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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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11/23

11 ラス / 閑話アザミ

 僕とエイジの異世界生活──もう32日目だよ。


 レベル40になっていた。


 ブブ貯金は738550ガル。黒のGTカードにも59089ガル入っている。


 この日、僕たちは最下層の7階へ到達していた。

 ブブたん光線は相変わらず強力だけど、今は1発撃つたびに貯金を400ガル消費する。


 ここのラスボスは、悪魔のサキュバスが2匹とインキュバスが1匹。

 討伐は不要。


 なぜなら【魅了】されてパーティーが全滅する確率が高いから、無理な挑戦は推奨されていない。


 ここで出没するサラマンダー。

 炎を纏った、超大型のトカゲみたいなモンスター。


 僕たちのミッションは──牙を50個集めること。

 達成すれば上級ダンジョンへの挑戦権が手に入る。


 ……言うのは簡単だけど。

 これが全然ドロップしないんだよ。


 おまけにサラマンダーは火属性。

 エイジとは相性が悪かった。


 しかもサラマンダーを倒すのにブブ光線3発必要。

 今は1発が400ガル消費なので──1200ガルが消える。


 燃費悪すぎ。


 サラマンダーだけじゃない。

 他のモンスターも、うようよいる。


「6階層に戻ろう」


 僕が言うと、エイジは素直に頷いた。


 6階層はゴーレムだらけだ。

 硬い敵だが、胸のコアさえ壊せば簡単に倒せる。


 ……まあ。

 ブブたんだから簡単なんだけどね。

 僕のハルバードじゃ、なかなかコアを壊せない。


 エイジ、ゴーレムも苦手だ。

 たまに上から攻撃してくる怪鳥モンスターを処理。

 

 ここまで来て、エイジはちょっと不機嫌だ。

 中型犬から、なかなか進化しないのも理由の一つ。

 ちょっと焦っているみたい。


 でも、この階層には夢がある。

 超低確率でゴーレムからレアドロップ【力のグローブ】がでるらしい。


 欲しい。

 すごく欲しい!


 なのに全然出ない。

 通常ドロップが大理石。


 重いから冒険者には不人気だけど、実は結構な高値が付く。

 座布団サイズでも4000ガルになる。



「今日はもう帰ろう」


 エイジに声を掛けた。


 その時だった。


 ――彼に会った。


 水売りの魔法使い。

 ソロで6階層まで来ている。──実力者だな。


 僕を見るなり、彼は少しだけ目を見開いた。

「もう、ここまで来たのか」


「うん。君はソロなの? 凄いね」


「好きでやってない」

 ぶっきらぼうに答えると、彼はゴーレムへ向かって魔法を放った。


 圧縮された超高圧の水が一直線に飛ぶ。

 ゴーレムの胸のコアが撃ち抜かれた。


「凄い、それだとサラマンダーは楽勝だね」


「魔力、直ぐ枯渇」


 不機嫌そうな返事。


 なるほど。

 エイジの炎は特殊だけど、普通の魔法使いは魔力を消費する。

 ブブたんが貯金を使うのと同じだ。


「あ、名前を教えて」


「ラス」

 一言だけ。


 ラスは7階層への階段へ向かって歩き出した。

 彼、必要最低限しか話さないんだな。


 でも、気になってしまう。


「ラス! サラマンダーの牙50個、集まりそう?」


 返事はなかった。

 そのまま姿が見えなくなる。


「なんだあいつ、不愛想だな」

 人の姿に戻ったエイジが不満そうに言った。


「どうしてソロなんだろう」

「性格が悪いからさ」


 悪人には見えないけど、人付き合いは苦手そうだ。


「彼、孤独に見えた」

「皆が唯斗みたいなら、世界は平和だよ、きっと」


「どういう意味?」

「唯斗はすこぶるいいヤツってコト」


 うーん、どっちかというと、僕はお人好しだな。自覚はある。



  ◇◆◇閑話アザミ◇◆◇


 あたしは今川翔子の子分。いわゆるモブキャラポジ。


 翔子は今川重工の社長令嬢。そして、あたしの父親はその会社の社員。

 だから昔から逆らえなかった。


 異世界に来たって同じ。


 本当は命令なんてされたくない。

 でも、日本へ帰れるなら、今は波風を立てない方がいい。


 あたしのスキルは補助魔法。

 前線で派手に戦うんじゃなくて、後ろから仲間を支援するサポート役。

 性格的には合ってるのかも。


 でも――。


 やっぱり納得できないよ。


 あの翔子が聖女?

 人から感謝されるより、恨まれる方が多いのに。


 それに義彦。

 あの不良が魔法剣とか。


 この世界おかしい。


 藤崎英二。なんで犬?


 それと、千葉唯斗君。

 あたしは人気者の藤崎より、千葉君の方が好きだ。


 善人オーラ全開。

 優しそうで、草食男子って感じ。


 こんな気持ち、翔子には絶対に知られたくない。

 あたしのことからかって、虐めるに決まってる。


 翔子はマジ性格が悪い。大嫌いだ。


 千葉君、どうしてるかな。

 追放なんてひどいよ。

 でもきっと無事だよね?


 今日も義彦がラリア王女に絡んでる。


「なんでダンジョン封印すんの?」

「必要ないからです。冒険者たちが付け上がるだけで、邪魔な存在なのです」


「魔王とか、関係ねーの?」

「ありません」


「オレら召喚された意味あんの?」

「あります。早くSSSクラスの勇者になって下さい」


 冷たい声だった。

 まるで道具に話しかけているみたいに。


 ラリア王女、信用できない。


 本当に、日本へ帰れるのかな。

 そんな不安ばっかり積もっていく。


 そして最後には、いつも同じことを考える。


 ──千葉君どうしてるかな。


読んでいただいて、ありがとうございました。

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