18 冒険者の街へ / 閑話(リエ)
サキュバス・インキュバス討伐を終えてギルドに戻る。
ランク【C】Lv51。貯金は7036250ガル
大銀貨の残り2枚は黒のPTカードにチャージ。残高は1317089ガルになった。
ラスに39万ガルとサラマンダーの牙1個を渡すと「助かる」と一言。
分配が済んで一息ついたところで、次の予定を話し合う。
僕が選んだのは『森林ダンジョン』だ。
王都を離れて、冒険者の街に移動。
街からすぐの所にあるのが『森林ダンジョン』。
近いからって理由で決定。
王都周辺の上級ダンジョンだと、一番近くても15キロ離れている。
キャンプしないといけないからパス。
「支度したら、冒険者の街に出発しよう」
まず、上級者用の装備を買いに武器防具屋に。
森林ダンジョンと聞いて店主は『漆黒防具』を勧めて来た。
丈夫で雷撃に強いらしい。
漆黒の衣服上下、メイル、ローブ、帽子、靴、手袋など4人分揃える。
エイジに切り裂きナイフ、僕用に大盾を追加。
この世界、武器防具はメチャ高い。
他に回復薬や旅行鞄、スクロールなどを買うと、エイリアンズPTカードは、130万以上あったのが0になってしまった。
「明日の朝、馬車の停留所で集合しよう」
急いで宿に戻って部屋を片付ける。
「安いからって、服とか雑貨を買い過ぎたね」
「バスタオル、なんで8枚もあるんだよ」
二人でバタバタ片付けたら、旅行鞄が5つになった。
◇
翌日。
ジニーさんにお別れして馬車の停留所に到着。
「荷物多すぎ。不用品、ブブたんに入れてしまえ!」
待っていたラスに怒られた。
「これでも減らしたんだけどな……」
ブツブツ言いながら、僕は冒険者の街行きへの幌馬車に乗った。
一人500ガル。
移動時間は、馬の休息を入れて4時間。
ガタガタと乗り心地は悪い。
じっと座っていると、いろいろ頭に浮かぶ。
(家族、どうしてるかな)
(学校、夏休み終わったな)
(映画や海に行きたかったな)
そう言えば、エイジの家族の話は聞いたことがない。
エイジの家はきっとリッチだ。だって腕時計は自動巻きの高級品だもん。
気になったので聞いてみる。
「エイジはさ、家族に会いたいって思わない?」
「特に思わない。うちは父子家庭なんだ。父は忙しい人で、俺はいつも一人だったし。だから、あのゴリアドさえいなきゃ、異世界も楽しいのに」
「そうなんだ」
「ああ、唯斗と一緒だから楽しいよ」
「今の僕は、家族と同じくらいエイジが大切だ」
「じゃあ、俺はもう唯斗の家族だな」
「うん、そう思ってるよ」
「へへっ」
エイジはいつもみたいに笑った。
前に座るラスはロイの肩に頭を寄せて、幸せな恋する乙女って顔。
この二人恋人同士なんだよな。
そう思っていると、
僕の肩にポスッとエイジが頭を乗せた。
ドキッとして横を見ると──寝てる。
僕もそっとエイジに頭を寄せる。
今の僕は、ラスと同じ顔かもしれない。
(ずっとこうしていられたらいいのに)
そして、異世界での出来事はエイジと一緒に冒険をした思い出として、
いつか元の世界で──懐かしく、語り合える日が来て欲しい。
◆閑話◇リエ◇
元の世界に帰りたい。
そう本気で思っているのは、たぶん花子と私だけだ。
青のダンジョンで藤崎君たちと再会してから、祥子とアザミは変わってしまった。
もともと私たちは、元の世界じゃ落ちこぼれだった。
勉強も努力も嫌い。
その日を楽しく過ごせればいい――そんな気楽な仲間だったはずなのに。
でも、この世界では違う。
城の人たちは私たちを『勇者様』と呼び、特別扱いしてくれる。
藤崎君たちとは、完全に立場が逆転した。
だって、あの二人は『貯金箱』と『子犬』なんだから。
義彦なんて、すっかり調子に乗って。
『最強勇者になってやる!』
そう豪語して、相変わらず偉そうな態度だ。
祥子とアザミも同じ。
この世界で力や地位を手に入れて、好きな人まで手に入れたいと思っている。
もしかしたら――元の世界に帰れなくても構わないとさえ、考えているのかもしれない。
考え方は人それぞれだ。
だけど、強くなるという目標だけは全員同じのはず。
私たちは、Sクラス以上の高難易度ダンジョンを封印しなければならない。
理由は単純だ。
冒険者たちが力を持ちすぎたから。
冒険者たちの基盤であるダンジョンを潰すこと。
それが、私たち勇者の役目。
ギルドは本来、国が冒険者を管理するために作った組織。
なのに今では、国と並ぶ立場にまで成長している。
ラリア王女は、それが気に入らない。──そして、恐れている。
私は『魔導士』。
強力な魔法を使える私にとって、今のところ怖い相手はいない。
青のダンジョンは、すでに5階層まで攻略している。
この調子なら、すぐに上級ダンジョンへ挑戦できるはずだ。
勝手に異世界へ召喚されたことには、今でも凄く腹が立っている。
それでも。
元の世界へ帰るためには、やるしかない。
読んでいただいて、ありがとうございました。




