42 義彦の聖剣 / ブブたんが静止した日
★義彦視点★
俺たちはようやくLv70になった。
待ちに待った聖剣が、ついに俺の手に入るんだ。
エクスカリバー?
それともデュランダルか?
考えるだけで胸が高鳴る。
俺が最強の勇者になる日が、ついに来た!
城に戻ると、ラリア王女が聖剣を手にして俺を待っていた。
「膝を付きなさい」
相変わらず高慢ちきな女だ。
だが、今は我慢してやる。
俺は膝を付き、ありがたく聖剣を受け取った。
「やった! 最強の剣だ! 俺が最強の勇者だ!」
「まだレベルはたったの70です。もっと強くなりなさい」
いちいち嫌なことを言う女だ。
今は許してやる。
いつかラリア王女も、俺の前にひれ伏す時が来るんだからな。
上機嫌でいると、ムー将軍がやって来た。
「それは最強の剣ではありません」
「はぁあ?!」
「勇者の剣が最強なのです」
くっそ!
勘違いして、王女の前で恥をかいちまった。
「じゃあ、勇者の剣はどこにあんだよ!」
「分からない。勇者の剣は《真の勇者》を選ぶのです。いつか、義彦殿が選ばれることを願います」
「マジか……」
一気にテンションが下がった。
その時。
「唯斗……」
なぜか唯斗の顔が浮かんだ。
理由は分からない。
ただ、ふと浮かんだんだ。
「ユイトが選ばれることはありません」
「ああ、貯金箱だもんな」
「選ばれるのは義彦殿しかいません」
ムー将軍。
たまには嬉しいことを言いやがる。
「その聖剣は、勇者の剣を模倣した剣。今のところ最強です」
「そうなのか?」
俺のテンションが、少しだけ戻った。
そうだ。
いつか必ず、勇者の剣を手に入れてやる。
そしてユイトと藤崎を探し出して、勇者の剣を見せびらかしてやるんだ。
その時が、今から待ち遠しいぜ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
異世界生活……180日……たぶん。
ここは、ずっと夜の世界だ。
ダンジョンに何度も潜っているうちに、日数もだんだん曖昧になってきた。
手厚いもてなしを受け、城での生活は快適だ。
ダンジョン攻略も、今では【速歩】なしで進めるようになった。
無我夢中でレベル上げを続けていると、僕とエイジはLv100に到達した。
エイジは【高速自動回復】が【超高速完全自動回復】に進化。
体力に加え、身体・精神異常までも超高速で回復できるようになった。
僕は、全ステータスが大幅に上昇した。
クーはLv75。
スキル【パメル】は馬鹿力で殴り倒す。
ラスはLv102。
ロイはLv105。
二人には新しいスキルの発現はない。
◇
この日も僕たちは、ダンジョンへ向かう魔法陣に乗った。
転移した先──
「ここは……」
僕が最初に飛ばされた、あのコロシアムだ。
ギロチン台。
十字架。
あの日と同じものが、そこにある。
ただし、処刑執行人の姿はない。
今や、処刑執行人は頼もしい仲間だ。
僕たちは彼を「アーメット」と呼んでいる。
「ここは苦戦したな」
〈口封じ〉は、もう怖くない。
エイジの【超高速完全自動回復】なら15秒で解除できる。
「ボスはどこだ?」
エイジがワンコ・ケルベロスに変身して【察知】した。
「グルゥウウ!」
上空に向かって、炎のブレスを吐き出す。
炎の中から、7匹の蝙蝠が飛び出してきた。
そして次々と、その姿を変えた。
現れたのは、
僕たちの世話をしてくれていた6人の美女たち。
そして、アルカード。
「これはどういう事ですか?」
僕が尋ねると、アルカードは答えた。
「この城自体がダンジョン。そしてこの私が守護者です」
「貴方が、本当のラスボスってこと?」
「いいえ。ラスボス達を統括する者」
──アルカードの城はダンジョンで、彼は守護者?
「それで、どうするの?」
「戦いましょう!」
アルカードが宣言すると〈口封じ〉が飛んできた。
同時に、6人の美女たちが斧や剣を振り上げ、一斉に襲いかかってくる。
さらに――。
僕とロイの身体がふわりと浮いて、ギロチン台と十字架へ引き寄せられる。
エゴ様が十字架を真っ二つ。
ギロチン台はブブカッターが切り裂いた。
ブブたんに〈口封じ〉は通じない。
僕とブブたんの心は繋がっている。
だけど、ブブたんは僕の相棒として独立した存在だ。
僕はずっと、ブブカッターは自分のスキルだと思っていた。
違った。
それは、ブブたん自身のスキルだった。
トリセツがないから、こういうことがややこしいんだよ。
口の違和感が消えた。
「【速歩】!」
ロイが一気に踏み込み、美女を2人まとめて斬り捨てる。
倒れた美女たちの姿は消滅した。
続いて3人目。
ラスの魔法で、美女の身体はカチコチに凍った。
それをクーがアンギスの盾で叩きつけ、美女は粉々に砕け散った。
残った美女たちはフィルの召喚獣と、ブブカッターで撃破。
残るはアルカードだけ。
楽勝――!
そう思った。
だけどいきなり【速歩】が解除された。
次いで、最悪なことに倒したはずの美女たちが、次々と復活していく。
「嘘……」
倒しても、倒しても復活する。
6人しかいないのに。
まるで、何十人もの敵を相手にしているみたいだ。
「我々は不死ですからね。無駄ですよ」
アルカードはそう言うと、僕に向かって突っ込んできた。
ヤツの剣が振り下ろされる。
それをゼインのウルツァイトソードで受け止める。
ガキィィン!
重い……!
アルカードは不死だ。
それが分かっているのか、ブブたんは攻撃しようとしない。
(ブブカッター出してよ~)
動かない?
ブブたん、静止しちゃった?
大ピンチだ!
読んでいただいて、ありがとうございました。




