47 対立の理由
皆で城下街に出た。多くの店が立ち並んで、人の街と変わりはない。エイジと並んで空を見上げると、遥か上空から光が差し込んでいた。
「地上の太陽の光だな」
「あっちにも。……地底って言っても、真っ暗な世界じゃないんだね」
外灯もある。
街を歩いていると――
「とーちゃん……」
クーが突然、立ち止まった。
視線の先にいたのは、クーと同じピンクブロンドの男性。
大きな荷物を肩に担ぎ、足には足枷が付けられている。
「ど、奴隷になってたの?」
「クーか?」
「とーちゃん! 何やってるんだよ!」
「獣人国で大失敗してな。ここに追放されたんだ」
バシッ!
いきなり監視係の鞭が、クーのとーちゃんを打ち付ける。
「足を止めるな、荷をさっさと運べ!」
「クー、とーちゃんは、もう地上には戻れない」
「何やらかしたんだよ」
「さっさと歩け!」
監視に遮られ、クーのとーちゃんは荷を担いで遠ざかっていった。
「ぅう……。ユイトさん、とーちゃんを助けて。お願いします!」
「獣人国か……」
クーのためにも、なんとか父親を救ってあげたい。
調べてみると、クーの父親は商人として魔族や獣人と取引していたらしい。
2年前、獣人国のプリンセスが奇病にかかった。
治療に必要なのは【ドラゴンの心臓】。
偶然それを手に入れたクーの父親は、獣人国王に献上した。
ところが――。
プリンセスの容態は、逆に悪化してしまった。
「それで奴隷に落とされ、追放されたのか」
「家族を捨てたんじゃなかったんだ……」
気の毒な話だ。
でも、気になることがある。
獣人国はクーの父親を地底帝国へ追放した。
つまり、獣人国と魔族は深く繋がっているってことだ。
「【完全なドラゴンの心臓】あったよね」
「ん」
ラスが収納バッグを掲げた。
正直、ゴリアドの国には行きたくないけど……クーの父ちゃんもプリンセスも救える可能性がある。
「行こうか」
皆も頷いた。
こうして僕たちは、獣人国へ急ぐことになった。
◇◆◆◇◇◆◆◇
目の前には、獣人王国へ向かう魔法陣があった。
案内役として、カウ悪魔大将軍も同行するらしい。
いかつい姿。三国志の関羽に角が生えたような悪魔だ。
レベルは……
おっと!
鑑定を弾かれた。
これはかなりの実力者っぽいぞ。
「拙者、若をお守りするよう命じられております」
「そうか。お前もあとでPTに入って歩数を稼げ」
「はっ……?」
ロイがクスクス笑う。
「悪魔族はギルドに加入していないので無理ですよ。若様」
「うっ……若様って呼ぶな!」
──エイジに見張りが付いた。
たぶん、魔王はヴァエルの復活を諦めていない。
今は様子を見ているだけなんだろう。
エイジを守って、一緒に日本へ帰る。
目標はそれだけじゃない。
お金を貯める。
クーの父親を救う。
SSSクラスになって、エバ様を超える。
ゴリアドを倒す。
義彦たちと連絡を取る。
そして最後、無事に日本へ帰る!
……やること、いっぱいだ~。
◇
獣人国の城に繋がると思っていたのに、転移した先はオウレリアン族のピラミッドの中だった。
まあ、そうだよな。
いきなり魔族に城を襲われ、占領されたらたまったものじゃない。
クーのかーちゃんに事情を説明し、僕たちは樹海を抜けた。
フィルに幌馬車を用意してもらい、100キロ先の獣人国王都を目指す。
移動中、カウ将軍が話せる範囲で質問に答えてくれた。
なぜ異世界勇者は地球で転生するのか?
──赤子のうちに魔族に襲われないためだ。これは予想通り。
それより気になるのは、ギルドと王国が対立している理由だ。
魔族と停戦中なのに、わざわざ勇者召喚まで行うほどの対立。その原因を知りたかった。
カウ将軍はニヤリと笑って、「男だ」と言った。
「男をめぐる、ラリア王女とエバの対立なのだ」
──ノクティルム王国には麗しい宮廷楽師がいた。
ラリア王女のお気に入りで、王女は彼を一生、傍に置こうと考えていたらしい。
ところが、宮廷楽師は王女を恐れて逃げ出し、エバ様に助けを求めた。
「男はエバの〈ファミリー〉に入ったのだ。もう王女すら手出しできない」
「それで高難易度ダンジョンを封印を考えたの?」
「稼ぎが悪ければ、ファミリーは解散なのだ。エバの勢力を削ぎ、男を取り戻したいのだろう」
僕は開いた口がふさがらなかった。
「そんなくだらない理由で召喚されたのか」
「ふざけやがって!」
怒りを露わにするエイジに、カウ将軍は平然と告げた。
「人族が争う今こそ好機。若、お戻りになって地上を制覇なされ!」
「するわけないだろう!」
「ふむ、それも良し。……魔王様は、どうせ近いうちに人族は分裂し、自然と崩壊するとお考えなのだから」
……そうかもしれない。
地球だって似たようなものだ。
同じ人間同士なのに、争いが絶えない。
人族と魔族の間を行き交う獣人国。
魔族が動き出せば、獣人国も人族の敵になるかもしれない。
王国とギルド、対立なんかしている場合じゃないのに。
読んでいただいて、ありがとうございました。




