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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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36/50

36 魔族の国へ

 地面には、ゼインたちの装備が散らばっていた。

 フィルがそれを拾い集める。


「こいつらの装備。当然、頂いていいよな?」


「当然です」

 答えたのはクーだ。

「かーちゃんを人質にしたのは許せない」


「本当に、僕たちに着いて来るんですか?」

「ああ」


 フィルは軽く答えたあと、真面目な顔になった。


「儂も昔、恋人がいたんだ。彼女を無理やり、ロクでもない貴族のファミリーに奪われた。ギルド本部に訴えても、何もしてくれなかった。『【見逃し料】を払えばいい』とか言いやがって」


「オレみたいに100万ガル。払えばよかった」


「当時、お前さんみたいに強くなかった。契約獣も、あの鳥だけでな。貧乏だった」


 フィルが空を指さす。

 僕たちをずっと追ってきた鳥が、上空を旋回していた。


「ピィッ!」


 フィルが指笛を吹く。

 すると鳥は急降下し、そのままフィルの肩に止まった。


「お疲れだったな」

 フィルは鳥を帰還させた。


「グリフォンも手に入れたから、戦力になるぞ?」


「ワン、ワン」

 子犬のワンコが尻尾を振っている。


「エイジがオッケーなら、信用しよう」


 こうして僕たちは、改めてフィルを仲間に加えた。


 そして、ピラミッドの中へ入る。


 中を見渡すと、魔法陣は真ん中と四隅に1つずつ。

 全部で5つあった。


「これが魔族の国へと繋がっている」


 ヨハンに促され、僕たちは隅の魔法陣の1つに立った。


「では、旅の無事を祈っております。クーを宜しく」


 ヨハンが杖を振り上げる。


 次の瞬間、真っ黒な霧が僕たちを包み込んだ。


 ……と思ったら。

 身体が、真っ逆さまに落ちていく!

 ジェットコースターが苦手な僕には、この感覚は無理だった。


「うわぁぁああああああーーー!」


 僕はワンコをきつく抱きしめたまま、叫んでいた。


 ◇


 気が付くと、目の前にエイジの顔があった。


「大丈夫か?」

「……ん?」


 僕は彼の膝の上、抱きかかえられていた。


「鼓膜が破れるかと思ったよ。気絶したの、唯斗だけな。クッ」


 エイジが声を殺して笑っている。

 恥ずかしくて僕は耳まで熱くなった。


「ごめん。お、下りるよ……大丈夫」



 魔法陣による移動は終わって、僕たちは白い東屋に到着していた。


 空には星が瞬き、すっかり夜になっている。


 見渡せば、ずっと遠くに暗い木々が茂っている。

 それが360度、この広い土地を囲んでいる。


 ここは樹海のどこかみたいだ。

 立つと、僕の体はフラついた。それをエイジが支えてくれる。


「歩けるか?」

「うん」


 小道の両脇には、大きなキノコや小さなキノコが生えていた。

 どれも淡く光っていて、まるでランプみたいに辺りを照らしている。


 道の先には小高い丘。


 そして頂上には、

 満月を背にした、大きな城が建っていた。


「メルヘンだね。絵本の中みたいだ」

「俺はもっと禍々しい世界を想像してた」


「ここにとーちゃんがいるはずです」

 思い出したように、クーが話す。


「あの城に?」

「たぶん……」


「お前、そう言うの先に言えよ!」

「性格悪い」

「悪いです……」


 エイジたちに責められ、クーが言い返す。

「だって、とーちゃんは家族を捨てたんだ」


 複雑な家庭の事情がありそうだ。


「とりあえず、あの城に行こう」



 5分ほどで城に到着。


 門番はいない。


 目の前には、大きな木の扉。

 まるで僕たちを拒むように、固く閉ざされている。


「テントを張って、朝を待とうか」


 僕がそう言うと、


 ギィィィイイイーーー!


 軋んだ音を立て、扉がゆっくりと開いていく。


「ひっ!」

 クーが引きつった声を上げた。


 扉の向こうに立っていたのは、蝋燭のランプを手にしたシワシワの老人だった。


 黒いスーツ。

 異様なほど青白い顔。


「いらっしゃいませ。ご主人様がお待ちです」


 老人の後ろを覗く。

 城の中は、不気味なほど真っ暗だ。


「あ、夜も遅いですし。明日の朝に出直してきます」


「ふぉふぉ、ここは夜の世界。朝などは来ませんよ」


 老人は笑うと、闇の中へ歩き出した。

 足音はしない。

 まるで地面を滑るように進んでいく。


「今のところ、悪い臭いはしない。行こうぜ」


 エイジに促され、僕たちは老人を追って城の中へ入った。


「じーさん、歩くの早すぎ」

 僕の後ろでは、ラスとロイが腕を組んだまま話している。

「ここ、魔王の城?」

「どうだろう……」

 ロイが答えた。


(魔王……)


 僕の不安を感じて、ブブたんも鞄の中でブルっと震える。


 老人が立ち止まった。

 目の前には、立派な装飾が彫られた扉がある。


「こちらです」


 老人が扉を開ける。


 その先の部屋には、真っ赤な絨毯が敷き詰められていた。

 天井には豪華なシャンデリア。

 キャビネットには、高級そうな装飾品が並んでいる。


 部屋の奥には、玉座。

 そこに、一人の美しい青年が座っていた。


 銀色の髪。

 青白い顔。

 絨毯と同じくらい真っ赤な唇。

 その左右には、6人の美女が立っている。


 青年が立ち上がった。


 そして数歩進むと、恭しく頭を下げた。


「ようこそ勇者殿。私はこの城の主、アルカードと申します」


(魔王……なのか?)


 そう思った直後──


「お帰りなさい、若様」


 アルカードも、美女たちも、老人も、

 一斉に頭を下げた。


 僕は挨拶を返すことすら忘れていた。


 ──若様?


 僕たちはみんな顔を見合わせた。


 この中に若様がいる?


「クーか?」

 エイジが言った。


 魔物の血が流れているクー。


「……クーなの?」


 僕たち5人は、クーから数歩離れた。


「え? え? 自分はただのオウレリアン族です!」


 するとアルカードが、低い声で告げる。


「記憶は無いのですね。ならば私からは何も言えません」


 そんな!


 教えてよ!


 めちゃくちゃ気になるじゃん!



読んでいただいて、ありがとうございました。

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