24 〈夜明けの月〉のゼイン
──第2エリア・雪狼狩り。
「ぅぅうっ、寒い」
そう言ったエイジは、すぐにワンコへ変身した。
「ワンワンワン!」
寒がっていたのが嘘みたいに、雪原を元気よく駆けていく。
入口近くには先客がいた。6人PTが手際よく雪狼を狩っている。
その中の1人がこっちに気付いた。
「ラス!」
「知り合い?」
「〈夜明けの月〉。前の仲間」
ラスがぶっきらぼうに答える。
「金は貯まったか? 他のPTに入れたのか」
「関係ない」
「まあ、そう言うなよ」
声を掛けてきた彼は、いかにも好青年って感じだった。
他のメンバーもゾロゾロ集まってくる。
「俺はギルドランク【B】〈夜明けの月〉のリーダー、ゼインだ。良かったら合同で狩りをしないか?」
「しない!」
僕が答える前に、ラスが即答した。
まあ、こっちにはラスのドロップ率アップと、僕の2倍スキルがある。
〈エイリアンズ〉でラスは300万近く稼いでいる。合同を組む理由はないな。
「〈エイリアンズ〉のリーダー、ユイトです。よろしくお願いします」
「ああ……」
返事をしたゼインさんだったけど、視線は僕の後ろへ向いていた。
そこではワンコが雪狼の群れへ炎のブレスを吐きまくり、ロイが素早く止めを刺し、クーが手際よくドロップを回収していた。
ゴォーーーッ!
雪原を赤い炎が駆け抜ける。
Lv77の雪狼が吐く氷ブレスより、ワンコの炎ブレスの方がずっと強力だった。
雪狼が次々と、炎に飲み込まれていく。
そしてロイ。
彼は敵のどんな攻撃も見切って、素早くハルバードで攻撃を展開する。
ゼインが聞いてきた。
「エイリアンズのランクは?」
「【C】です」
「はは……まあ頑張れよ。またな、ラス」
ゼインが合図すると、〈夜明けの月〉は雪原の奥へと移動していった。
「ユイト。早く行こう!」
「うん」
僕は鞄からブブたんを取り出し、みんなの元へ向かった。
雪狼は5~7匹の群れで現れる。
ブブ光線を3連射すれば1匹倒せる。効率だけならワンコの炎ブレスの方が上だ。
だけど、僕たちだって負けてない。
雪原を駆ける白い影。
次の瞬間には、2匹が目の前まで飛び掛かってくる。
素早い!
ピッ!
ピッ!
ピッ!
なんとか1匹は倒したが、2匹目はブブ光線が間に合わない――そう思った。
ダダン‼
アンギスの盾が、雪狼を正面から受け止め、
「ギャン!」
激突した雪狼は後方へ吹き飛ばされた。しかも、地面を転がったまま動けない。
ピッ!
すかさず、ブブたん光線が仕留める。
一撃だ。
雪狼は光になって消えた。
「防御するだけで敵にダメージ与えてくれる盾なのか?」
さらに次。
飛び掛かる。
弾き飛ばす。
ブブ光線。
撃破。
まるで流れ作業みたいに雪狼が消えていく。
「ブブたん、僕たちいいコンビだね」
ブッブブブブ──!
ブブたんが頭の上で軽快に振動した。
雪狼の氷ブレスも、盾防御でダメージはほぼ0だ。
「この盾、いい買い物をしたな~」
ラスが毒魔法で雪狼の動きを鈍らせると、ワンコのファングとロイで一掃。
その間、ラスはクーとドロップを回収していく。
「装備。でた」
【雪狼の襟巻】(体感温度を10度下げる)
「暑い場所なら重宝しそうだね。もっと欲しいな」
1時間狩って【雪狼の襟巻】は5個ゲット。
他のドロップは雪狼の爪と中型魔石ⓢ。
みんなで頑張った結果、倒した雪狼は300匹以上は確実。
レベルも上がった。
僕とエイジがLv59。
ラスがLv68。
ロイがLv71だ。
「戻ろう」
僕がそう言った瞬間、強い風が吹き抜け、視界が真っ白になった。
「……吹雪いてきたね」
「急ぎましょう。危険です」
急いで橋を渡り、ゲートをくぐった。
すると、入れ違いに大勢の冒険者が第2エリアへ走っていく。
「吹雪だ! ビッグフットのレア種が出るぞ!」
そんな声が聞こえてきた。
どうやら第2エリアでレイドバトルが始まるらしい。
ギルド受付で話を聞くと、毎日1回はどこかでレイドバトルが発生するそうだ。
「ビッグフットが徘徊すると吹雪くんだ。だから分かりやすいんだよ」
柔和な笑みを浮かべたケントさんが教えてくれる。
「ビッグフット討伐は、吹雪との戦いでもあるからね。危険なんだが」
「なるほど。ありがとうございます」
ラスに240万ガル渡す。ブブたんの貯金残高は550万以上だ。
【雪狼の襟巻】は5人で分けた。
ギルドを出て、僕たちは少し早めの昼食を取ることにした。
混む前に食堂へ向かう。
ビッグフットは誰かが倒すだろう。
ここにはランク【B】や【A】のパーティーがたくさんいるんだから。
「ご馳走までしてもらって、すみません」
ランチを前に、クーが頭を下げた。
「いっぱい食べなよ。寒い中のドロップ回収、大変だったでしょ?」
「いえ! 大人になったら、絶対にもっと役に立ちます!」
「いつ大人になるんだ?」
エイジが尋ねる。
「8番目の月が終わったらです」
「そうか。もうすぐじゃん」
「ロイさんみたいな冒険者になりたいです!」
ソードマスター。
冒険者なら、誰だって憧れるよね。
読んでいただいて、ありがとうございました。




