40 エイジと唯斗
★エイジ視点★
不気味な墓場に降り立った。
俺は直ぐに気付く。
「唯斗がいない!」
「あっちのチームですね。早く合流しましょう」
「ん!」
ロイとラス、俺の3人チーム。
──なんてこった。
唯斗がいない。
たったそれだけで、こんなにも不安になるなんて。
「ブブたんがいるから大丈夫だと思いますが、急ぎましょう」
そうだ。
早く見つけないと。
向こうは、唯斗とイケオジとショタだ。
俺はケルベロスに変身した。
行く手を阻むのはスケルトンキングをはじめとした、大量のガイコツ軍団。
ここは死霊ゾーンらしい。
闇魔法が飛んでくるが、俺の体は魔法耐性があるから平気だ。
敵は物理攻撃には弱い。
俺は迷わず突っ込んだ。
体当たり。
続けてスラッシュ。
ガイコツどもを次々と蹴散らしていく。
その後ろを──。
「一閃!」
ロイとエゴ様のコンビが、次々と弱った敵の止めを刺していく。
「収納!」
ゼインの収納バッグを持ったラスが、ドロップ品を拾っていく。
3人だけでも、まだまだ余裕がある。
ボスらしきスケルトンキングにはちょっと苦戦したが、
なんとかガイコツ軍団を一掃した。
進行方向を察知しながら走る。
何度も敵に遭遇するが、
いつまでたっても、唯斗たちが見つからない。
気配すらない。
いやな胸騒ぎが止まらない!
「スタートは、スケルトンキングのボス部屋だったようですね」
「ユイトたちも、同じ?」
「かもしれない……」
──もし、ユイト達が飛んだ先が100階層のボス部屋だったら?
考えただけで、俺は気が狂いそうだった。
「グワァァァアアア──!」
叫びながら、夢中で走る。
三つの頭から、ブレスを吐きまくった。
「エイジさん、落ち着いて。ユイト様には【速歩】もあります」
【速歩】?
たった3回。
たった5秒。
それだけじゃないか!
アルカードの奴、どういうつもりだ?
俺たちを嵌めたのか?
アイツ、嫌な臭いはしなかった。
むしろ好意的だった。
だが、俺のレベルじゃ、あいつの本性を見抜けなかったのかもしれない。
──唯斗。
俺が唯一、心を許した親友。
母親がいなくても、父親が忙しくても。
俺は寂しくなんかなかった。
子どもの頃から、俺は冷めていた。
孤独がを好んだ。
仲間なんて面倒で、
寄ってくる奴がいても、適当にあしらっていた。
そんな俺と、正反対の唯斗。
クラスの中でも、唯斗の周りにはいつも自然と人が集まっていた。
そこだけ、いつも温かい。
真面目で誠実。
お人好しで、頼まれれば断れない。
義彦に嫌がらせをされても、困ったように笑うだけ。
「意気地なし」
そう思って、俺は唯斗を少しだけ見下していた。
義彦も、俺と同じだった。
そんな俺たちが、まさか一緒に異世界召喚されるなんて。
どんな運命の悪戯だよ。
城から追放された時、さすがに不安になった。
だから、唯斗を探した。
唯斗なら、こんな俺でも見捨てない。
そう思ったんだ。
そして──。
役立たずの子犬だった俺を、
唯斗は両手を広げて受け入れてくれた。
その胸は、思った通り温かかった。
そこから俺たちは、ずっとこの世界で一緒に成長してきた。
最強になるって約束した。
だから──。
(唯斗、無事でいろよ。死ぬなんて、許さないからな!)
早く!
早く、唯斗を見つけるんだ!
★唯斗視点★
僕とフィルは、岩場の隙間に身を潜めていた。
緊張する中でフィルが言った。
「まだこんな隠し玉を持っていたとは」
「【速歩】は1日3回しか使えない」
「100回くらい使えれば、直ぐに強くなれるのにな」
「1回30万ガルだよ? すぐに破産だ」
「はぁ、タバコが吸いたい……」
残っている【速歩】は、あと1回。
遠くにコロシアムが見える。
岩場から少し離れて、ファイヤーフォックスが何匹か歩き回っていた。
エイジ達のことも心配だ。
ここと同じような場所に飛ばされていれば、苦戦しているに違いない。
──今、僕らがどの階層にいるのか全く分からない。
フィルの鳥が安全なルートを探してくれている。
それを、気配を消したクーが追って行った。
だけど、もうかなり時間が経っている。
「クー、大丈夫かな」
「何かあれば、儂の鳥が教えてくれる。今のところ大丈夫だ」
フィルと話していると、息を切らせたクーが戻ってきた。
「安全ルート確認。その先に魔法陣を見つけました!」
「無事で良かった! お疲れさま」
「おい、その魔法陣。まさか罠じゃないよな?」
「とにかく、移動しよう」
少しクーを休ませてから、僕は【速歩】を唱えた。
そして移動中――。
見つけた。
あの蝙蝠だ。
また〈口封じ〉なんてされたら、たまらない!
「ブブカッタ――!」
ブブたんの攻撃が直撃する。
蝙蝠は、あっけなくバラバラになった。
これで安心だ。
……でも。
簡単に倒しちゃったけど、あれって本当にボスだったのかな?
まあ、いいや。
今は先に進もう。
僕たちは、クーが見つけた魔法陣を目指して走った。
早くエイジたちと合流したい。
エイジが隣にいないと、僕も落ち着かないんだよ。
――エイジ。
どうか、無事でいて!
読んでいただいて、ありがとうございました。




