表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界を救ったのは勇者ではなく補給だった  作者: 南蛇井


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

70/114

第七十話 停戦条件

 交渉開始から、

十三日目。


 


     ◇


 


 ようやく。


 


 会議卓の上に、

一枚の文書が置かれた。


 


     ◇


 


 停戦協定草案。


 


     ◇


 


 人類側。


 


 黒灰側。


 


 双方の印章欄が、

まだ空白のまま並んでいる。


 


     ◇


 


 

レイン・ヴァルト

は、

その紙を静かに見つめていた。


 


     ◇


 


 ここまで来た。


 


 本当に。


 


     ◇


 


 何度も決裂しかけた。


 


 感情論。


 


 報復要求。


 


 責任転嫁。


 


     ◇


 


 それでも。


 


 積み上げ続けた。


 


 数字を。


 


 条件を。


 


 現実を。


 


     ◇


 


 ギルゼアが、

資料を読み上げる。


 


 

ギルゼア


 


     ◇


 


「第一項」


 


「主要街道の中立化」


 


「民間輸送への軍事介入禁止」


 


     ◇


 


「第二項」


 


「配給施設への攻撃禁止」


 


「食料輸送妨害行為の全面制限」


 


     ◇


 


「第三項」


 


「捕虜・難民輸送の安全保障」


 


「中立監査機関による管理」


 


     ◇


 


 淡々と読み上げられる。


 


 だが。


 


 一つ一つが、

重い。


 


     ◇


 


 もし成立すれば。


 


 街道は守られる。


 


 輸送隊は狙われない。


 


 難民も動ける。


 


     ◇


 


 飢餓が減る。


 


 死者が減る。


 


     ◇


 


 戦争そのものは終わらなくても。


 


 人が生き残れる。


 


     ◇


 


 

シエラ

が、

レインへ視線を向ける。


 


「中立物流管理について」


 


「灰燕運送ギルドを、

共同監査対象へ指定する」


 


     ◇


 


 人類側使節がざわめく。


 


     ◇


 


 灰燕。


 


 ただの地方輸送組織だった。


 


 それが今。


 


 国家間物流を支える存在になろうとしている。


 


     ◇


 


 レインは、

静かに息を吐いた。


 


     ◇


 


 昔なら考えられない。


 


 ただ荷を運ぶだけだった兵士が。


 


 今は。


 


 戦争そのものを支える線を引いている。


 


     ◇


 


 イヴァンが、

小さく笑った。


 


 

イヴァン


 


「……でけぇ話になったな」


 


     ◇


 


 

ノア

も、

資料を見つめている。


 


「これ、

本当に戦争止まるのか?」


 


     ◇


 


 レインは、

すぐ答えられなかった。


 


     ◇


 


 止まらないかもしれない。


 


 また壊れるかもしれない。


 


 政治が裏切るかもしれない。


 


     ◇


 


 それでも。


 


 今だけは。


 


 少しだけ、

信じたかった。


 


     ◇


 


 街道が繋がれば。


 


 人は生きられる。


 


     ◇


 


 それを。


 


 自分は、

何度も見てきた。


 


     ◇


 


 会議室の窓から、

外を見る。


 


 黒灰圏の輸送列。


 


 整然と進む荷車。


 


 補給倉庫。


 


     ◇


 


 その向こうには。


 


 人類圏。


 


 崩れた都市。


 


 飢えた民。


 


     ◇


 


 もし、

この線が繋がれば。


 


 変えられるかもしれない。


 


     ◇


 


 ヴェルガの言葉が、

脳裏を過る。


 


 

ヴェルガ


 


「維持しろ」


 


     ◇


 


 レインは、

ようやく少しだけ理解する。


 


 維持とは。


 


 ただ生き延びることじゃない。


 


     ◇


 


 壊れない道を、

残し続けることだ。


 


     ◇


 


 会議室へ、

静かな光が差し込む。


 


 雪雲が切れていた。


 


     ◇


 


 長かった冬が。


 


 ほんの少しだけ、

終わりかけているように見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ