39 処刑執行人
処刑執行人。
真っ黒な全身甲冑に身を包み、騎士のような姿をしている。
そいつが、ギロチンの刃を吊るしている鎖へ大剣を振り上げた。
まずい!
ピッ!
ピッ!
ブブたんの光線が、処刑執行人めがけて飛んでいく。
だが──。
キン! キン!
処刑執行人は大剣で弾いた。
光線は後方へ流れていく。
──ただの処刑執行人じゃない。
ロイより強いかもしれない。
その時、
フィルを守るように、タランチュラが動いた。
シュ──ッ!
吐き出した糸がギロチンの刃に絡みつき、グルグルと巻き付いていく。
タランチュラはとても頭がいい!
そこへ、グリフォンが空中から急降下──
ドガァァーーン!
ギロチンに体当たりし、片方の支柱をへし折る。
ギロチン台が大きく傾いた。
(今だ!)
僕は走って、フィルの体を引きずり出す。
処刑執行人は、タランチュラとグリフォンが足止めしている。
その隙にクーのもとへ走った。
十字架の下では、炎が燃え上がっている。
僕はアイスソードを振り回した。
炎の勢いが弱まっていく。
ピッ!
ピッ!
ブブたんの光線が十字架の根元を撃ち抜いた。
バキィィッ!
十字架が折れ、クーはそのまま後ろへ倒れ込む。
「クー!」
その瞬間、口を塞いでいたものが外れた。
やっと声が出た!
でも。
まるで時間を測ったかのように、また〈口封じ〉が飛んできた。
クーの救出はフィルに任せ、僕は周囲を見渡した。
口封じは、処刑執行人が唱えたものじゃない。
どこかにいる。
気配を隠して、僕らを狙っているヤツがいる!
ゴゴゴゴゴゴゴゴーーーー。
地面が大きく揺れた。
新たなギロチンと十字架が、地面からせり上がってくる。
(またかよ!)
僕の体がふわりと浮いた。
(うわっ!)
そのままギロチンへ引っ張られていく。
──僕が処刑される!?
マズい!
心の中で叫んだ。
(ブブカッター!)
次の瞬間、ブブカッターが炸裂した。
ギロチン台が木っ端みじんに砕け散る。
(おおっ!)
感動した。
(やっぱり僕とブブたん、心が繋がってる!)
でも、喜んでいる暇はなかった。
フィルの体が、十字架へ吸い寄せられていく。
クーが走って、アンギスの盾で十字架を殴り倒した。
タランチュラとグリフォンも必死で戦っているが、
二匹とも、もうボロボロ。──限界が近い。
──ここはボス部屋だろうか。
エイジがいれば、見えないボスを【察知】できたのに。
(ブブたん、探せ! ここの本当のボスを!)
するとブブたんが、上空へ向かってブブ光線を連射した。
そこにいたのは、小さな蝙蝠。
ブブ光線を、素早くかわしていく。
それに気づいた処刑執行人が、僕めがけて猛然と突っ込んできた。
ヤツの後方には大きなタランチュラがいる、ブブカッターは使えない。
アイスソードを構える。
ピッ!
ピッ!
ピッ!
ブブたんも攻撃。
……やっぱり、それを処刑執行人は大剣で光線を受け流してしまう。
だけど。
大剣の刃先が、ほんの少し溶けていた。
(効いてる!)
(1発700ガルだ! 撃って、撃って、撃ちまくれ!)
ピッ!
ピッ!
ピッ!
その間に、後方からはタランチュラの糸が飛んできて、処刑執行人の体に絡みつく。
そこへグリフォンが体当たり!
僕もアイスソードを振り上げる。
(首を飛ばしてやる!)
ロイに教わった通り、剣を水平に振り抜いた。
(一閃!)
カラン、カラン――。
処刑執行人のアーメットが地面に落ち、転がっていく。
やった!
……と思った。
でも。
アーメットの中は、カラッポだった。
なのに身体が動いて、アーメットに手を伸ばす。
「どうなってんの?」
僕の声が出た。
その好機を逃さず、フィルが叫ぶ。
「強奪!」
すると処刑執行人は透明な風船に包まれ、そのまま消えていった。
「あれって、召喚獣だったのか」
「あの蝙蝠の使役獣だったようだ、はは」
フィルは、新たな召喚獣が手に入って大喜びだ。
「そうだ、蝙蝠!」
慌てて周囲を見回す。
……いない。
いつの間にか蝙蝠は消えていた。
「逃げるボスって、アリなの?」
「徘徊タイプかもしれんな。この先も油断は出来んぞ」
フィルはボロボロになったタランチュラとグリフォンを、一時帰還させた。
そしてブブたんを見る。
「そのブタ。最強だな」
「……うん。強奪しないでね」
今回はブブたんと2匹の召喚獣に助けられた。
というか、ぜんぶ3匹の手柄だ。
情けないけど――命拾いして良かった。
「じゃあ、次に行こうか」
コロシアムの狭い出口を抜ける。
抜けると……広い大地が広がっている。
少し離れた場所に、ワンコよりも遥かに大きな狐モンスターが見えた。
その口から、ゴウッと炎の息が吐き出される。
【鑑定】ファイヤーフォックスLv120。
それが数匹歩いている。
「戻ろう!」
僕たちは慌ててコロシアムへ引き返した。
「なんだよここ、動けないじゃん!」
「アルカードのヤツ、儂らを殺す気か!」
「ユイトさん、【速歩】があるじゃないですか」
「あ……」
ファイヤーフォックスに驚きすぎて冷静さを失っていた。
そういえば、さっきの戦闘。
【速歩】なしで乗り切ったんだよな。
……それって凄くないか?
でもこんな、ファイヤーフォックスだらけの場所。
3人じゃ無理!
いや。
無理なんてものじゃない。
――死ぬ!
6人揃っていても苦戦しそう。
エイジたちは無事だろうか。
どこかで早く合流できればいいけど。
くっそ……! アルカードめ!
絶対に、生きて戻ってやる!
読んでいただいて、ありがとうございました。




