43 ブブたんの最終進化
──どうしよう?!
ピンチは続く。
エイジの変身は解けてしまった。
ラスは魔力も、魔力回復薬も尽きている。
なのに、美女たちは疲れる様子もなく襲いかかって来る。
アルカードの剣が、何度も僕に叩き込まれる。
僕は必死に受け止めるだけで、反撃する余裕がない。
どうすれば……こいつらを倒せるんだ!?
その時だった。
頭上にいたブブたんが、ブルブルと激しく震え始めた。
震動が僕の身体に伝わって──
全身が熱い!
「っ! どうしたのブブたん!?」
次の瞬間。
ブブたんがアルカードめがけて、ブブカッターを放った。
アルカードは霧となって消える。
そしてブブたんは、僕の目の前へ降りてきた。
「ブブたん?」
突然、その身体が強烈な光を放つ。
太陽のような眩しい光が、ブブたんからあふれ出した。
その光の中から現れたのは――。
輝く黄金の剣。
この瞬間、ブブたんは、ついに最終進化を遂げた。
僕はウルツァイトソードを地面に置き、美しい黄金の剣を手に取る。
「ブブたんが……剣に変化した?」
柄は、ブブたんと同じピンク色。
剣を軽く振ってみる。
不思議だ。
初めて持ったはずなのに、妙に手になじんで、懐かしい。
ずっと前から、この剣を握っていたような感覚だった。
その時、アルカードが復活した。
僕は黄金の剣を構える。
けれど――。
「お待ちください」
アルカードから戦意が消えていた。
「その剣で倒されると、私はもう復活できないのです」
「この剣を知ってるの?」
「ええ。それは勇者の剣。しかし……不思議だ。どうしてあのような姿だったのか」
──勇者の剣?!
「ホントに? これが勇者の剣?」
「聖なる力を感じます。我々を滅ぼす剣です」
それが、どうして貯金箱だったんだ?
(あれかな……)
城に召喚された時。
元の世界に戻る時に報酬をもらえると聞いて、僕は〈金塊〉が欲しいと思った。
もしかして、そのせい?
戦いは中断、みんなが僕の周りに集まってくる。
「勇者の剣? 俺はてっきり義彦が手にすると思っていた」
「うん。僕も」
アルカードが肩を竦めた。
「確かに勇者の剣なのですが……絶望的に魔力が劣る。勇者殿と剣は能力が連動していますから」
「あ、僕は魔力が無いんです」
「馬鹿な!!」
だって、僕もブブたんも、ガルを消費してスキルを使っている。
「そのような勇者など、聞いたことがない……」
アルカードは、すっかり呆れた顔になっていた。
「魔力はガルなんだから、貯金を増やせばいいのかな」
「正解かもな。剣の黄金色って、金貨の色じゃね? 別名『ガルソード』だな」
エイジがケラケラ笑う。
勇者の剣が、ポン! とブブたんの姿に戻った。
ブッブブブブブーーッツ!
……怒ってる。
「へへ、元の貯金箱に戻った」
「ブブたん、貯金箱の姿でずっと僕を守ってくれていたんだね。ありがとう」
ブブブブ……。
エゴ様みたいに、話せたらいいのにな。
「あの、それで、この戦いはどうなるんでしょうか?」
ロイが控えめに尋ねる。
「皆さんのレベルを確認しただけです。まあまあ、といったところでしょう」
「本気ではなかったのですか?」
「ちょっと遊んだだけです」
……こっちは必死だったのに。
遊ばれていたなんて、ムカつく!
でも、彼のおかげで勇者の剣も発現した。
(まさか、それが狙いだった?)
アルカードは秘密主義だから、真相は分からないや。
「ここはもう卒業です。地底の帝国へご案内しましょう」
「地底の帝国……」
胸が高鳴った。
ついに行ける。
魔王に会えるんだ!
これまでずっと気になっていたこと。
全部、分かるかもしれない。
僕たちは、アルカードの城へ戻った。
勇者の剣を最強にするには、金貨が必要だ。
今の貯金は、3億ガルくらい。
するとアルカードが、自分の持っていた高価な飾り物を寄付してくれた。
これは、僕の仲間である若様への忖度だ。
換金すると、
ブブたんの貯金は、一気に55億ガルになった。
……それでも、歴代の勇者と比べると、僕はかなり劣るらしい。
歴代勇者ってどれだけ凄いんだよ……。
アルカードに案内され、僕たちは別の部屋へ向かった。
そこにも、大きな魔法陣が描かれていた。
「魔王様がお待ちです。お送りしましょう」
アルカードとは、ここでお別れだ。
彼は守護者だから、この城を離れることはできない。
「若様が戻られて、皆はさぞ喜ぶことでしょう」
アルカードは、そう言って僕たちに背を向けた。
若様の正体も、きっと分かる。
なぜ召喚されたのが、僕らだったのか。
そして、元の世界に帰る方法も。
「行こう!」
魔法陣の上に立った。
魔王がいる地底の帝国へ。
ついに僕たちは、飛んだ。
読んでいただいて、ありがとうございました。




