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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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30/50

30 逃避行 / 閑話(ムー将軍)

 この世界には、人族、獣人族、魔族の国がある。


 大陸は地続きで、周囲を海が囲んでいる。

 その海には無数の島が浮かび、飛行族や水生族が暮らしているらしい。


 人族を代表する中心国がノクティルム王国。

 他にも大小30か国ほどある。


 人族と獣人国にはギルドがあり、情報網も繋がっている。


 そして、魔族の国。

 広大な樹海に囲まれた、謎だらけの国だ。


 ──ロイが知っているのは、だいたいこんなところだった。



「魔族の国には、簡単に入れてもらえるのかな?」


「まずは自分の村に行きましょう。オウレリアン族の村から魔族の国は近いです」


 僕らが不安になる一方で、クーは意欲的だった。


「獣人国を抜けると樹海が広がります。その中に村があるんです」

「何日かかるの?」


「えっと、自分は3か月かけて、冒険者の街に来ました」

「3か月……」


 かなり遠い。


 でも、ここで時間を使っている余裕はない。


「すぐに準備を始めよう」


 まずは馬車。


 オウレリアン族の村まで片道となると片っ端から断られた。


 そんな僕らに声を掛けて来る人がいた。


 フィルという中高年の男性だ。

 彼は召喚士で、今は幌馬車を走らせて生活しているという。


 黒髪には白髪が混じり、眉毛に小さな傷跡があるイケオジだ。

 肩にはタランチュラを乗せている。


 こっそり鑑定。


 Lv88。

 スキルは【召喚】【強奪】【魔力供給】。


(強奪ってなんだよ?)


 ……強いのは間違いない。


「一日5000ガルでどうだ?」


 馬車を引いてくれるのは2頭の馬、聖獣《アイオン》だ。

 スタミナが抜群で、普通の馬の2倍は距離を稼げるとフィルは言った。


(もしかしたら移動中《アイオン》で歩数を稼げるかもしれない)

 そう考えた僕はフィルにお願いしてみた。


「馬車の移動代とは別にお金を払うので、旅の間だけパーティーに入ってくれませんか?」


「ふむ。金は欲しいからな……全部まとめて100万ガルでどうだ?」


「いいですよ」


 即決だった。


 ところが、ギルドカードを見せると――。


「レベル【E】?! おいおい、冗談だろう?」

「本当です」


「長旅なら護衛を雇えばどうだ?」

「大丈夫です。迷惑はかけません」


 フィルは、困った顔でしばらく思案したけど、最後には了承してくれた。


 エイジは反対しない──多分フィルはいい人だ。


 ギルドでフィルの〈タシオン〉入りを申請すると、受付のカリウスは鋭い目を向けたが黙って受け入れた。



 調理器具や食材、スクロールなど必要物資を買い込む。


 準備は完了。


 全員で幌馬車に乗り込み、冒険者の街を出発した。



 街道をしばらく進んだところで、エイジが察知した。


「見張られているな」


「どこ?」


「上。鳥が追ってくる」


 僕は空を見上げる。

 確かに、一羽の鳥が上空を旋回していた。


 ……ギルドの監視だろうか。


「気付かないフリをしようぜ」

「うん」


 僕はラス達にも告げる。


「この旅は、誰に聞かれても『クーの帰省の付き添い』。それで通そう」

「了解」


 こうして、僕たちの長い旅が始まった。


 ◇ 


 残念ながら聖獣《アイオン》の歩行はブブたんにカウントされなかった。


 旅の合間に、僕とクーはロイから剣術を習っていた。

 見覚え能力が高いせいか、クーは教えをどんどん吸収していく。


 エイジとラスは魔法について研究していた。


 移動中、僕はフィルの隣に座り、この世界のことや馬の扱い方を教えてもらった。


 道中、盗賊団には5回も襲われた。

 でも、どれも問題なく撃退。


 ただし、ブブたん光線とエイジの変身は使わなかった。

 追跡者に僕たちの本当の戦力を知られたくないからだ。


 まあ、ラスとロイとエゴ様だけで十分だったけど。


 それ以外は、逃避行とは思えないほど穏やかな旅だった。


 ──上空の鳥は、そんな僕たちをずっと追い続けていた。



 いくつもの町や村を通り、何度も野宿をして、――旅立ってから5週間。


 僕たちは、ついに獣人国の端にある『猫の街』へ到着した。

 ちなみに街の名前の由来は、野良猫が多いからだって。


 幌馬車を降りると、


「ニャ~、ニャ~」


 さっそくキジトラ猫が一匹、僕たちを出迎えてくれた。


 母さんの愛猫ブブを思い出して、僕はちょっと切なくなった。




 ◇◆◇閑話 ムー将軍


 部下からの報告書を読み、私は肩を落とした。


 ユイト、エイジは冒険者になっていた。

 他2名を含むエイリアンズPTの4人は、森林ダンジョンで行方不明。

 レベル72。ギルドレベルは【C】。


 サンドワーム討伐に向かい、全滅したと思われる。


「実力はあったのか。……残念だ」


 だが、私の目を引いたのは、その下に書かれた一文だった。


 ──高額の借金を繰り返していた。PT資金源は不明な点が多い。


「怪しい金を使って、経験値稼ぎでもしていたのか?」


 おそらく、実力者に牽引してもらっていたのだろう。


 己に戦闘力がなければ、冒険者として生き残るのは難しい。


「もともと、期待は薄かった」


 ユイトたちの死亡は、義彦たちには伝えられない。


 今の彼らに知らせれば、士気が落ちる。

 ただでさえ成長が遅れぎみだ。

 これ以上、足を引っ張るわけにはいかない。


 私は報告書を破り捨てた。


 ──ユイト、エイジ。


 せめて、安らかに眠れ。



読んでいただいて、ありがとうございました。

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