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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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31/50

31 オウレリアン族の村

 猫の街は、思ったより栄えていた。


「魔族の国の製品がここで取引されます。なので獣人商人の出入りが盛んです」


 クーはそう言うと、僕の手を引っ張った。


「早く行きましょう。樹海の入り口はすぐそこです」


「ちょっと待って」


 僕はフィルに、約束していた小金貨1枚を渡した。


 するとフィルが、ニヤリと笑う。


「樹海に入るんだろう? 付き合うぞ」


「いいですけど。馬車はどうするんです?」


「収納バッグがある。幌馬車程度は入る」


 収納バッグーーー!


 欲しい!


「どこで手に入るんですか?」

「儂は王都の高級店で買った。これだと2千万ガルだった」


 ……高い。


 王都にいた頃は高級店には行ったことがなかった。

 きっと珍しい商品が、いっぱい並んでいたんだ。


「馬のアイオンは?」

「一時帰還だ」


 フィルがアイオンの頭を撫でると、2頭とも透明の風船に包まれた。

 次に、パチン! とフィルが指を鳴らすと風船ごとアイオンは消えてしまった。


「君らの荷物も馬車に積めて預かってやろう」

「助かります」


 こうして僕たちは、6人メンバーのまま樹海へ入った。


 ◇


 樹海の中は、針葉樹や広葉樹がびっしりと生い茂っていた。

 コケの青臭い湿った香りが漂う、野鳥や小動物が暮らす自然の宝庫だ。


 道なんてない。

 僕たちは木々の間を抜け、木漏れ日の中をクーの案内で進んでいく。


「クーがいないと迷うな」


「ここは自分の庭みたいなものです」


 クーは喋り続ける。

「ユイトさん、自分の母親は冒険者になるのを反対しています。なので、説得する時に味方になってくれますか?」


「いいよ」


「やっぱりユイトさんを選んでよかった。ありがとうございます!」


「クーはもうパーティーの仲間だから」

 僕はそう答えた。



 しばらく進むと、村に到着した。

 そこは木々が伐採された広場になっている。


 小さなログハウスが何軒も建っていた。

 てっきりテント暮らしだと想像していた僕は、ちょっと拍子抜けする。


 しかも、あちこちにスライムが転がっていた。

 スライムは僕たちを見つけると素早く逃げていく。


「自分の家はこっちです」


 足を速めながら、クーが言った。


「自分たちの祖先はスライムなんです」


「へ?」


「大昔、人間に恋をしたスライムを、魔王様が人型にしてくれたんです」


 どこからかパクったみたいな話だ。


「オウレリアン族には魔族の血が流れています。だから親交があるんです」


「そっか」

 ……スライムの血? 

 そんなのが流れているんだ。さすが、異世界。



 僕は村を見渡した。


 何人かの村人が、遠目にこちらを見ている。

 どうやら歓迎されていないみたいだ。


 一軒の家の前で、クーが立ち止まった。

 そして扉をドンドン叩く。


 中から出てきたのは、クーによく似た、とても綺麗な中年の女性だった。


「クー……」

「ただいま、かーちゃん!」


「お前は! 家の金盗んで、よくも戻れたもんだ!」

「うわっ!」


 クーは耳を掴まれ、そのまま家の中へ引きずり込まれた。


「揉めそうだな。水でも飲んで待つか」

「うん」


 僕とエイジは転がっていた丸太に腰を下ろした。

 他のみんなも水を補給しながら、クーが出てくるのを待つ。


 すると――。


 バーーーーン!


 突然、家の扉が勢いよく開いた。


「ユイトって誰だい!」


 クーのかーちゃんが、ものすごい剣幕で叫んだ。


「ぼ、僕です」


「あんたのファミリーに入るんだって? この子は許婚がいるんだよ」


「は?」


(……クー、何を言ったんだよ)


「命名までしてくれて、どうしてくれるんだ」


 かーちゃんの剣幕に僕の胸はざわついた。


 ザワザワザワ……

 村人が集まって来て、静かだった村が急に騒がしくなってきた。



「唯斗、なんか雲行きが怪しいぞ」


 そう言ったエイジの後ろに、逞しい大男が走って来るのが見えた。


 その大男は近くまで来ると、エイジを突き飛ばし、僕を押しのけてクーの前に立つ。


「クー! 戻ったんだな。族長が呼んでいるぞ」


 クーはその男に向かって叫んだ。


「お前の第三夫人なんて真っ平だ! 自分はユイトさんを選んだ。『クーシア』って真名を貰ったんだ!」


「なっ……ユイトって誰だ!」


「ぼ、僕です……」


(……真名ってなんだよ~?)


 今の僕に分かるのは、クーが何かを隠したまま、僕をここまで連れて来たってことだ。



「ぶっ殺してやる!」


 大男が僕を睨みつけ斧を振り上げる。

 その腕をロイとエイジが素早く掴んだ。


「止めるんだ!」

「この野郎! 手を折るぞ?」


「うっ……!」


 大男は渋々、腕を下ろした。

 そして、クーのかーちゃんに顔を向ける。


「婚約を解消するなら違約金100万ガル払え!」

「ヨング様。そんな大金は払えません」


 ヨングという大男に、クーが食い下がる。

「婚約なんて、無理やりかーちゃんに契約書を書かせたくせに。あんなのは無効だ」


「黙れ! 金が払えないならお前ら全員スライムにしてやる!」



 エイジが僕の肩をポンッと叩いた。


「100万、払ってやれよ。……アイツ、気に入らない」


「しょうがないな」


 魔族の国へ行くには、クーの案内が必要だ。

 それに、このままじゃクーたち家族が危険だ。


「違約金を出すよ。クーを自由にしてやってほしい」


 僕はブブたんから小金貨を1枚取り出した。

 するとエイジが、それをひょいっと取り上げる。


「ほらよ」


 エイジは小金貨をヨングに向かって投げつけた。小金貨はヨングの足元に落ちて地面に転がる。


 ……エイジ。


 なんで、これ以上炎上させるんだよ……。




読んでいただいて、ありがとうございました。

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