15 エイジの提案 / 閑話 花子
ラスとロイのために部屋を取って休んでもらうことにした。
「こんな高い宿。贅沢」
二人は遠慮した。
そうか。この宿って高いんだ。
ブブたんがいるせいで、僕の金銭感覚はかなりズレている。
ラスに比べたら、お金で苦労したことなんて、ほとんどない。
「宿代は僕が出すから大丈夫。他の話は夕飯の時にしよう」
「分かった……」
ラスたちと別れ、僕は部屋へ戻った。
エイジは先にシャワーへ行っている。
僕はブブたんをテーブルの上に置いた。
「今日は助けてくれて、ありがとうブブたん」
ブブブブーー!
5千万ガルも増やしてくれたんだから、一番の功労者だ。
「奴隷商なんてあるの、びっくりだったよね」
この国では軽犯罪者は、鞭打ち罰金制。金がなければ奴隷として売られる。
ロイみたいに高位貴族を怒らせても奴隷だ。
重犯罪者は鉱山送りか処刑で人生終了。
本当に恐ろしい世界だ。
そこへシャワーを終えたエイジが戻ってくる。
「エイジ、ごめんよ」
僕がまた謝ると――
ポン!
エイジはワンコになった。
そのまま飛びついてきて、左右の頬をぺろぺろ舐める。
「や、やめろ……エイジ……」
でも、これはワンコの愛情表現……受け入れよう。
「よしよし、僕のこと許してくれるの?」
「ワン!」
「ありがとう~」
僕はワンコをぎゅっと抱きしめた。
シャワーを済ませた後、食堂へ向かう。
エイジも人の姿に戻り、機嫌はすっかり直っていた。
料理を待っていると、エイジが提案してきた。
「大金を借りて倍にして、元金と利息を返すんだ。1億ガルなんて簡単には稼げない。ブブたんに助けてもらおう」
確かに、それなら誰にも迷惑はかけないでお金を増やせる。
でも。
「僕は……ラスの5千万だって返さなくてもいいと、思ってる」
「分かってるさ」
「それに僕たちみたいな未成年に、誰もお金なんて貸さないよ」
「利息がもらえるんだ。誰でも喜んで貸してくれる」
「そうかな。噂になって、ブブたんの事バレたら困る」
「俺を助けると思って、頼む」
ゴリアドの件でエイジがそう考えるのは仕方ないと、思う。
これは性格の違いもあって、どっちが正しいとかでもない。
「試しに、ギルドに相談してみよう」
「……うん」
大金なんて誰も貸してくれない。僕はそう思った。
そもそも僕はファミリー結成に賛成じゃないんだ。
エイジと会話が途切れると、ラスとロイが食堂へやって来た。
二人に席を勧めると、料理も運ばれてきた。
ロイの前にはパンとスープだけだ。
「奴隷商では、ずっとオートミールでした。
急に豪華な食事をすると、胃に負担がかかるので」
ラスと違い、ロイは流暢に話す。
「そっか。早く健康になってね」
僕たちは歩き回るパーティーだから、体調は大事だ。
「ラスはゴリアドファミリーに誘われているんだよね?」
「あんた達も同じだろ? 冒険者内で有名」
――僕とエイジ、有名なんだ……。
「ゴリアドのせいでソロになった。ロイのこともあって、オレは大金が必要だから」
僕は二人を見た。──かなりの美形だ。
特にラス。
年下と思っていたけど、二人とも僕より2歳年上だった。
エイジが犬っぽいなら、ラスは猫っぽい。
背も僕より少し低い。
ロイはエイジより少し背は高い。シュッとしたイケメンだ。
話し合いの結果、ダンジョンに潜るのは僕とエイジ、ラス。
弱っているロイはしばらく待機だ。
ラスは今、一番必要なのはお金だと言った。
あの5千万のうち、3千万はギルドから借りたらしい。
「3千万も借りたの?!」
「毎月の利息、5万ガル、必ず払わないといけない」
──ラス、借金地獄だな。
パーティーの稼ぎの分配なんかは、実際に一緒に動きながら決める。
とりあえずの目標は――【上級ダンジョン通行書】を手に入れることだ。
現在ブブ貯金は950887。ランク【D】Lv45 PTカード102089 牙22
◇◆◇閑話 花子◇◆◇
「戦闘にも慣れてきた。次から中級【青のダンジョン】に挑む」
教育係のムー将軍は、ウチらにそう言った。
ウチは山中花子。
スキルは【神弓】──嘘みたいや。
弓なんかやったことないのに。
でも勇者チート?
直ぐ上達したわ。
王女さん。はよSSSクラスになれって。マジでうっさい!
やっとレベル20や!
無茶いわんといて欲しい。
なんや、王家は冒険者ギルドと対立してるみたいや。
知らんけど。
どうでもええねん。
はよ、家に帰りたい。
翔子は我儘で、毎日機嫌も悪い。
推しの藤崎君が追放されたもんやから、周囲に八つ当たりや。
ウチに標準語を強制するし。
アザミなんか、ぼ~っとしてるよって、祥子に怒られてばっかりや。
知ってるで。
アザミは千葉唯斗推しや。追放されたんで、心配でたまらんのや。
残った佐川義彦。
ずっと祥子に言い寄ってたのに、今は王女さんに熱を上げとる。
でもな。
──そんなん、ぜんぶ、どうでもええ。
家に帰りたい!
家族は皆、心配してるやろな。
ああ……はよ……帰りたい。
読んでいただいて、ありがとうございました。




