国は魔族と深いつながりがあるようだ。
交渉はカウ将軍に任せた。
【完全なドラゴンの心臓】を献上する代わりに、クーのとーちゃんの罪を赦してもらう。
ただし、条件があった。
「プリンセスの奇病が完治すること」
結果次第ではあるけれど、僕には成功する自信があった。
「薬の調合は、異世界の聖女が行えば成功します」
そう付け加えることを、僕は忘れなかった。
プリンセスの奇病は、時間が経つにつれて生気を失い、容姿まで老人のように変わってしまう。まるで呪いのような病だ。
前世のキョウヤの記憶によれば、かつて僕の仲間もこの病にかかった。
当時は不治の病とされていたが、聖女が【ドラゴンの心臓】から薬を作り、治療に成功したんだ。
普通の薬師ではダメだ。
《《祥子》》に調合してもらう必要がある。
できれば祥子と連絡を取りたかった。
でも、僕とエイジは死んだことになっている。
祥子たちは、そのことを知らされただろうか。
僕たちの死を、クラスメイトたちはどう思うだろうか?
前世では裏切られた。
それでも、今のクラスメイトたちまで恨むのは違う気がした。
◇
地底帝国に戻った僕たちは、獣人国からの連絡を待つことにした。
クーのとーちゃんは労役から解放されたものの、まだ犯罪者として監獄に収監されている。
「とーちゃんは解放されますか?」
「うん。大丈夫」
祥子は一応、聖女だ。 治癒薬の調合も、きっと成功させてくれる。
成功すれば、獣人国からたっぷり褒美がもらえるはずだ。だから、張り切って調合するに違いない。
さて、今日からは地底帝国のダンジョン攻略だ。
ここにはギルドがなく、カードも意味をなさない。
ダンジョンは多数あるが、すべて自己責任。内部は無法地帯と言ってもいい。
アルカードの城では、最初から格上のボス部屋に放り込まれるという鬼畜訓練を受けた。そのおかげで、僕たちのレベルはどんどん上がった。
「Sクラスダンジョンに行こうぜ」
エイジはやる気満々だ。
「でもなぁ……ガル不足なんだよねぇ」
歩いたり、アイテムや予備の装備品を換金したりして、なんとか500万ガルを確保した。
「【速歩】5回分だな。問題ないじゃん」
「50分は無敵だもんね。よし! ブブたんは剣に変身だ」
カウ将軍も同行し、僕たちは〈太陽のダンジョン〉に入った。
名前の通り、太陽が輝くダンジョン。転移した先は、白い砂浜だった。
海に囲まれた巨大な島。その内部にはジャングルが広がり、爬虫類モンスターが待ち構えている。
そして、海からは半魚人モンスターが現れる。
どいつもレベル170以上だ。
僕たちの気配を察したのか、無数の半魚人が海からぞろぞろと上がってきた。
「唯斗。ブブカッター使えば早くないか?」
「そうだけど。勇者の剣をまだ試してないだろう?」
僕は半魚人の群れに向かって、大きく剣を振った。
それだけで、数十体のモンスターが風圧に吹き飛ばされる。
続いて、ケルベロスの火炎攻撃! さらにロイの無双連撃が炸裂した。
「この程度なら【速歩】は必要ない!」
勇者の剣がわずかに触れただけで、モンスターは消し炭となって消えていく。
これは気持ちいい!
調子が出てきた、その時だった。
「勇者殿の腕は初心者程度。そっちの奴隷も剣の性能に頼っている」
カウ将軍の厳しい声が飛んできた。
「貴重な剣が台無しだ。見ていろ」
そう言って、カウ将軍は大剣を構えた。
咆哮を上げて迫る半魚人の群れ。
カウ将軍は大剣を軽々と振り回し、最小限の動きで敵の攻撃を紙一重でかわしていく。
滑らかなステップで群れの中心に飛び込むと、回転の勢いを乗せた一閃が円を描いた。
次の瞬間、半魚人たちが次々と砂浜に崩れ落ちた。
無駄のない動き。完璧な間合いと重心移動。
カウ将軍は、恐るべき剣豪だった。
「勇者キョウヤはこの程度では、無かったがな?」
カウ将軍はニヤリと笑い、僕を挑発した。
「確かに僕は初心者だ。でも、まだまだこれからだ!」
「エゴ様にも恥じぬよう、私も腕を磨きます!」
僕とロイも、敵の群れへと飛び込んだ。
キョウヤの記憶が戻ったのは幸いだった。
魔王軍との過酷な戦い。その感触が、僕の中によみがえってくる。
あの頃、ブブたんはいなかった。
頼れるのは自分の腕だけ。ひたすら己を鍛え、敵を倒しながら突き進んだ日々。
あの経験が、今の僕の中にある。
キョウヤを超えてみせる。
最強の勇者になってやる!
読んでいただいて、ありがとうございました。




