20 森林ダンジョンへ
ゴリアドが姿を現した瞬間、周囲の冒険者たちは慌てて道を開けた。
彼は真っ直ぐ僕たちの前まで歩いてくる。
「坊やたち、久しぶりねぇ~」
「……はい」
「逞しくなったじゃな~い。頑張ってるわね、エイリアンズ。【C】ランクじゃないの」
どうやら僕たちのことは、すでに調べているらしい。
ゴリアドはラスをちらりと見て、妖しく笑った。
「この子は100万ガルで見逃してあげたけどぉ。坊やたちは逃がさないわよ?」
(えっ?)
「そうねぇ……一人1千万で、合計2千万ガル払うなら、見逃してあげてもいいわよ?」
(はっ!?)
「そ、そんな……酷いじゃないか」
エイジが勇気を振り絞って言い返す。
「嫌なら強くなりなさい。私を超えたら、諦めて、あ・げ・る」
そしてゴリアドは周囲を見渡し、低い声で告げた。
「この子たちに手を出したら、コ・ロ・ス・わよ?」
ギルド中がシーンと静まり返る。
「またねぇ、ダーリ~ン」
投げキッスを残して去っていくゴリアド。僕たちは茫然と、その背中を見送った。
「どうしよう、エイジ。2千万なんて」
「ゴリアドを越えよう! SSクラスになればいい!」
……いや~。
そんな簡単に言われても……。
「厄介……」
ラスの表情も暗い。
「ユイト達、ゴリアドファミリーに行く。すると奴隷のロイも行く。絶対阻止!」
「ラス……」
「ユイト様、強くなりましょう!」
「ロイ……」
「早くダンジョンに潜ろう!」
「お金、急いで稼ぐ!」
エイジもラスも焦っている。
もちろん僕だって焦ってる。
残された時間は、あと1年。
……でも。
その1年後って、いったいいつなんだよ!?
◇
みんなに急かされて、森林ダンジョンへ向かった。
冒険者の街から歩くこと500メートル。
このダンジョンは5つの広大なエリアに分かれていて、中央は大きな安全地帯だ。
大きな川に囲まれた4つのダンジョンエリアが、中央エリアと吊り橋で繋がっている。
さらに4つのエリアには小さな安全地帯が2か所ずつあり、商人たちが商売をしているのだ。
第一エリアにはLv70~77のモンスターが出没する。
冒険者たちの狙いはレアドロップ。
一攫千金を夢見て、多くの人が潜っている。
もちろん僕たちも期待して、木々が茂るダンジョンへ足を踏み入れた。
すると、いきなり風景が変わった。
爽やかな風が吹き抜け、目の前には広い草原が広がった。
数歩進んだ、その瞬間――
ピシュ!
ピシュ!
ピシュ!
突然、空から細い雷撃針が降ってきた。
「ダメージはないな」
「漆黒装備、正解だったね」
見上げると、数十匹の雷鳥が空を旋回していた。
ここは奴らの縄張りだ。
キーキーと声を上げて、侵入者の僕たちへ一斉に襲いかかってくる。
だけど――
ピッ!
ピッ!
ブブたんが正確に雷鳥の頭を撃ち抜き、次々と撃墜していく。
エイジもワンコに変身。
襲い掛かる敵に炎ブレスを吐いて、ラスとロイがとどめを刺す。
草原には魔石と【雷鳥の羽】が次々に散らばっていく。
急いで拾い集めていると、一本の雷撃針が僕の首筋に当たった。
「いったぁぁぁああ!」
──痺れて悶絶するほど痛い!
「早く~縄張りを離れよう~」
草原を300メートルほど駆け抜け、木々が茂る森へ飛び込んだ。
クーは【気配消失】のおかげで狙われなかったけれど、全力疾走で肩を上下させている。
「大丈夫?」
「はぁ、はぁ……平気です」
僕たちは【健脚】と【自動回復】があるから平気だけど、クーには、かなりきつそうだ。
「ワンワン!」
ワンコが吠えると、
茂みを押し倒しながら、巨大な鋼鉄熊が3匹飛び出してきた。
ブブたん光線が連続で3発炸裂。
先頭の1匹の巨体が仰向けに倒れる。
残る2匹はラスが魔法で足元を凍らせ動きを封じ、
続いてエイジの灼熱の炎ブレスが森を赤く染め、ロイのハルバードで素早く仕留める。
「がぁぁああああ──!」
鋼鉄熊は断末魔を上げながら、まとめて地面へ沈んだ。
さらに別の方向に現れた鋼鉄熊が、バチバチィッ! と大きな体を放電して僕達を狙っている。
「コイツ、雷魔法も使えるのか」
だけど、雷撃を放つまでの瞬間は数秒の隙ができる。そこへブブたん光線が一直線に突き刺さる。
ダダーンと地響きを立てて、次々と倒れていく鋼鉄熊たち。
僕?
もちろん盾を構えて、ブブたんをしっかり守ってたよ。
「鋼鉄熊は我々と相性がいい。連携も取りやすいですね」
「うん。どんどん倒していこう!」
地図を確認しながら森を進み、現れる鋼鉄熊を撃破していく。
3~5匹ずつ現れるから、経験値もどんどん稼げる。
しかもドロップするクマの肝は、ブブたんの換金で1個が2万ガル。
ドロップ率は70%。かなり美味しい狩り場だった。
「このペースなら1時間以内で小規模安全地帯に着くね」
その言葉どおり、僕たちは順調に目的地に到着した。
読んでいただいて、ありがとうございました。




