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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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16/22

16   義彦たちとの再会

 双頭の犬になったエイジ。


 新しく生えた頭は、「俺の中のもう一人の俺」だと言う。

 意識の世界だとか、脳内の情報処理だとか説明されたけど全く分からない。


「難しく考えなくていい、どっちも俺ってことで」


「いつか、怪獣映画みたいな、三つ首ドラゴンにならないよね」


「なるもんか。俺は【犬】だから」


 ──いや、もう普通の犬じゃないよね。


「変身時間も1時間以上になったから、牙集めが捗るはずだ」


「うん。上級ダンジョンにいけるね」


 仲間も増えた。

 きっと僕たちは大丈夫だ。



 ◇



 サラマンダーの牙集めは、あと28個。


 ギルドに着くと、ここでラスがサラマンダーの牙を10個、僕に渡す。


「これで100万ガル返済」


「いいよ。でもPTメンバーになるなら、10万ガル買い取りは今回だけだよ?」


 ラスは頷いた。

 ロイの為にサラマンダーの牙を高値で売っていたという。

 不愛想な彼だけど、その愛は情熱的だった。


 牙──残りは18個。


 

 エイジの頼みで、受付で試しに聞いてみた。


「ジニーさん、3千万ガル貸して貰えませんか?」


「え? 無理です」


 やっぱりね。これでエイジも諦めるだろう。


 エイジが不満の声を上げる。


「ラスは借りられたのに」


「レベルが50未満、ギルドランク【D】だと、お二人で700万です。ラスさんは冒険者になって6年の実績がありますから」


 なるほど、実績か。

 でも700万も貸してくれるんだ。


「700万でいいです。貸して下さい!」


 横からエイジが申し込んじゃったよ。


「利息は月に11620ガルです。大丈夫ですか? 返せないと借金奴隷ですよ?」

「大丈夫!」

「承知いたしました」


 ジニーさんから小金貨7枚を受け取ると、ちょっと背徳感を感じる。


 ラスが尋ねる。


「オレが5千万、ユイトに借りたから?」

「違うよ。ラスは関係ないよ」


「ごめんね、ブブたん」

 僕は小金貨7枚を投入。1400万になった。


 手が震える。怖いくらい凄いスキルだ。


「やったな、唯斗」

「なんだか卑怯な気がするんだよ」

「気にしない。異世界で生きていくために、スキルは最大限利用しよう」


 僕が臆病なだけなのかな。


 ファミリーや、奴隷なんて制度がある世界だ。

 真面目なだけじゃ生き残れない。


 僕はブブたんにお願いして、小金貨7枚を出した。


「ジニーさん、やっぱり返します」

「ええ、借金なんてしない方がいいですよ」


 ──僕はブブたんを利用して700万ゲット、100万ガルをPTカードにチャージした。



 その足で、ラスをパーティに加えて【青のダンジョン】へ。


 朝10時。


 いつもの時間なのに、入口付近が妙に騒がしい。

 今日は空気が違う。


 兵士の姿も見える。


「千葉君!」


 突然名前を呼ばれた。

 呼んだのは、赤いメッシュの入った髪の女子――アザミだった。


 そこにはクラスメイトが5人。

 数人の兵士に囲まれながら、こっちを見ていた。


 僕は慌ててブブたんを鞄にしまい、ハルバードをラスへ渡す。


「お前ら、生きていたのかよ!」


 義彦が兵士を押しのけて近づいてくる。


 勇者らしい立派な装備。

 そして、いかにも自信満々な顔。


「唯斗、どうする?」


「誤魔化そう」


 今の実力を知られるのは面倒だ。


 義彦は近くまで来ると、僕たちに見下した目を向ける。


「なんでここにいるんだ? 生意気に防具なんか装備してよぉ」


「久しぶりだね。僕たち、ちょっと覗きに来たんだよ。どんなダンジョンかなーって」


 すると義彦の視線が、ハルバードを持ったラスへ向く。


「あ? お前ら、コイツに養ってもらってるのかよ」

「うん、まあ、そんなとこかな」


 祥子たち女子も近づいてきた。


「藤崎君!」


 だけど。

「皆様、勝手な行動は慎んでください! 訓練を始めます!」

 後ろから兵士の声が飛んだ。


「チッ! うっせーな」


 義彦は舌打ちしながら、エイジを見る。


「お犬様の散歩か? 呑気なもんだ」


「義彦! そんな言い方やめてよ!」 


 祥子が注意する。


 エイジは肩をすくめた。


「犬で悪いな。元の世界に戻れるように頑張ってくれよ」


「藤崎君、絶対に一緒に帰ろうね。私、頑張るから!」


 いつもは生意気な祥子だけど、この時は可愛く見えた。


「千葉君、困ってない?」


 アザミが心配そうに聞いてくる。

 なぜだ? そんなに親しくも無いのに。


「ありがとう。大丈夫だよ」

「良かった」


 そのやり取りを見てた義彦が鼻を鳴らした。


「ふん! 俺らに任せて、役立たずのクズは帰って遊んでろよ」


「うん。みんな訓練頑張ってよね」


「チッ!」


 義彦は挑発に乗らない僕たちが気に入らない顔。祥子とアザミは手を振りながら、それぞれ訓練へ戻っていった。



「ヘヘ、誤魔化せたな」


 エイジが笑う。


「今から1階層で訓練か。遅くないか?」

「どうかな。僕たちが早すぎるのかも」


「明日からは、もっと早く来ようぜ。義彦には会いたくない」

「そうしよう」


 久しぶりの再会。みんな元気そうで安心した。


 本当なら一緒の仲間だった。


 7人揃って召喚されたのには、それなりの理由があるはずだ。

 僕とエイジを切り捨てたことを、あの王女にいつか後悔してもらいたい。


 距離を取りながら、見つからないよう、義彦たちを追った。



読んでいただいて、ありがとうございました。

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