11 ラス / 閑話アザミ
僕とエイジの異世界生活──もう32日目だよ。
レベル40になっていた。
ブブ貯金は738550ガル。黒のGTカードにも59089ガル入っている。
この日、僕たちは最下層の7階へ到達していた。
ブブたん光線は相変わらず強力だけど、今は1発撃つたびに貯金を400ガル消費する。
ここのラスボスは、悪魔のサキュバスが2匹とインキュバスが1匹。
討伐は不要。
なぜなら【魅了】されてパーティーが全滅する確率が高いから、無理な挑戦は推奨されていない。
ここで出没するサラマンダー。
炎を纏った、超大型のトカゲみたいなモンスター。
僕たちのミッションは──牙を50個集めること。
達成すれば上級ダンジョンへの挑戦権が手に入る。
……言うのは簡単だけど。
これが全然ドロップしないんだよ。
おまけにサラマンダーは火属性。
エイジとは相性が悪かった。
しかもサラマンダーを倒すのにブブ光線3発必要。
今は1発が400ガル消費なので──1200ガルが消える。
燃費悪すぎ。
サラマンダーだけじゃない。
他のモンスターも、うようよいる。
「6階層に戻ろう」
僕が言うと、エイジは素直に頷いた。
6階層はゴーレムだらけだ。
硬い敵だが、胸のコアさえ壊せば簡単に倒せる。
……まあ。
ブブたんだから簡単なんだけどね。
僕のハルバードじゃ、なかなかコアを壊せない。
エイジ、ゴーレムも苦手だ。
たまに上から攻撃してくる怪鳥モンスターを処理。
ここまで来て、エイジはちょっと不機嫌だ。
中型犬から、なかなか進化しないのも理由の一つ。
ちょっと焦っているみたい。
でも、この階層には夢がある。
超低確率でゴーレムからレアドロップ【力のグローブ】がでるらしい。
欲しい。
すごく欲しい!
なのに全然出ない。
通常ドロップが大理石。
重いから冒険者には不人気だけど、実は結構な高値が付く。
座布団サイズでも4000ガルになる。
「今日はもう帰ろう」
エイジに声を掛けた。
その時だった。
――彼に会った。
水売りの魔法使い。
ソロで6階層まで来ている。──実力者だな。
僕を見るなり、彼は少しだけ目を見開いた。
「もう、ここまで来たのか」
「うん。君はソロなの? 凄いね」
「好きでやってない」
ぶっきらぼうに答えると、彼はゴーレムへ向かって魔法を放った。
圧縮された超高圧の水が一直線に飛ぶ。
ゴーレムの胸のコアが撃ち抜かれた。
「凄い、それだとサラマンダーは楽勝だね」
「魔力、直ぐ枯渇」
不機嫌そうな返事。
なるほど。
エイジの炎は特殊だけど、普通の魔法使いは魔力を消費する。
ブブたんが貯金を使うのと同じだ。
「あ、名前を教えて」
「ラス」
一言だけ。
ラスは7階層への階段へ向かって歩き出した。
彼、必要最低限しか話さないんだな。
でも、気になってしまう。
「ラス! サラマンダーの牙50個、集まりそう?」
返事はなかった。
そのまま姿が見えなくなる。
「なんだあいつ、不愛想だな」
人の姿に戻ったエイジが不満そうに言った。
「どうしてソロなんだろう」
「性格が悪いからさ」
悪人には見えないけど、人付き合いは苦手そうだ。
「彼、孤独に見えた」
「皆が唯斗みたいなら、世界は平和だよ、きっと」
「どういう意味?」
「唯斗はすこぶるいいヤツってコト」
うーん、どっちかというと、僕はお人好しだな。自覚はある。
◇◆◇閑話◇◆◇
あたしは今川翔子の子分。いわゆるモブキャラポジ。
翔子は今川重工の社長令嬢。そして、あたしの父親はその会社の社員。
だから昔から逆らえなかった。
異世界に来たって同じ。
本当は命令なんてされたくない。
でも、日本へ帰れるなら、今は波風を立てない方がいい。
あたしのスキルは補助魔法。
前線で派手に戦うんじゃなくて、後ろから仲間を支援するサポート役。
性格的には合ってるのかも。
でも――。
やっぱり納得できないよ。
あの翔子が聖女?
人から感謝されるより、恨まれる方が多いのに。
それに義彦。
あの不良が魔法剣とか。
この世界おかしい。
藤崎英二。なんで犬?
それと、千葉唯斗君。
あたしは人気者の藤崎より、千葉君の方が好きだ。
善人オーラ全開。
優しそうで、草食男子って感じ。
こんな気持ち、翔子には絶対に知られたくない。
あたしのことからかって、虐めるに決まってる。
翔子はマジ性格が悪い。大嫌いだ。
千葉君、どうしてるかな。
追放なんてひどいよ。
でもきっと無事だよね?
今日も義彦がラリア王女に絡んでる。
「なんでダンジョン封印すんの?」
「必要ないからです。冒険者たちが付け上がるだけで、邪魔な存在なのです」
「魔王とか、関係ねーの?」
「ありません」
「オレら召喚された意味あんの?」
「あります。早くSSSクラスの勇者になって下さい」
冷たい声だった。
まるで道具に話しかけているみたいに。
ラリア王女、信用できない。
本当に、日本へ帰れるのかな。
そんな不安ばっかり積もっていく。
そして最後には、いつも同じことを考える。
──千葉君どうしてるかな。
読んでいただいて、ありがとうございました。




