27 50日目、唯斗の葛藤 / 閑話(ムー将軍)
中央安全地帯に戻ると、第2エリアの〈ビッグフット〉レイドバトルが終わったと聞いた。
倒したのは、〈夜明けの月〉ゼインのPT。【B】ランクだけあって強いんだな。
ギルドランキングは、アイテムや魔石の換金額なんかで決まるそうだ。
「エイリアンズは最下位だね。魔石を換金したことないもん」
「ランキングなんて関係ありません。実力第一です」
実力だけなら、ロイは【A】ランクだ。
ちなみに、ギルドに借金があるとランキング対象外になる。
「うちは完全にアウトだな! へへっ」
魔石を食べてる張本人が笑ってるよ……。
しかも、エイジはこんなことを言い出す。
「サンドワームは経験値が美味いから、これからも【速歩】で倒そう」
「1回につき30万ガルだよ?」
「魔石を食べるの我慢する」
「我慢しなくていいよ。でも、今から行くのは〈雪狼〉だからね」
こうして僕たちは1週間、主に第2エリアで狩りを続けた。
標的は、
雪狼Lv76。
その先にいるビッグエイプLv80などなど。
ついでに、サソリとサンドワームLv90。
──そして異世界生活50日目。
僕とエイジはLv73。
ラスはLv77。
ロイはLv81。
エイジは炎・水・雷魔法(三匹目)の威力が上がった。
見た目も一回り大きくなっている。
けど……
シュルシュルーーッと収縮して、最初の《子犬》に変身することも出来た。
でも戦闘能力は0。
……ただ可愛いだけだった。
ブブたんは初期より若干大きくなっている。
そして【ブブカッター】を発動できるようになっていた。
縦横無尽に敵を斬り裂く。
恐ろしく強力でサンドワームも1発で切り倒してしまう。
消費は5万ガルだ。
ラスは【上級水魔法】に進化。『広範囲攻撃』など、バリエーションが増えた。
それと、ギルドの借金3000万ガルを完済。
僕の5000万ガルは返さなくていいと言っても、
「絶対。返す」と、譲らない。
ブブたん貯金は30.634.663ガルになっていた。
「これは【見逃し料】2000万、いける!」
第4エリアに行けるようになれば、収入は確実だ。
だけどエイジの考えは違った。
「このペースならファミリー作れるぞ?」
「そう……だけど……配偶者はどうするの?」
「そんなの決まってる。唯斗がボスで、俺が配偶者だ」
「は?」
エイジが奥さん? いや夫?
……どうなんだ?
いやいやいや、想像できない。
「ボスなんて無理。エイジがやってよ」
「金を握ってるヤツがボスだ!」
そこへ、ラス達まで話に入ってきた。
「オレ達も、ユイトのファミリーに入れて欲しい!」
「ちょ……ラス」
「月収1億で配偶者2人です。ラスが配偶者。私はラスの愛人になります」
ロイまで……。
「ねえ、よく分かんないんだけど、その愛人って……何人でも持てるの?」
「いいえ。配偶者1人につき、愛人が1人だけ許されます」
「ん? 愛人を持てるのは配偶者の方なの? ボスは?」
「ボスは愛人を持てません。月収を増やし、配偶者を増やすのです」
「それが〈ファミリー〉なのか……」
……僕の常識で考えちゃダメだ。
この世界では、普通婚でも一夫多妻や一妻多夫が認められている。
でも、僕たちはゴリアドに目を付けられている。
だから、普通婚じゃダメなんだ。
要するに、みんなゴリアドから逃げたいだけなんだよな。
〈エイリアンズファミリー〉の結成。
元の世界へ帰るまでの〈契約婚〉だと思えば……アリなのか?
──それでも。
つい最近まで普通の高校生だった僕には、まだ簡単には受け入れられない。
「ファミリーは全員で協力して月収を稼ぐのです。ユイト様、ランク【A】月収1億を目指しましょう」
「そうだ!」
「賛成」
僕だけが葛藤して、3人はすっかり意気投合している。
「みんな、ランク【A】になったら話し合おうよ」
まだまだ先の話だ。
だって、Lv100まであと30も上げなきゃいけないんだよ?
レベル90辺りからは、上げるのがものすごく難しくなるそうだ。
1年後、僕たちはどうなっているんだろう。
でも、これだけは分かる。
臆病な僕に、ボスは無理。
◇閑話(ムー将軍)◇
王家が異世界人を召喚した。
表向きは『軍事力の強化』だ。
しかし実際は高難易度ダンジョンの封印である。
収入減を断ち、ギルド、ファミリーの弱体化が目的だ。
私は異世界人5人の教育係に任命された。
さすがは勇者。能力は高い。
だが──。
どうにも扱いにくいのだ。
このチームには、全体をまとめるリーダーが存在しない。
まず、義彦。
本来なら彼をチームの中心に育てるつもりだった。
しかし、その資質は皆無。
自己中心的で協調性に欠け、女子達からの信頼も薄い。
さらに粗野な性格。私を嫌い、指示にも素直に従わない。
一方、女子達の中心にいるのは祥子だ。
だが、彼女もまたリーダー向きとは言い難い。
現在、女子達は自然と私をリーダーとして頼っている。
しかし、それでは駄目なのだ。
勇者達はいずれ成長し、私を追い越していく。
その時、自分達だけで判断し、仲間を導ける者がいなければ、ダンジョンで命を落としかねない。
召喚された勇者は本来7人だった。
だが、そのうち2人をラリア王女は追放してしまった。
【貯金箱】と【小犬】
当初、役立たずと判断された。
だが、私は考える。
その2人は、本当に不要な存在だったのだろうか、と。
何か特別な力を秘めていた可能性もある。
追放は、あまりにも早計だったのではないか。
もしかすると――
その2人のどちらかにリーダーとなる資質があったのかもしれない。
……生きていてくれればいいのだが。
私は部下達に命じた。
追放された2名の行方を調査せよ、と。
読んでいただいて、ありがとうございました。




