25 エゴソード / 閑話(義彦)
食堂でランチを終えて、エイジと狩場を相談中。
「午後からは雪狼で稼ぎたいところだけど」
「吹雪が止むまで別の場所だな」
「じゃあ灼熱の第3エリア? 砂漠が広がってて、中央には火山があるらしいよ」
「サンドワームにサソリ、毒蛇、バジリスク、それにラヴァゴーレムか……」
「どうする?」
僕はロイとラスを見る。
「とりあえず、挑戦してみましょうか?」
「ダメなら、戻る」
2人も賛成してくれたので、行き先は第3エリアに決まった。
「ロイ、武器はハルバードのままでいい?」
「本当は剣が得意なのですが、槍でも問題ありません」
そう言って、ロイはハルバードを掲げた。
「剣? 見に行こう!」
「い、いえ、そんなつもりでは――」
「少しでも強くなった方がいいからね」
というわけで、僕たちは再び武器防具屋へ向かった。
「剣をお探しか? なら掘り出し物があるぞ!」
店主が取り出したのは【エゴソード】。
効果は――ダメージ1%~300%ランダム。
「ダメージ1%って……」
「だが、クリティカルは300%だ! 150万ガルでどうだ?」
「いらないです」
結局、第三エリア用に【アイスソード】を買うことにした。
普通の鋼鉄剣に水魔法が付与されている剣だ。
「支払いは80万ガルだが、100万ガル払ってくれるなら【エゴソード】をオマケするぞ?」
つまり20万ガルで売りつける気らしい。最初の150万ガルは何だったんだよ。
「エイジ、どう思う?」
「ブブたんで換金すれば2倍だ。20万以上になるかもしれないな」
「よし! 100万ガル払います!」
ロイにアイスソードを渡し、僕は【エゴソード】を受け取った。
店の横の細い路地へ入る。
「いくらになるかな?」
エイジが期待した顔で言う。
ブブたんを出して【エゴソード】をかざした瞬間――
「マ、マテ!」
渋い声が聞こえた。
「剣が喋った!?」
「ああ、そうみたいだな」
「ワレヲカンキンナドト、コノ、バチアタリメ!」
「怒ってるよ。どうしよう?」
「ダメージ1%のくせに偉そうだな。換金しようぜ」
「マテ! ワレハ『シンケン』ナルゾ!」
エゴソード曰く――。
自分は神が作り出した由緒正しい神剣で、僕たちのような冒険者風情が扱える代物ではないらしい。
「じゃあ、いらないね。ブブたん、換金お願い」
「大金の予感がするな!」
「マテ! マテ! オソロシイ、コゾウドモメ! マツノダ!」
「あのさ、300%は望まないから、せめて120%くらいは頑張ってくれない?」
「それなら生かしておいてやるよ」
「ムムムムム……ナマイキナ」
「嫌なら別にいいけど?」
「ウムムム……」
しばらく唸ったあと「イイダロウ」と、エゴソードは渋々条件を飲んだ。
僕はロイを呼ぶ。
「──というわけで、この【エゴソード】をロイに預けるね。使えなかったら換金するから」
「このような貴重な剣を、私などが使ってもよろしいのですか?」
「ソードマスター……ムッ! コヤツハ、ドレイデハナイカ!」
「ああ……やはり私だと不相応かと……」
「換金だね」
「そうだな」
「マ……マテ!」
慌てるエゴソードを無視して、僕はロイに渡した。
「扱いにくいと思うけど、よろしく」
「では、大切に扱います」
「いや、こき使っていいから」
アイスソードとエゴソード。
敵に合わせて2本を使い分ければ、きっとロイは今まで以上に戦いやすくなるはずだ。
◇閑話(義彦)◇
赤のダンジョンに来た。
次こそサキュバスを倒してやるつもりだったのに。
くそっ! 気に入らねぇ!
テント暮らしが始まってから、女子共は文句ばかりだ。
「お風呂がない」
「暑い」
「虫がいる」
毎日毎日うるせぇ。
だが、一番気に入らねぇのはムー将軍だ。
あいつ、青のダンジョンでオレを殴って気絶させやがった。
恥をかかせやがって。
絶対に許さない。
ちょっと顔がいいからって、女子共にチヤホヤされて調子に乗っている。
勇者パーティーのリーダーはオレだ。
なのに、女子共はムー将軍をリーダー扱いして、オレの言うことなんて聞きやしない。
くっそ気に入らねぇ。
最近はラリア王女まで冷たい。
『噂では、新人パーティーがサキュバスたちを無傷で倒したそうです。義彦様も精進してください』
そんな皮肉まで言われた。
知るかよ!
──新人パーティーなんかクソくらえだ。
悪いのは唯斗と藤崎だ。
「貯金箱」と「犬」なんて、役立たずだったせいだ!
もし二人がまともなスキルを持っていたら、7人でもっと早く強くなれていたかもな。
あんな役立たずを召喚した方が悪いんだ!
レベルはやっと42。
70になれば聖剣が授けられる。
その時こそ、俺が最強だ。
──偉そうなムー将軍なんか、ギッタギタにボコってやる。
読んでいただいて、ありがとうございました。




