16 義彦たちとの再会
双頭の犬になったエイジ。
新しく生えた頭は、「俺の中のもう一人の俺」だと言う。
意識の世界だとか、脳内の情報処理だとか説明されたけど全く分からない。
「難しく考えなくていい、どっちも俺ってことで」
「いつか、怪獣映画みたいな、三つ首ドラゴンにならないよね」
「なるもんか。俺は【犬】だから」
──いや、もう普通の犬じゃないよね。
「変身時間も1時間以上になったから、牙集めが捗るはずだ」
「うん。上級ダンジョンにいけるね」
仲間も増えた。
きっと僕たちは大丈夫だ。
◇
サラマンダーの牙集めは、あと28個。
ギルドに着くと、ここでラスがサラマンダーの牙を10個、僕に渡す。
「これで100万ガル返済」
「いいよ。でもPTメンバーになるなら、10万ガル買い取りは今回だけだよ?」
ラスは頷いた。
ロイの為にサラマンダーの牙を高値で売っていたという。
不愛想な彼だけど、その愛は情熱的だった。
牙──残りは18個。
エイジの頼みで、受付で試しに聞いてみた。
「ジニーさん、3千万ガル貸して貰えませんか?」
「え? 無理です」
やっぱりね。これでエイジも諦めるだろう。
エイジが不満の声を上げる。
「ラスは借りられたのに」
「レベルが50未満、ギルドランク【D】だと、お二人で700万です。ラスさんは冒険者になって6年の実績がありますから」
なるほど、実績か。
でも700万も貸してくれるんだ。
「700万でいいです。貸して下さい!」
横からエイジが申し込んじゃったよ。
「利息は月に11620ガルです。大丈夫ですか? 返せないと借金奴隷ですよ?」
「大丈夫!」
「承知いたしました」
ジニーさんから小金貨7枚を受け取ると、ちょっと背徳感を感じる。
ラスが尋ねる。
「オレが5千万、ユイトに借りたから?」
「違うよ。ラスは関係ないよ」
「ごめんね、ブブたん」
僕は小金貨7枚を投入。1400万になった。
手が震える。怖いくらい凄いスキルだ。
「やったな、唯斗」
「なんだか卑怯な気がするんだよ」
「気にしない。異世界で生きていくために、スキルは最大限利用しよう」
僕が臆病なだけなのかな。
ファミリーや、奴隷なんて制度がある世界だ。
真面目なだけじゃ生き残れない。
僕はブブたんにお願いして、小金貨7枚を出した。
「ジニーさん、やっぱり返します」
「ええ、借金なんてしない方がいいですよ」
──僕はブブたんを利用して700万ゲット、100万ガルをPTカードにチャージした。
その足で、ラスをパーティに加えて【青のダンジョン】へ。
朝10時。
いつもの時間なのに、入口付近が妙に騒がしい。
今日は空気が違う。
兵士の姿も見える。
「千葉君!」
突然名前を呼ばれた。
呼んだのは、赤いメッシュの入った髪の女子――アザミだった。
そこにはクラスメイトが5人。
数人の兵士に囲まれながら、こっちを見ていた。
僕は慌ててブブたんを鞄にしまい、ハルバードをラスへ渡す。
「お前ら、生きていたのかよ!」
義彦が兵士を押しのけて近づいてくる。
勇者らしい立派な装備。
そして、いかにも自信満々な顔。
「唯斗、どうする?」
「誤魔化そう」
今の実力を知られるのは面倒だ。
義彦は近くまで来ると、僕たちに見下した目を向ける。
「なんでここにいるんだ? 生意気に防具なんか装備してよぉ」
「久しぶりだね。僕たち、ちょっと覗きに来たんだよ。どんなダンジョンかなーって」
すると義彦の視線が、ハルバードを持ったラスへ向く。
「あ? お前ら、コイツに養ってもらってるのかよ」
「うん、まあ、そんなとこかな」
祥子たち女子も近づいてきた。
「藤崎君!」
だけど。
「皆様、勝手な行動は慎んでください! 訓練を始めます!」
後ろから兵士の声が飛んだ。
「チッ! うっせーな」
義彦は舌打ちしながら、エイジを見る。
「お犬様の散歩か? 呑気なもんだ」
「義彦! そんな言い方やめてよ!」
祥子が注意する。
エイジは肩をすくめた。
「犬で悪いな。元の世界に戻れるように頑張ってくれよ」
「藤崎君、絶対に一緒に帰ろうね。私、頑張るから!」
いつもは生意気な祥子だけど、この時は可愛く見えた。
「千葉君、困ってない?」
アザミが心配そうに聞いてくる。
なぜだ? そんなに親しくも無いのに。
「ありがとう。大丈夫だよ」
「良かった」
そのやり取りを見てた義彦が鼻を鳴らした。
「ふん! 俺らに任せて、役立たずのクズは帰って遊んでろよ」
「うん。みんな訓練頑張ってよね」
「チッ!」
義彦は挑発に乗らない僕たちが気に入らない顔。祥子とアザミは手を振りながら、それぞれ訓練へ戻っていった。
「ヘヘ、誤魔化せたな」
エイジが笑う。
「今から1階層で訓練か。遅くないか?」
「どうかな。僕たちが早すぎるのかも」
「明日からは、もっと早く来ようぜ。義彦には会いたくない」
「そうしよう」
久しぶりの再会。みんな元気そうで安心した。
本当なら一緒の仲間だった。
7人揃って召喚されたのには、それなりの理由があるはずだ。
僕とエイジを切り捨てたことを、あの王女にいつか後悔してもらいたい。
距離を取りながら、見つからないよう、義彦たちを追った。
読んでいただいて、ありがとうございました。




