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2話 "本の魔女"

2日連続、とてもえらいとおもいます()

 ──かつて、治安是正の為の大規模な施策が行われたことがあった。と言っても、その方法は至極単純。武力による、完全制圧である。国が軍を上げ、次々と犯罪組織や賊の類を滅ぼしていった。


 しかし、何事もそう単純に行くことはない。賊たちが徒党を組み、軍隊に対抗し得る力を持ち始めたのだ。元より苛烈な環境で生き抜いてきた者たちである、数さえ揃えば軍隊にも劣ることはなかった。混乱を極め、寧ろ世が乱れつつあった頃。国側が新たな戦略を打ち立てた。


 それが、絶対的な力を持つ個人による蹂躙である。と言うのも、国側にはとある秘策があったのだ。それは、何かしらの対価を元に魔法を行使する、特殊な力を持った存在。全国各地で発見された彼らを政府は重用し、戦地へと投入した。その戦果は目覚しく、賊の数は著しく減少した。


 ここで戦果を上げた彼らは、後に畏敬の念を込めてこう呼ばれることとなる。──"魔女"、と。



「少年、ここから先は少し君には早いからね。一旦目を閉じさせてもらうよ」


 リーヴルが振り返って少年の方を向き、ぱちんと指を鳴らして指す。すると突如として黒い布のようなものが現れ、少年の目と耳をすっぽりと覆った。


「死ねッ……!」

「待て、油断するな!」


 男のうちの一人が、我慢出来ずに剣を抜いて襲いかかる。それを眼帯の男は制止するも、その声が届くことはなかった。


 リーヴルの脳天に向けて、大振りな片刃の剣が振り下ろされる。自らを害さんとする刃が迫り来るものの、彼女が物怖じすることはない。静かに、少女は虚空に右手を伸ばす。するとそこに何処からともなく光が集まっていき、豪奢な装飾の剣を形作った。


「血気盛んなのはいいことだが、本当にそれが最善かな? 元々、僕はそ(・)っ(・)ち(・)が得意分野だよ」


 リーヴルは虚空に現れた剣を握り、十分な余裕を持って振り下ろされる剣を受け止める。そしてそのまま大きく半円を動かすように剣を回し、男の剣を弾き飛ばした。


「さて、まずは一人だ」


 少女がさっと左手を掲げる。すると少女の背後に、無数の光り輝く球体が現れる。それらは全て一条の光線を放ち、男の全身を穿ち貫いた。光線の熱により血を流すことすら許されずに絶命し、男はその場に倒れ伏した。


「えーと……次は、君かな」


 続いて剣に手をかけていた男に焦点を合わせたリーヴルは、右手の剣を虚空に放る。剣は空中でぴたりと停止すると、少女の視線の先へと切先を向ける。次の瞬間、刃が凄まじい勢いで宙を駆け、男の心臓を貫いた。


「残り4人だね。随分と呆気ない」


 続いて、剣を抜いて向かってくる男。リーヴルはそれに対して、右手の指をぴっと払うのみ。一見何気ない行動のように思えたが、その次の瞬間男は胸から血を噴いて倒れ伏す。一瞬にして三人の男の命が奪われ、一度戦場に静寂が訪れる。


「ちっ……魔女め、噂には聞いていたがこれ程とはな」


 眼帯の男が後頭部を掻いて苛立ったように言う。


「だから言ったじゃないか。僕は君たちの誰よりも強いって」


 服に付いた返り血をさっと撫でて消し去り、リーヴルは不敵な笑みを浮かべて見せる。


「さて、残り三人だね。当然、逃すわけにはいかないし……そうだ、こうしようか」


 リーヴルがぱちんと指を鳴らす。途端周囲の地面が盛り上がっていき、円形の壁を築き上げる。その様は、まるで即席の闘技場(コロッセオ)のようだった。


「さぁ、続きだ。最後まで殺し合おうじゃないか」


 今度はリーヴルの方が男たちに歩み寄る。その背後には、光が集い三本の剣が顕現する。


「お前ら、一人で行くな。左右から囲んで攻めろ」


 眼帯の男が残った二人の男に指示する。彼らは何も言わずに頷くと、全く同じタイミングで地を蹴る。


「おぉ、やっと協力を覚えたかい。良い試みだが──」


 全く同じタイミングで、全く異なる角度で襲いかかる二つの剣。人間であれば防ぐ事はまず出来ないであろう一撃は、一瞬のうちに移動した二本の剣によって阻まれる。


「──残念だけど、無駄だよ」


 リーヴルが残った一本の剣を握り、大きく横薙ぎに振るう。芸術的な軌道で走った刃は、諸共に二人の命を断つ。


「さぁ、残すところは君一人だ。君は……彼らよりは、歯応えがありそうだね」


 刃に付着した血を振り落とし、最後の生き残りに対して歩み寄る。眼帯の男は、半ば諦めに近い表情で答えた。


「あー……魔女って言っても、もう少しマシだと伺(・)っ(・)て(・)た(・)んだがな……」

「……伺った? 誰から?」


 男の発言に対し、眉を顰めて問い詰めるリーヴル。その表情からは、先程の余裕げな笑みは消えていた。


「君がボスなんじゃないのかい? 立ち振る舞いも実力も、まぁ十分頭に立てるレベルではあるだろう。誰に対して、そんな経緯を払っている?」

「……悪いが、それには答えられんな」


 そこまで話したところで、リーヴルは剣を握る手を離す。剣は光の粒子のように消え失せ、丸腰の状態となる。しかし、彼女の纏う覇気は寧ろその数倍まで膨れ上がった。これまで狼狽える様子はなかった男が、あまりの気迫に僅かに後退りする。


「そうか。──なら、予定変更だ。今から君を徹底的に痛めつけて、何としても情報を吐いてもらうことにするよ」

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