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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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14/23

14  4人パーティを組もう

 たくさんの奴隷の中で、1億ガルという値段は別格だった。

 そして、彼だけが体に酷い傷を負ったまま、手当もされていない。


 僕は見過ごせなかった。


「……ラス」


 声を掛けるとラスは僕の方を見た。


「唯斗!」

 エイジが止める。


「ラス、いくら持ってるの?」


「……」

 答える気はないらしい。


「もし5千万ガル持ってるなら、僕が5千万ガル貸してあげるよ?」


「よせ!」

 エイジが慌てて僕の腕を引っ張った。


「ブブたんの2倍がどこまで成功するか分からないんだ。やめておけ」

「やってみないと分からないよ」


 ラスの目は明らかに警戒している。


「そんな大金を、オレに貸すだって? あんたが?」


「うん。ただし、君も5千万ガル持ってるならね」


「なら、先に見せてみろ。【中金貨】5枚!」


 ──なるほど、そう来たか。


「信用できないなら別にいいよ」


 僕は踵を返した。

 知り合ったばかりだ。疑われても仕方ない。


「待て!」


 ──おっ、呼び止められた。


「5千万ガルあれば、本当に貸してくれるんだな」


 僕は鞄からブブたんを取り出した。


「もちろん。この中から出せるよ。利息もいらない」

「分かった。ギルドに行ってくる」


「やめろ、そんなうまい話あるものか!」

 檻の中の青年が叫ぶ。


 それでもラスはギルドに向かい、数十分で戻ると【中金貨】5枚を僕に差し出した。


「一人で貯めたの? すごいね」

「いいから、早く」


「じゃあ、この貯金箱に入れて。倍にして渡すから」


「は?」


 当然の反応だ。


「もし嘘だったら、割ってお金を取り戻していいよ」

「当然そうする。持ち逃げしたらコロス」


 物騒だなぁ。


 ラスは数秒迷ったあと、

 一か八かって顔で【中金貨】5枚をブブたんの中へ入れた。


 チャリーン!


 僕はブブたんに祈る。


「ブブたん。【中金貨】10枚だけ出してくれる? お願い! お願いだ!」


 そう言いながら鞄を広げて、ブブたんを逆さにすると――


 チャリン、チャリン……チャリン!


 出た!


 【中金貨】10枚!


 ラスとエイジは大きく目を見開いた。



 ちなみに、

 お金を出しては入れ、出しては入れを繰り返せば、無限に増えるんじゃないかって?


 もちろん試したさ。

 でも増えなかった。


 ブブたんから出た硬貨は、もう2倍にならない。

 そこまでブブたんは甘くなかった。



「これで彼を解放できるね」

 ラスに金貨を握らせると、ラスは僕の腕を引いて店の奥へ向かった。


 そこには、大量の料理をテーブルに並べて食べている、でっぷり太った奴隷商の店長がいた。


「店先の奴隷を買う。1億ガルだ」


「はいはい」

 店長はのっそりと立ち上がる。


「奴隷の主。この人だ!」


 え?


 僕?


「いや、僕は──」

「借金を返すまで、あんたが主人だ」


「しかし……」

「オレが主になる場合。もし借金返せなくなると、主従二人とも奴隷になる」


「それは……」

「頼む!」


 こうして奴隷のロイを、僕が買うことになった。

 てっきりロイとラスは兄弟と思っていた、髪と目の色が同じだったから。


 ──違った。

 二人は従兄弟(いとこ)、しかも、恋人同士だ。


 ロイが解放されるとラスはバッグから上着を出して彼の肩に掛け、強く抱きしめた。


 主従契約を結ぶと、ロイは床に額をつけた。

「ありがとうございます。このご恩は一生忘れません!」


 ロイはラスを見て目を潤ませる。

「迷惑かけて、本当に済まない」


 そりゃそうだ。

 ラスは5千万もの借金を背負ったんだから。


「どうして奴隷になったの?」


 もし危険な犯罪者だったら怖い。

 その時はラスに返そうと思った。


 でも、ロイは違った。

 彼は、一ヶ月前までは高位貴族の息子の護衛だったと説明した。


「ダンジョンの中で坊ちゃんは私の言うことを聞いてくれなくて。勝手に動いて罠にはまり、大怪我をしたんです」


「そんな理由で奴隷になったの?」

「はい。平民なんてそんな扱いです」


 しかも高位貴族は奴隷商人に『ロイを毎日鞭打ち10回せよ』と、命令を出していた。


 ──理不尽すぎるな、この世界の貴族。

 酷い拷問を受けてロイの体はボロボロだ。


「大変だったね。もう自由だから安心してよ」


「これからどうするんだ?」

 エイジが尋ねる。


「どうもしないよ? 二人で仲良く暮らせばいいよ」


「そうはいきません! 私はユイト様の奴隷ですから。必ずお役に立ちます」


「そんなの気にしないで」


 どれだけ断っても、ロイは引き下がらない。

 ラスも同じだった。


「それなら、いっそパーティを組もうか?」


 護衛をしていたなら実力もあるはずだ。

 しかも奴隷なら裏切る心配もない。


 無口なラスなら、余計なトラブルも起こさないだろう。

 僕としては良い案だと思った。


 だけど──

 エイジは不機嫌な顔だ。


「エイジ、勝手に決めてごめん」


「いいよ。リーダーは唯斗だから従うよ」


 うわ。


 絶対に怒ってる。


「いや、リーダーはエイジだから!」

「エイリアンズのボスは唯斗だ。命運を託す」


「そんな……」


 夕暮れの街をエイジはスタスタと、先を歩いていく。


「ごめん。エイジ、本当にごめん」


 慌てて後を追いながら、僕は何度も謝った。

 

 ラスは弱ったロイを支えながら、僕の後をついて来る。

 到着したのは、いつもの宿屋。


「まずはロイを休ませてあげよう」

「エイジ……」


 優しい。


 やっぱり僕はエイジが好きだ。



読んでいただいて、ありがとうございました。

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