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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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13/23

13  ワンコ、双頭の犬になる

 38日目。


 7階層まで通い続け、今やっとLv45に到達した!

 ブブ光線が2発でサラマンダーを倒せるようになったよ。


 調子よく倒していると、急にブブたんが僕の目の前まで下りて来た。


「ん? どうしたの?」


 階段に向かう。

 そこでブブたんはグリングリンと回転して、小銅貨を1枚地面に落とした。


「何を訴えてるの?」


 落とした小銅貨を戻すとブブたんは次に小銅貨2枚を地面に落とす。


「なんだこれ?」


 それを戻すと、次は4枚。戻すと8枚……16枚……32枚。


「お金が2倍になるってコト?!」


 ブッ! ブブブブブブーーーー!


「換金が2倍なの? じゃあ、歩数はどう?」


 ブッブブブーーーーー!


 ブブたんは僕の周りを嬉しそうにクルクル飛び回った。


「マジで? 全部2倍? ブブたんありがとう!」

 これは飛び上がるほど嬉しいスキルだ。


 隣では魔石を食べていたワンコが、ブルブルと体を震わせる。


 次の瞬間、全身がまばゆく輝いた。


「おぉ、進化キタ?」


 ワンコの体はみるみる大きくなり、セントバーナード以上の巨体になっていた。

 それでも無駄な肉はなく、灰色狼みたい。

 キリッとした顔も威厳がある。


「うわ、すごくカッコイイ!」


 そう思った直後だった。


 ──ん? ワンコにまだ変化が……


「どうなってるの?」


 ──へ?


「……エイジ?」


 目を疑った!


「え! ええっ!」


 だってワンコの頭が――


 もう一つ生えてきた!


「うっそ──!」


 エイジは双頭の犬に進化した。


「ワンワン! ワンワン!」


 ワンコは大喜びで飛びついてきた。


「ちょ、やめ、ヤメロ、エイジ!」


 右からも左からも顔をベロベロ舐められる。

 あっという間に顔がベチョベチョだ。


「頭が2つになったけど。……中身はエイジ、一人だよね?」

「ワン! ワン!」


 うーん、分からない。

 どっちも「ワン」しか言わない。


 興奮したワンコは、7階層を勢いよく駆け回った。

 サラマンダーを見つけると飛びかかる。

 鋭い牙で噛みつき、爪で切り裂く。


 機敏さも格段に上がった。


 さらに驚いたのは、新たな頭だ。

 口を開いた瞬間、白い光線を放った。


「これ、ラスの魔法と同じか」


 圧縮された超高圧の水がサラマンダーを撃ち抜く。


「片方は水属性なのか。凄すぎる。めちゃ頼もしい!」

「ワン! ワン!」


 見た目はもう全然可愛くない。

 だけど――めちゃくちゃカッコイイ!

 シェパードじゃなかったけど、これはこれで最高だよね。


 サラマンダーを数匹倒したあと、ワンコが何かを咥えて戻ってきた。


【魔力の腕輪】消費MP20%カット。


「いいの出たね!」

「ワン! ワン!」


 ブブたんはガル消費だから、MP20%カット効果は関係ない。

 ふと、ラスの顔が頭に浮かんで、腕輪は鞄に入れた。


 ◇



 ダンジョンを出て街へ戻る。


 サラマンダーの牙は7個拾って22個集まった。


 宿へ向かう途中、いつもの場所でラスを見つけた。

 地面に座り込み、水を売っている。


「ラス、最近はダンジョンで会わないね」


「……」


 無視された。

 多分ダンジョン内でも避けられているんだろう。


 僕は気にせず、鞄から【魔力の腕輪】を取り出し、差し出した。


「これ、使う?」


 ラスは黙ったまま腕輪を見つめた。

 肩から斜め掛したバッグを開き、中から何かを取り出して僕へ放り投げた。


 受け取ると、それは僕がずっと欲しかった【力のグローブ】だった。


「交換ってこと?」

         

「売ろうと思ってた。いらないなら、いい」


「欲しいよ。交換しよう!」


 交換するとラスは立ち上がり、体についた土を払った。


 それから僕に言ったんだ。

「サラマンダーの牙、100万ガルで10個。どう?」


 10個。


 ──欲しかった。


 横でエイジも息をのむ。

 サラマンダーの牙集めには、二人ともウンザリしていた。


「それって不正じゃないの?」


「黙認されている」


 なら問題ないな。ズルいけど。


「唯斗、100万なんて、ぼったくりだ」

「うん……分かってる。断るよ」


「……」

 無言のラスに、突然誰かが声を掛けた。


「ラス、集金だ」


 見覚えのある美青年だ。


 ラスは無言で小金貨を1枚差し出した。


 受け取った青年が呟く。

「さっさとファミリーに入ればいいのに」


 思い出した。

 こいつはゴリアドの後ろにいた男だ。


 ラスも呟く。

「死んだ方がマシだ」


 僕は察した。

 渡した小金貨は――きっと【見逃し料】なんだろう。

 ゴリアドにラスも目を付けられたんだ。


 僕たちを無視して、ラスは何か目的があるみたいに迷いなく歩き出した。


 気になった僕は、その後を追う。

 エイジは何も言わずについて来る。


 さびれた通りを進んだ先にあったのは、奴隷商だった。


 店の前には檻が並んでいる。

 その中には全身に傷を負った青年がいた。


 ラスは水を出し、その青年に渡す。


「必ずここから出す。待ってろ」

「無理するな、もういい。どうせ私は一生奴隷だ」


 ラスの背中越しに檻を見る。

 値札には――1億ガル。


 ──高い!


 エイジが僕の袖を引っ張った。


「唯斗、かかわるなよ」

「う、うん」


 でも、気になる。

 僕なら、あの二人に手を貸してあげられるかもしれない。



読んでいただいて、ありがとうございました。

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