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1話 帰路にて

遅くなってすみません!!!!!懺悔として明日も書きます!

 そう離れてはいない位置にある、彼女の住む街に向かい、リーヴルは鼻歌混じりに歩いていく。その間も彼女の視線は周囲の光景を隈なく観察し続けており、何か面白い事はないものか、と探っていた。


「とは言っても、そうそう面白いものがあるわけでもないんだけどね……。例えばそう、この石が面白いように飛んでくれればいいんだが」


 そう言って、リーヴルは足元にあった石ころを勢いをつけて蹴る。石は綺麗な放物線を描いて飛んでいき、樹木の葉の間に吸い込まれる。一拍遅れて、枝という枝から大量の芋虫が降り注いだ。


「あー、うーん……面白いと言えば面白いけど……これは、見なかったことにするべきだろう。うん、きっとそうだ」


 リーヴルは自らに言い聞かせるようにしながら、虫たちが蠢く地面から極端に距離を取りながら先へと進む。


 もうそろそろ、街に辿り着く頃だろうか。そうリーヴルが思った時。ふと、彼女は何かしらの異変を肌で感じとる。


「む……何か、嫌な予感がするね」


 リーヴルは念の為鞄から本を取り出し、周囲に神経を集中させる。何か、平穏な森にあってはいけないような異様な雰囲気を感じる。例えるならばそう、血腥い戦場のような。


「……この辺り、まだ山賊なんてものが残っているのかい?」


 その雰囲気の正体を、リーヴルはそう結論付ける。近年の治安の改善は目を見張るものがあり、表立った無法者はかなり姿を消していた。無論暗躍する者はいるが、ここまで分かりやすい雰囲気を醸し出す者は淘汰されたはずだった。


「やれやれ……《グリモワール》」


 本を開き、目を閉じて呟く。描いた魔法(イメージ)は、周囲に存在する人間の知覚。それによると、誰か一人の人間を、六人の人間が追いかけているらしかった。それに追われているのは、年端も行かぬ少年のようだった。


「これは……放っておく訳にはいかないかな」


 リーヴルは進路を変え、集団が行く先に丁度鉢合わせる方向に歩き出す。彼女には一つのポリシーがあった。それは、決して子供を見捨てないということ。


「さて、そろそろかな……」


 木があまりなく、少し開けた場所で立ち止まる。先ほどの魔法は既に効果を失っていたが、最早それに意味はなかった。既に意識せずとも、その存在を感知できる距離までに近づいていたのだから。


「はぁっ、はぁっ……!」


 木陰から一人の少年が飛び出してくる。汗が滴り、全身は木の枝などで出来た創傷だらけ。誰が見ても窮地と思える様子だった。そんな少年に、リーヴルは穏やかに話しかける。


「そこの君。何か困っているのかい?」


 しかし少年には、そんな呼びかけに対してまともに応対できる程の余裕はなかった。ただ無言で、リーヴルの前で立ち止まる。


「僕はリーヴル=エクリストール。君が困っているように見えてね、助けに来たんだ」

「ぼくを、助けに……?」


 少年は信じられないといった様子で呟く。リーヴルは更に言葉を投げかけようとするが、言葉を続けることは出来なかった。少年を追っていた六人の男が、続々と森の陰から現れ始めたからだ。


「やっと追いついたぞ、クソガキが……ん、誰だ? お前は」


 その中のリーダー格と思われる、眼帯をした強面の男が言う。並の人間であれば萎縮しきってしまうような雰囲気だが、リーヴルが物怖じする様子は一切ない。それどころか余裕げな笑みを浮かべ、少年を背に庇って相対する。


「君たちかい? この少年を大人数で追いかけ回す非常な大人は」

「あぁ……そいつをこっちに引き渡せ。そうすればお前は殺さん」

「ふぅん、なるほどね。

──だそうだけど、少年。僕はどうすればいいかな?」


 リーヴルがそう言いながら振り返る。少年は彼女と目が合うと、凄まじい勢いでその首を横に振った。


「──だそうだ。残念だけど、君たちの要求には応えてあげられなさそうだ」

「そうか……。なら、お前にも死んでもらうしかないな」

「そうかい、随分と野蛮なことで……でも申し訳ないけど、僕は強いよ? 恐らく、いや間違いなくこの場の誰よりもね」


 リーヴルが不敵に微笑み、左手で本を開く。その立ち振る舞いからは、決して揺らぐことのない確固たる自信が垣間見えた。その挑発的な態度に、男たちが殺気づく。


「あ……? 舐めてんのか、てめぇ」

「いいや、事実だ。それじゃあ準備も出来ている事だろうし、始めてしまおうか……《グリモワール:展開(エヴェイユ)》」


 リーヴルが唱えた祝詞に応じて、彼女の手に乗った本がゆっくりと宙に浮く。頁が激しく捲れ、全体が淡い輝きを放ち始めた。


「改めて、君たちにも自己紹介だ。僕はリーヴル=エクリストール……俗に、"本の魔女"と言われている者さ」


 その名前に、眼帯をつけた男だけがぴくりと反応する。そして一言、悪態を吐く。


「遂に現れやがったか……"魔女"め」

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