19 オウレリアン族のポーター、クー
冒険者の街に到着した。
高い石壁に囲まれた大きな街だ。
馬車を下りると王都とは空気がまるで違うのを感じる。
暑さを避けて木陰に座り込む人たちが大勢いた。
僕たちを値踏みするように、淀んだ眼で見ている。
まるでスラム街。
「ここは治安が悪そうです」
そう言ってロイが先頭に立った。
ギルドがあって、カジノや武器防具屋、店もたくさんある。
宿に泊まろうとしたら「PTが【A】ランク以上でないから」と断られた。
「テントと寝袋を買う必要があります」
ロイの言葉に僕はひどくショックを受けた。
「じゃあ、ダンジョンに行く時はこの荷物、テントに置いておくの?」
「そんなことしたら、テントごと盗まれますよ」
「まさか、担いで戦うの?」
「いえ、その為にポーターがいます。ほら、あれ」
ロイが示した先には大きな獣人が、大荷物を担いで歩いているのが見える。
「なるほど、運び屋さんか」
「雑貨屋に行こう」
エイジに肩を叩かれ、雑貨屋で二人用テント2組と寝袋を買った。
「宿屋に泊まりたいなら、早くランクを【A】にしようぜ」
「でも、地面で寝るなんて……」
しょんぼりと重い荷物を持って歩いていたら、誰かに袖を引っ張られた。
「お兄さん、ポーターはいりませんか?」
ピンクブロンドの男の子が僕を見上げていた。
少し浅黒い顔は痩せて、10歳くらいに思える。
「オウレリアン族だな。雇えない」
ロイが断ると、男の子は髪を隠すように、黒いキャスケットを深くかぶり直す。
そして、僕の袖を持ったまま引き下がらない。
「自分は【怪力】と【気配消失】を持ってます。料理も得意です! 一日500ガルです」
鑑定するとパッシブで『見覚えの能力が高い』とある。
なかなか彼は優秀だ。
「たったの500ガルなの?」
「はい! 普通の半額です!」
「じゃあ、全部持ってみて」
僕たちが荷物を全部渡すと、ポーターは背中の運搬用具に乗せて担いだ。
体よりも荷物の方が大きい。なんだか虐待しているような気分になる。
「うーん。君には過酷そうだな」
「300ガルでいいです。お願いします!」
「いや、500ガル払うけどさ……」
「子どもです。やめましょう」
ロイも反対みたいだ。
でも、
遠い辺境の地から来た貧しい子なのかもしれない。
僕が迷うのを見て、エイジが決めた。
「雇ってみて、ダメならクビでいいじゃん」
「そう言うなら……。じゃあ、付いて来てくれる?」
「ありがとうございます!」
お礼を言うと、彼はキャンプ場へ案内してくれて、手際よくテントを張ってくれた。
屋台もたくさん出ていたので、パンと焼き肉串を買って夕飯にする。
ポーターは「クー」と名乗った。
「レベル1……1なの⁈」
「はい……」
「オウレリアン族は成人するまでは、何者でもありません。レベルも上がらないのです」
ロイの説明に、
「へぇえ、不思議な部族なんだね」さすが異世界。と──僕はそう納得した。
夜が深まってくると、気温が下がり肌寒くなった。
狭いテントの中でエイジと並んで寝袋の中だ。
外では酔っ払いが叫んでる。
誰かの怒鳴り声、喧嘩の音。囃し立てる声。
毎日これが続くと思うと不安でしかない。
「王都の宿屋が恋しいよ……」
「そう落ち込むなよ。俺が頑張って【A】ランクにするからさ」
そう言ってエイジは「ふわぁ」と欠伸をしたので、仕方なく僕も目をつぶった。
◇
翌朝、43日目。
僕たちは、周囲から好奇の目で見られているのに気づく。
イケメン3名。おまけに子どものポーター連れ。
──目立っている、まずい!
急いで支度して、ギルドに向かった。
受付は眼鏡を掛けた男性、見た目が人族のカリウスさん。
「ああ、あなた達がエイリアンズ。ふーん」
何だろう、嫌な感じだ。
すると、横からエイジがカリウスに話しかける。
「ねえ、資金不足でさ、二人で借金したいんだけど」
「ランク【C】レベル51。お二人で1千万ガルが可能ですが」
「それでいいよ。貸して」
卑怯技。──勝手にエイジが借金申し込んじゃったよ。
契約するとピカピカの中金貨1枚が差し出された。
エイジが耳元で囁く。
「これは俺がやったことだから。唯斗は気にしなくていい」
「気にしないよ。利息払えばいいことだし」
「一月後に返そうぜ」
「うん」
ブブたんに中金貨2枚にしてもらって、全部PTカードにチャージした。
もしかしたら、不透明な資金源を持つPTとして、ギルドに怪しまれているかもしれない。
だとしても、僕たちに説明する義務もない。
返金すればいいだけのことなんだ。
【森林ダンジョン】に入る許可を貰って僕たちは歩き出した。
すると。
ぞわり……
急に背筋が寒くなった。
(うわぁあ、まさかここでも会うなんて!)
2階の階段を下りて来るゴリアドとバッチリ目が合った。
読んでいただいて、ありがとうございました。




