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異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった  作者: ミカン♬


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10/25

10  ブブたんの進化

 異世界に来て20日目。今日も、挑むのは【青のダンジョン】。

 冒険者レベルは29になった。


 目標は――ファミリーの形成だ!


 ……とはいえ、僕には別の目標もある。ゴリアドに【見逃し料】100万ガルを払うんだ。

 その方が絶対に現実的だって。


 だいたい結婚相手だってどうするんだよ。

 エイジはいい。女子にモテるから。


 僕はどうなるんだ?


 エイジの奥さんの愛人になるのか?

 ……いや、それ、認めてもらえるかな。


 それに元の世界に帰る時はどうするんだ。

 エイジは奥さんを置いていくのか?


 考えれば考えるほど、悩んでしまう。


 ──お金だって悩みの種だよ。


 ここは日本より遥かに物価が安い世界。

 生活消耗品は確かに激安だ。


 でも、冒険者として生きていくにはお金がかかる。


 先日買ったマジックアーマー。

 魔法ダメージを30%カットしてくれる。

 それが2つで10万ガル。


 もしも、高級防具で全身揃えると確実に赤字だ。

 まあ、歩けば小銭は貯まるけどね。

 ちなみに、ブブたん貯金は344140ガル。


 そんな僕の悩みも知らず、今日もエイジは絶好調。


 たった今、僕たちはダンジョンの1~2階層を駆け抜けたところだ。


 ──3階層へ到着。


 ワンコは軽やかに駆け出し、沼地で戦闘開始。


 変身時間は約1時間。クールタイムは30分。


 火に弱いリザードマンや、沼に潜む巨大な鰐が、次々と倒されていった。


「エイジ、強い!」


 僕は感心しながら後を追う。

 ワンコはそんな僕を気遣って時々振り返る。無茶な進み方はしない。


 ドロップ品はすぐ換金。


 で、魔石……

 ぜんぶワンコのドッグフード。


 ……貯金はあまり増えない。

 やっぱり、1億ガル稼ぐなんて、夢のまた夢だよ。



 その代わり経験値はしっかり増えていた。

 たった今、僕のレベルは30になったはずだ。


 なぜ分かるのかというと――

 ブブたんが進化したから!


 僕の手からふわりと離れたブブたん。

 自分の意思で飛べると判明した。


 ブブたんは、そのまま頭上へ移動。

 そして定位置を確保すると、クルクル回転し始めた。


 まるで戦車の砲塔みたいに360度攻撃できる。


「進化おめでとう、ブブたん!」


 ブブブブーーー!

 たぶん『アリガトウ』って言ってると思う。


 こうなると僕の両手も自由になった。

 早く戦力にならないと!


 そう思った時。

 ワンコが倒したリザードマンから、キラキラと輝くアイテムが落ちた。


「ワン!」

「出た! 奇跡のレアドロップだ!」


 現れたのは【ハルバード】。

 槍と斧を合わせたような武器で、万能の強さを誇る。


 超ラッキー! 装備可能はレベル40以上だ。


 恐る恐る手に取る。


 見た目は重そうなのに、すごく軽い。 

 僕のレベルは足りないのに、握った感触もしっくりくる。


 まるで最初から僕のために作られたみたいだ。


「貰っていい?」

「ワンワン!」


「ありがとう」

 ――これで戦える。

 ようやく僕も、エイジの隣に立てる気がした。


「帰ろうか。今日はここまで」

「ワン!」


 2階層へ戻った。

 途中のモンスターは、ブブたんがどんどん倒していく。


 クルクル360度の、ブブ回転無双。

 僕とエイジの出番はない。


 シャドーウルフの通常ドロップが出た。


【漆黒の布】電撃を遮断。防具の素材。

 ハンカチサイズで軽いから鞄に入れる。ギルドで換金800ガルだ。


 ブブ換金は便利で助かる。

 ギルドと同じ値段で換金してくれるんだから。


 本来、全部ギルドで換金する方が世間の役に立っていいんだけどね。


 でも、リザードマンの錆びた槍や大鰐の鰐皮とか、鞄に入らないんだよ。

 血の滴る肉の塊なんて面倒なドロップも、全部ブブたんにポイだ。

 


 ──1階層へ戻る頃には、エイジも元の姿に戻っていた。


 前から聞いてみたかった。


「人に戻った時、装備や服とかは、ちゃんと身に着けてるよね、どうなってるの?」


「俺も分からない。勇者チート! ということで」


 チート……便利な言葉だ。


「僕がハルバードを装備できるのもチート」


「ブブたんなんて、チートの塊じゃん」


「確かに」



 錆びた槍、1本1200ガル

 鰐皮。1枚1000ガル。


 今回の換金額はざっと10000ガルくらい。


 貯金はあまり増えない。

 だけどエイジはいつも通り前向きだ。


「強くなろうぜ! ギルドランクを【A】にしよう!」


「レベルを100まで上げないといけないんだよ?」


「できる! だって俺達は一応、勇者なんだから」


「うん」


 できるかな?


 追放された勇者なんだけど……

 エイジと一緒なら、可能かもしれない。


 ──そんな気になってしまう、不思議だ。



読んでいただいて、ありがとうございました。


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