37 アルカードの「条件」
アルカードに訪問した理由を聞かれ、僕は正直に答えた。
僕とエイジが異世界人であること。
ギルドと王国から逃げてきたこと。
そして、SSSクラスまで強くなりたいこと。
「強くなるために、魔族の国の上級ダンジョンにトライさせてください!」
「ふむ。私の一存では何とも申し上げられない。時間を頂きたい」
「そうですか」
「だが、恐らく叶うでしょう。若様がご一緒なので」
だから――!
その若様って何なんだよ!
聞きたい。
でも、グッと飲み込んだ。
「宜しくお願いします」
◇
僕たちは美女に、それぞれ客室へ案内された。
部屋に入って、まず目に飛び込んできたのは大きなベッド。
5人くらい並んで寝られそうだ。
「食事のご用意を致しますので、少々お待ちください」
美女が部屋を出た瞬間、僕はベッドにダイブした!
「ベッド、久しぶりだ~~」
ふかふかの感触に涙が出そうになる。
それくらい嬉しかった。
しばらくすると、なぜか全員が僕の部屋に集まっていた。
話題は、もちろん「若様」。
何者なのか。
正体は分からない。
でも、僕たちの強力な後ろ盾になることだけは間違いない。
そして今のところ、全員一致で候補に挙がっているのがクーだった。
「違うってば!」
クーが全力で否定する。
「誰が若様でも構わないよ。一致団結して、強くなろう」
「そういえば、大量に戦利品を拾った。確認せんか」
フィルが収納バッグから取り出したものを見て、僕は思わず目を見開いた。
「えっ……これ、全部?」
次々と出てくる武器・防具にアイテム。
あの召喚士とゼイン達の持ち物だ。
「ものすごくいい装備じゃん。おい、収納バッグも2つあるぞ!」
もの凄く欲しかった収納バッグ!
でも、これはラスとクーが預かることになった。
僕はブブたんを入れるバッグを所持してるからな……。
収納バッグの中には財布。中の金貨はブブたんで2倍だ。
それと薬や食料、スクロールなども入っている。
装備品は重さ、質感、魔力の宿り方、どれも一級品。
ゼイン達には悪いけど戦利品だ。全部貰っておこう。
「こんな装備を付けていたのか。よく【速歩】ナシで〈夜明けの月〉に勝てたね」
「彼等は油断していましたから」
「ロイは実力だよ」
「オレ、スライムの杖、欲しかった」
「あれでいつか、ゴリアドを殴ってやろうぜ」
「ん!」
エイジとラスは、時々こうやって意気投合するんだよな。
思わぬ一級装備も手に入り、今後のダンジョン攻略もスムーズになりそうだ。
(魔族の国のダンジョンに行かせて欲しい!)
僕は強く願った。
そうしているうちに食事に呼ばれて、僕らは移動した。
◇
テーブルには、次々とご馳走が運ばれてくる。
「こんな高級なワインは久しぶりだ」
フィルはすっかりご機嫌だ。
この世界では、15歳から酒が解禁されている。
でも、僕もエイジも酒のうまさなんて分からないし、飲むのは二十歳になってからだ。
「お口に合いますかな?」
ワイングラスを手に、アルカードが尋ねてくる。
「美味しいです。ありがとうございます」
メンバーは頷くだけで、黙々と料理を食べ続けている。
……面倒な会話は僕に任せるつもりだな。
「あの、ここが魔族の国ですよね?」
「そうです。正確には、国の一部ですが」
「一部……?」
「ええ。この城は、魔王帝国と地上を繋ぐ場所に過ぎません。私は門番のようなものです」
「地上? では、魔王帝国は地下にあるのですか?」
「そう。巨大な地底国家。それが魔王帝国です」
そっか。
魔王は地下にいるのか。
僕はてっきり、異空間とか、そういう別世界みたいな場所にいるのかと思っていた。
「魔王様から連絡がありました。あなた方を魔王帝国にお招きするには、条件があると」
「条件とは?」
「強くなって欲しいそうです。『弱者には会いたくない』と仰せです」
「それって、拒否されたんじゃ……」
「ふふっ」
アルカードは、僕の反応を面白がっている。
「ここにもダンジョンがありますよ? そこで強くなればいいのです」
「そうなんですか。ありがとうございます!」
アルカードは、僕たちにかなり好意的だ。
だから今のうちに、疑問に思っていることを聞いておこう。
「教えて欲しいのですが、ダンジョンって封印できるのですか?」
「可能です。ダンジョンコアを潰せばいい」
「それはどうやって?」
「さあ。やった者がいないので分からないですね。まさか、地底のダンジョンを封印する気では無いでしょうね!」
アルカードの声が鋭くなった。
ぞくりと背筋が震える。
さっきまで暖かかった部屋が、一気に冷えたような気がした。
「違います! 違います!」
「それなら結構です」
一見、アルカードは好意的だ。
でも、怒らせたら……絶対にとんでもないことになりそうだ。
まずは、強くなるしかない。
魔王帝国への道を開くため――上級ダンジョンへ挑むんだ。
アルカードに聞きたいことが、まだたくさんあったけど、
僕はそれ以上は何も言わず、食事に集中した。
読んでいただいて、ありがとうございました。




