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とある勇者の昔話3

実はまだ投稿する気はあったりします……

「はぁぁぁっ!」


 力強く剣を振るえば身体が二つに両断され


「――貫け!マジックアロー!」


 魔法を放てば一瞬で身体が蜂の巣になる



 一応は勇者である私から見ても、魔物の方に同情してしまうのは仕方ないだろう。

 初めてのダンジョンでの戦いは、それほどまでに圧倒的であった。


 ……ただ、もう少し具体的に言うと、最初は皆も騎士の人たちに従って慎重に防御陣形をとっていたけれど、今では我先にと魔物を狩り始めているせいで陣形も何も無く、騎士の人たちも人類の希望の想定以上の強さ、勇ましさに、ただただ期待の眼差しを向けているだけだ。

 ……中にはあまりに感無量だったのか、泣いている人たちもいる始末だ。


 

 そんな中、勇者や騎士の人たちの事を見ていた私は何をしているのかと言うと、結論から言えば勇者からも騎士からも離れてただ独りポツンと立ち尽くしていた。

 時節、騎士の人が声を掛けてくれるが、私は曖昧な返事をして対応している。

 何故、私だけ勇者の戦闘に加わらないのかと言うと、話はダンジョンに入った最初の方から始まる。




 ダンジョンで最初の魔物と遭遇した時、何を思ったのか私は例のスキルを使ってみたのだ。


「……っ!?」


 騎士の人たちも勇者たちも緊張で声を圧し殺しているせいで静寂に包まれていたダンジョンは、スキルを発動させた瞬間に耳を塞ぎたくなるような騒音が鳴り響いた。


「シンニュ……シャ、コロス?怖い!……逃げる!……コロス?コロセ!コロソウ!!こわいっ!コロス!コロシテ、タベルゥゥゥッ!」


 目の前の魔物たち――ゴブリンは動きとしてはどこもおかしくない。……いや、私たちを見つけた瞬間に襲いかかってくるのを普通と定義するなら。

 けど、彼らの声は私たちに殺意を向ける発言と、恐怖を感じている発言の両方がそれぞれ同じ個体から聞こえてくる。


 まるで、全てのゴブリンが二重人格であるかのように。


 けど、身体の主導権を握っているのは全員が殺意全開の方の意志によるものらしく、抵抗虚しく勇者に襲いかかっては一瞬で切り捨てられていた。

 死ぬ寸前には、殺意の意志をようやく死に対する恐怖が上回るのか、ゴブリンは最期に「死にたく無い……」とか、ただただ「痛い痛い痛い痛いっ!」と絶叫しながら生き絶える。

 

 

 それを聞いた私は、それはもうあっさりとゲロを吐いた。人目も憚らずに皆の前で吐いた。

 吐いて吐いて、胃液しか出なくなっても吐き続け、脳が沸騰しそうなほど熱く感じて意識が薄れかけたところで、ようやく吐き気が収まってくれた。

 騎士の人に魔物の討伐は私だけ止めておくかと聞かれたけれど、使えない私を国がどうするかも分からないので、またも乗り物酔いのせいにして、暫くは後ろの方で見ている事になった。


 

 ……今はある程度落ち着き、スキルを切る事でなんとか平静を保っているけど、さっきは、皆に見られながらゲロを吐いた事に気づいた恥ずかしさとかで頭が混乱してたせいで、立っている事さえ辛かった。


  

 その後は、騎士の人たちの前で時々ふらつく演技をする事で、なんとか戦闘には参加しないように立ち回った。


 あんなモノを聞いて、彼等を殺す事なんてとてもできない。

 人類を救い、自分の身をも守れるようになる為にレベルを上げようとついさっきまで意気込んでいたのが自分の事なのにバカらしくなってくる。

 

 完全に心が折れた。それはもう跡形も無い程にバッキバキに。


 まだ少しぼーっとする頭の中にあるのは、レベルに頼らずにどうやってこの世界で生き抜こうといった弱音だけだ。

 

 というか、ダンジョンの魔物がこんなおぞましい洗脳をされていると、他に知っている人はいるのだろうか?

 もしこの話を誰かにすれば、少しは気が晴れるのだろうか?



 ……いや、その話をすれば、必然的に例のスキルの話もしなければならないけれど、どうせ面倒事に巻き込まれるのがオチだ。

 だから誰かに話すと言うのは却下。だからと言ってこの問題は放置できるものでも無く、早急に何らかの解決方法を見つける必要があるだろう……。


 



















 今回はダンジョンの一階層をある程度探索した後、早々に帰る事になった。

 何でも、当初は一階層で何体かの魔物と戦闘をして終わりのはずだったが、勇者が予想以上に強かったので、ここまではなあなあの状態で来てしまっただけで、これ以上は物資が心許ないらしかった。

 

 大丈夫かこの騎士達。


 何やら勇者達はまだ行けるとごねていたが、騎士団長さんらしき人がパートナーが待っているとか何とか言うと、勇者達はそれはもう綺麗な手のひら返しで頬を緩ませながら帰路についた。


 ダンジョンまでの帰路は騎士の人達が私達が通る前に魔物を倒していたのか、魔物と遭遇する事なくダンジョンから出れた。

 ダンジョンから出ると、さっそく勇者達はダンジョン前で待っていた各々のパートナーに駆け寄り、ダンジョン内での武勇伝を語ったり、甘えたりと自由にしながら馬車に乗って行く。

 

 私も行きと同じく一人で最後尾の馬車に乗り、帰路につくが、


「……勇者様、もう少しゆっくり帰りましょうか?」


「あ、いえ、今は体調も良いので大丈夫です」


 馬車の小窓から騎士の人に問われるが、今は寧ろ早く帰って寝たいので、適当な理由をつけて遠慮しておく。

 騎士の人が離れた後はさっさと小窓を締め切り、ぼーっとしながら思案に明け暮れる。

 

 まず第一の問題として、あの『声』が聞こえる状態で魔物を殺せるかと言われると、まあいつかは慣れるというか、割りきって殺せるようになるかもしれない。一応この世界に来てから人間の適応力の高さは実感したつもりだし。

 ただ、我ながら情けない話だけど「慣れるから」と言われて「はいそうですか」と魔物を殺すのは絶対に無理だろう。


 ちょっと皆と違い使用人の誘惑を回避できた程度で、心のどこかで「私なら」なんて気持ちが浮かんだのも事実だけど、正直私には荷が重すぎた。

 もう私の精神力じゃレベルは上げれない。そう割りきって、これからレベルや力に頼らず生き抜く方法を考える方がよほど建設的だろう。

 

 今のところ、私が一番良いと思ったのは、戦闘以外の仕事で役に立つ事だ。

 これならば、魔物を殺してレベルを上げると言った事をしなくても良い。それに、勇者はある程度のスキルまでなら一般人よりも比較的楽に取得しやすい、所謂『才能の塊』状態らしいので、その職業専門のスキルはまだしも、汎用的なスキルを鍛える事である程度はそういった仕事にもついて行けるのではないか、と考えている。 



「はあ……でもこれじゃあ自分の身を守る、どころかこの国におんぶに抱っこの状態になるって事なんだよね……」


 最近、ため息も多くなった気がする。


 ……この世界に来た事で、産まれて初めて自分の命と言うものを考えた。

 無論、私だって元の世界では思春期や反抗期もあった普通の女子高生なわけで、自分自身ってのを考えた事はある。

 けど、今でいう自分の命と言うのは、『生きるためにどうすれば良いか』って事で、どうやって生きるかなんて考える余裕が無い状態だ。


 考えて欲しい。  


 元の世界でも何かをする時、「失敗するかも」と不安になる事はあるだろう。どんなに準備をしていても、「本当に上手くいくかなぁ……」と言った不安が。

 けどこっちの世界の、そして今の私の立場での失敗には「殺されるかも」と言ったモノがある。そして、私はまだこの国を、この世界を全て知っているわけでは無い。 

 だからこそ、どんな可能性を探しても、必ずそこには『死』と言う可能性もセットでついてくる。


 元の世界で平穏に過ごしていた高校生のメンタルだと、真剣に可能性を模索すればするほどストレスがグングン溜まっていく。


「お腹気持ち悪くなってきた……ストレスかなぁ、いや……もしかしたら本当に乗り物酔いのせいかも」


 なんか体調も悪くなってきたし、本当は今すぐにでも現実逃避なりをしたいところだけど、今回のダンジョンの件、間違いなく色々聞かれるのだろう。

 早ければ、今日中にでも。


「そこが勝負、かな……」

 

 非戦闘員になる。それは即ち『勇者』としての職務を放棄しますと言っているようなもの。

 けれど、それも第一段階。それが成功したら、次は実際に成果を上げる。そこでようやく私はこの国を信じて生きていくか、または疑念の正体を探すかを選ぶ事ができる。

 

 

 ……馬車の外からは段々と喧騒が聞こえてくる。

 

 どうやら街に着いたようだ。と言うことは城はすぐそこにある。

 

「こ、これが終わったら、シロに……シロに会いに行こう」


 緊張に少し身体が震えていたが、彼女の事を思うと少し和らいだ気がする。

 

 そこから城に着くまでの間、ずっと私は一人面接でイメージトレーニングをしていたのは今だから言える話だったりする……。

 1年以上に渡る別視点の大作ストーリー()ですが、後少しで主人公が主人公する……はずです。

 というか、毎度ながら投稿直ぐするよ詐欺ですいません( ´_ゝ`)

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