表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救ったのは勇者ではなく補給だった  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/120

第八十七話 勇者再起

 勇者は。


 


 もう、

神話ではなかった。


 


     ◇


 


 かつて。


 


 

ザイン

は、

希望だった。


 


     ◇


 


 聖剣を掲げ。


 


 魔物を斬り。


 


 民衆を救う。


 


     ◇


 


 誰もが信じた。


 


 この男が、

世界を救うのだと。


 


     ◇


 


 だが。


 


 現実は違った。


 


     ◇


 


 王都崩壊。


 


 遠征軍壊滅。


 


 飢餓。


 


 難民。


 


 灰色の空。


 


     ◇


 


 勇者一人では、

何も止められなかった。


 


     ◇


 


 そして。


 


 その事実が、

ザイン自身を壊した。


 


     ◇


 


 ドラクエラ外縁。


 


 静かな療養区画。


 


     ◇


 


 ザインは、

窓際へ座っていた。


 


     ◇


 


 痩せ細った体。


 


 伸びた髪。


 


 包帯だらけの腕。


 


     ◇


 


 かつての輝きは、

もう薄い。


 


     ◇


 


 ただ。


 


 疲れ切った人間がいるだけだった。


 


     ◇


 


 扉が開く。


 


 

レイン・ヴァルト

が入る。


 


     ◇


 


「調子は」


 


     ◇


 


 ザインは、

少し笑った。


 


     ◇


 


「最悪だ」


 


     ◇


 


 乾いた声。


 


     ◇


 


 以前のような。


 


 熱も。


 


 理想も。


 


 もう無い。


 


     ◇


 


 しばらく沈黙。


 


     ◇


 


 窓の外では。


 


 避難民の列車が、

静かに到着している。


 


     ◇


 


 ザインが、

その光景を見つめる。


 


     ◇


 


「……見たよ」


 


     ◇


 


「全部」


 


     ◇


 


 王都。


 


 飢餓。


 


 死体。


 


 崩壊した国家。


 


     ◇


 


「俺は、

何も救えなかった」


 


     ◇


 


 その言葉に。


 


 英雄の響きは無い。


 


     ◇


 


 ただ。


 


 現実を知ってしまった男の声。


 


     ◇


 


 レインは、

否定しない。


 


     ◇


 


 綺麗事では、

もう届かない場所まで来ている。


 


     ◇


 


 ザインは、

ゆっくり聖剣へ視線を落とす。


 


     ◇


 


 布に包まれた剣。


 


 かつて世界を熱狂させた象徴。


 


     ◇


 


 だが今は。


 


 それを見ても、

誰も歓声を上げない。


 


     ◇


 


 英雄の時代が、

終わったからだ。


 


     ◇


 


「怖いんだ」


 


 ザインが呟く。


 


     ◇


 


「また振れば、

また壊れる気がする」


 


     ◇


 


 聖剣の力。


 


 あまりに巨大すぎる力。


 


     ◇


 


 敵だけじゃない。


 


 世界そのものまで、

傷付け始めている。


 


     ◇


 


 だから。


 


 彼は止まっていた。


 


     ◇


 


 その時。


 


 遠くで子供達の声が聞こえる。


 


     ◇


 


 笑い声。


 


 走る音。


 


     ◇


 


 ザインは、

静かに目を閉じた。


 


     ◇


 


「……でも」


 


     ◇


 


「まだ、

残ってる」


 


     ◇


 


 帰れる場所。


 


 生き残った人達。


 


 支え続ける人間達。


 


     ◇


 


 レイン達が、

守り続けたもの。


 


     ◇


 


 ザインは、

ゆっくり立ち上がる。


 


     ◇


 


 足はまだ不安定。


 


 体も壊れかけている。


 


     ◇


 


 それでも。


 


 彼は聖剣を掴んだ。


 


     ◇


 


 英雄としてではない。


 


 救世主としてでもない。


 


     ◇


 


 ただ。


 


 壊れた一人の人間として。


 


     ◇


 


 ザインは、

静かに言った。


 


     ◇


 


「もう一度だけ戦う」


 


     ◇


 


 その言葉には。


 


 昔みたいな輝きは無い。


 


     ◇


 


 だが。


 


 空虚でもなかった。


 


     ◇


 


 絶望を見た上で。


 


 それでも立ち上がる意思。


 


     ◇


 


 それだけが。


 


 今の勇者に、

残された本物だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ