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とある勇者の昔話4+α

前回から、執筆用の機種やアプリを変えたので、いつもより変なところ多いかもしれません。

「——と言ったところで〜……次はこっちなのですっ!」


「えっ?いや、突然どこ行くんですか先生!?」


「着いて来るのですよっ!」



勇者の話が書かれた壁画を読んでいた先生だったが、そう言うと急に走り始めてしまった。


当初は、階段を降りてすぐにあるところにあった壁画を先生に読んでもらっていたわけだが、どうやら壁画はこれだけでは無く、まだいくつかあるようだった。


と言っても先生が走って行ったのは距離にして30メートル行くかどうかと言ったところなので、別にはぐれる心配も無い。


と言うか罠があるから慎重にって行ってなかったっけ……。



「で、先生。もしかして、あんなところで話が飛ぶって事ですか?」


そう、先生を追いかけて歩いていると、どうやらこの遺跡の壁にはところどころ壁が少し崩れているところがあり、その形跡を見た感じその部分にはどうやら同じように壁画があったんじゃないかと思う。

そしてそれを先生がすっ飛ばして歩いて行くということは、普通に考えれば物語自体もまるで本のページを数ページ纏めてめくるようなもので、物語の時系列的にもかなり飛んでいるって事だ。


さっきのところは、壁画を描いた人物である勇者が、まさかの勇者を辞めると決断した急な展開。

正直、その勇者が取得し、勇者を辞めようと決断する原因にもなった『謎のスキル』の性能と正体も気になるのと言うのはあるが、普通に物語としてあそこで話が切れるは不満だ。


「はいなのです……。歴史的価値はあるのですが、物語としても、文献としても、このように肝心なところが抜け落ちているせいで、今では研究員どころか、観光客さえ来ないのですよ……」


いかにも不満ありげと言った感じの俺の質問に、先生も心なしか元気の無い返答を返す。


というか研究員はともかく、観光客が来るには場所は悪いし中も薄暗いしで、お世辞にもそんなに綺麗と言えるような場所でもないし、そういうところに原因があると思うんだけどな……。


「ああ、そう言えば先生」


「はい、どうしたのですか?」


「これってどうして勇者の名前が書いて無いんですか?さっきの壁画にはどこも文字がはっきりしてましたが……」


そう。さっき先生が物語を読むとき、あまりにも自然に読んでいたために途中で追及したりはしなかったが、この物語の主人公には名前が無い(・・・・・)

もし壁画の文字がところどころ掠れていて、それが偶然にも勇者の名前だけでしたって事なら絶対に誰かが意図して消しただろうと、なんかの陰謀的なモノを想像したりもできるが、これじゃあ壁画に文字を書く段階で既に勇者の名前を書かなかったって事になる。


「やっぱりアルギウス君もそこが気になるのですか〜、これもこの壁画の謎と言いますか、この勇者の正体が分からない理由でもあるのですよ。

複数の文献に載っている勇者は、名前や能力の性質が同じ人を探して同一人物だと特定するのですが、彼女……の場合は少し特殊ケースなのですが、勇者の文献にも名前が書かれていないケースや、勇者本人が自身の能力をはっきりと理解していない場合などは、結構勇者の特定が難儀するのですよ」


「たしかに、それだとこの勇者の場合は両方満たしているって事ですもんね」


「ただ、勇者の中にはこの世界に来て暫くしてから何故か名前を変える方もいるので、結構アテにならない事も多いのですよ」


……名前を変える。もしかしてこう、ファンタジー世界に来た事で自分の名前を厨二ネームに改名しちゃった人とかいるんだろうか。

それはなんと言うか、あんまり特定してやるのは可哀想な気がするな……。


「っと、それよりも早く続きを読まないと、遺跡探索をする時間が無くなるのですよ!」


「話続いているって言うか、かなり飛んじゃってますけどね」


それも、さっきまでの内容で壁画1枚分に対し、俺の見立てでは2、3枚は飛んでるし、しかも次の壁画はさっきのと比べてかなり小さい。

もしかしたら、この壁画で最後だったりするのだろうか。

もし想像通り、話がそこまで飛んでいたのなら、たしかに文献的価値は思ったより低いのかもしれないな。





















「これで最後」


私は最後の勇者、神田 真也君の埋葬をする。


彼の死亡によって勇者は全滅。これによって人間側の軍は完全に瓦解した。


まだ手が震える。


やはり、人を殺すと言った経験は何度やっても慣れるものじゃ無い。

それ自体、何の慰めになるわけではないけれど、もし慣れてしまっていたのならその時点で私と言う人間は立ち止まってしまっていただろう。


「——よ、そろそろ帰ろう。あまり長居していてはどちらかの軍が追いかけて来るやもしれん」


「ええ、そうね……シロ」


最後の勇者 神田 真也。彼を呪縛から解放した事で、私の旅というか使命、のようなモノは取りあえず終わりを迎えたのだろう。

と言っても、これで全てが解決したわけでは無い。


仲間の元に戻り、最後の戦いに備えなければならない。



神田君の埋葬の為、私たち2人は別行動となった為、仲間をだいぶ待たせている事だろう。



「そろそろ戻ろっか」


シロの背に跨り、留め具でしっかり身体を固定する。


最後に、ちらりとお墓に目を向ける。


彼ら勇者のお墓。何人か、お墓と言っても遺体が入っていないものもあるけれど、これでようやく静かに眠れるだろう。なんてのは勝手な考えかもしれない。




















それから数日、私たちの基地の1つである、とある村の近くに建てられた小屋で、主要メンバーと最後の作戦の詰め合わせをしていた。


集まった面々は魔物、魔族、人間と、種族は様々だけれど、全員の意思は同じ。


——この戦争でこれ以上の犠牲者が出ないよう、可能な限り速やかに終戦させる。



その為に私たちは集まり、多くの犠牲を出しながらもここまでやってきたのだ。

あれだけいた仲間も今では最初の頃の2割に満たない。


それも、今回で最後。


最後の戦へ発つ前に、各部隊の代表達の勧めで私はこの戦争を小屋の地下蔵の壁に書く事になった。


と言っても、私自身戦いの準備などで忙しいので、実際に彫るのは仲間の中で一番手先の器用な者に任せ、内容も仲間の一人が私が仕事の合間にした取り留めの無い話を一生懸命に文字に起こしてくれたものだ。


……たぶん、最後の戦いはこれまで経験したどの戦よりも厳しいものとなるだろう。


当然、仲間もたくさん死ぬ。


それでも私達の犠牲がこの大戦の最後となる為に、この戦いが終わるまでは立ち止まらず、振り返らず、進み続けなければならない。


私、——は、——を討ち、この世界を救う。

これはきっと、勇者を辞めた私だからこそ行える、最善の一手。

どうか、もう道を迷う事なく、最後まで彼らと共に歩めますように……。





















「……という話なのです」


「勇者が……勇者を全員殺した?」


一体、途中に何が起きたのかは分からないが、彼女が勇者を全員殺したと思ったら、その後に世界を救おうとする……?


「……」


少しだけ、嫌な汗が出る。


この話が本当なら、何らかの形で他の勇者全員が世界を救う中で障害となったという事だ。

別に、勇者という存在そのものが原因だったのか、勇者が自分達の意志で敵側についていたのかも分からなければ、今と昔では状況も全く違う。

しかし、勇者という存在が問答無用で安全とは言い切れなくなったのも事実。


楓と大城、後ついでにその他も、勇者になる事自体がリスクの可能性というのは、非常に頭の痛い問題だ。

タイムリミットまでに、一応そのあたりについても調べなければならないって事だな……。


「学者さん達の見解では、『彼女が勇者を殺したのが事実なのであれば、現に世界が存続している状況から見て、英雄として奉るにしては勇者殺しの醜聞が大きかったのか、又は単に罪人として伝聞が揉み消された』とされているのですよ。

ただ当時の文献にはこの物語以外に、彼女に該当するような人物が出てこない事から、この物語自体が架空の話で、当時そんな人物はいなかった。という説が一番強いのですよ……」


「えぇ……じゃあ何で初めての遠征がここなんですか……」


普通は最初に凄い所とかに連れて行ったりして、良い思いをさせておくのが人材勧誘の基本だろうに。



「道中で魔物に会わずにこれるような安全な所が、ここしか無かったのですよ……」


「一回会いましたけどね」


「ふ、普段はそんな事は無かったのですよ!会ってもスライムやスプリングラビットなんかの弱い魔物が単体でいるだけなのですよ!」


……そういえば、あのゴブリン達があそこにいた原因って、たしか変異種の件だったか。


「それで、この物語が架空の物なのかどうかは置いといて、最後に彼女が……彼女達が倒そうとした存在って何ですかね?これも名前の部分が書かれて無いんですよね?」


そう。この物語には彼女の名前と同じように、最後の敵の名前も元から書いていない状態だったのだ。


「そうなのです……単純に考えれば、この戦争で最も中心となった種族である人族と魔族。そのどちらかの王だとは思うのですが、根拠が薄過ぎて、推測にもならないのですよ」


候補に人族の王があるあたり、罪人として記録が消されたって説も現実味があるな。


「後は……シロって名前の竜くらいですかね」


「そうですね〜この竜に関しても、殆どの情報は無いのですよ。一応、白い竜が出てくる文献はいくつかあるのですが、それとシロとの関係性を裏付ける材料は皆無なのですよ」


先生も残念そうだ。


けど、俺は1つ、先生にどうしても聞かなければいかない事がある。


「そういえば、先生のフルネームって何ですか?」


「……?急に何の話なのですか?」


シロって名前で思い出した。この前、ルインがシロってやつとミリア・レスターって人物が同一人物であると言っていた。

さすがにその時はそんな直ぐに会いはしないだろうと記憶から消していたが、今考えたら先生の名前は知らないが、姓はまんまレスターなんだよな。

そして、父さんの学生時代から既に教師をしてるのにこの見た目。間違いなく長命種だ。


仮にもし先生の名前がミリアだったら、本を執筆したか……していたのなら、ルインとの関係もあるが、この物語に出てくるシロ本人って事で……


「先生の名前はミリア。ミリア・レスターなのですよ」


「……っ!先生って昔、魔物の生態を本に執筆した事ってありますか?」


「……ああ、あの本の事なのですか!アルギウス君ももしかして読んだ事があるのですか?」


「……えぇ、まぁ」


ビンゴ。これは間違い無く、ルインの言っていたミリア・レスターで間違いないだろう。

けど、1つ疑問があるとすれば、ルインは向こうから話しかけてくるような事を言っていたけど、先生は全然正体を明かしてくれないんだよな……。


「そっかー、あの本をアルギウス君も読んだのですか〜。普通の魔物辞典よりも臨場感があるので先生も好きなのですよ!」


「ん?先生が書いたんですよね?」



ここで何故か違和感が。


書いた本人が、自分も好きだと言うのはおかしい。それに、ここまで言って、まだ正体を明かさないのは往生際が悪いってレベルじゃ無いぞ。


「ああ!いえっ!先生はあの本の作者じゃ全然無いのですよ!

えっと……先生、昔色々ありまして、縁あってあの本の作者名をそのまま名前にしてるのですよ」


「えぇっ!?」


ビンゴ。って何だろう。


いやいや、仕方ないじゃん。普通はあそこで推理の正解を確信しちゃうって。思い出したタイミングも良い感じだったし。

それより、 色々あってとお茶を濁してるからさすがに先生の過去については触れないが、急にこんな事を聞いた件についてルインの事はさすがに言えないし、一応弁解しないとな……。


「まさかアルギウス君がその本を読んでいるとは、なかなか勤勉さんなのですよ〜」


「えっと、スライムについて調べてる時にたまたま読んだだけですよ……」


弁解を、と思ったが、俺が偶然その本を読んだのは事実だし、作者と名前が被っていたから気になるのは普通か。

まあ、だからと言って、ビンゴ。とか格好つけた事実が無くなるわけでもない。


「ど、どうしたのですか、アルギウス君。凄く落ち込んでるのですよ」


「いえ、何でもないです。それより、先生はこの本の作者と会ったことってありますか?」


「いえ、先生も作者と会った事は無いのです……それに、その本が発刊されたのは数十年は前の事なので、今探しても種族によってはもう会えないのですよ」


先生が本に縁があると言ってたし、作者の事も知ってたら御の字だったけど、さすがにそこまで上手くはいかないか。

しかし、ルインの言い方だと、本の作者であるミリア・レスターはまだ生きてはいるんだろう。


まあ、別に会う事はそこまで重要ではない。

若干ルインの手のひらで踊らされている感じはあるが、必要になればあいつが情報をくれるだろうし、自分から探す程切羽詰まっても無いからな。


……と言うか、本の作者が本当にシロって名前なら、もしかして壁画の方のシロと同一人物って可能性もあるのか。

それこそ、確証も何も無いのだから、調べる程の事では無いかもしれないけれどな。


「それよりアルギウス君、遺跡の中だと時間が分かりにくいかもしれませんが、もうそろそろお昼頃なので、帰る準備をしないと学園に着くのが日暮れになっちゃうのですよ。

先生としてはこのまま遺跡の奥も案内したいのですが、アルギウス君君は仮にも貴族。さすがにアルギウス君のご両親に心配をかけれる程先生の度胸は無いのですよ……」


いや、度胸云々の問題じゃないだろ……。


と思ったが、たしかにご両親どころか兄さん姉さん達も含めて、心配かけると本気で何があるか分からないのが事実だ。

それに、身体の方は単純なのか、昼頃と言われた瞬間から思い出したように腹が減ってきた。


「遺跡の方は気になりますけど、たしかに定刻には学園に着きたいですね……」


「遺跡ならまた今度来るのですよ!」


「その時までに生徒が増えてたら良いですね」


「後、2、3人は欲しいのですよ〜」



初めての遠征はこうして、多くの謎も残りはしたが、ちょっと締まらない感じで幕を閉じたのだった。




















「ぼっちゃま、朝でございます」


「おはよう、爺や……」


眠い目を擦り瞼を開く。眠気が引いていくにつれ、朝食の匂いが胃袋を強烈に刺激し始めた。



……一昨日に遺跡から帰路につき、昨日の昼頃にはこっちへ無事到着した。

帰ってきた後はレスター先生の家でキャンプ用品の片付けの手伝い。

手伝いが終わった後に勧められた食虫植物ティーは丁重にお断りして、早々に部屋に帰ってきた。


その後はミューナ達もエリシア姉さんの特訓を受けているからやる事無いって事で、ぼーっと部屋で寛いで、夕方あたりにミューナと爺やがそれぞれ帰って来たので、そのまま飯食って寝たわけだ。



「おはよーアル〜……」


「おはよう、ミューナ。随分眠そうだな」



一応、直ぐに起きはしたようだが、ここ連日のエリシア姉さんの特訓が相当キツかったのか昨日からずっとこの調子だ。

と言っても、しっかり飯は俺以上にしっかり食べるのだが。



学園に来て早々の3連休はあっという間に過ぎ、今日からまた授業だ。


着替えを済ませたると、ちょうどカルロス兄さんが部屋に迎えに来てくれたので一緒に行く事にする。初日もそうだったけど、俺が学園に慣れるまでは毎日迎えに来てくれるそうだ。

ちなみに、今日はエリシア姉さんとヘリスは授業が少し早いため、先に行っている。


「ああ、そういえば次の休日にシルディア会長とのお茶会。決まったから。……さすがに知り合いと言えど自重はしてくれよ?」


そういえばお茶会の話なんてあったな。

シルディア会長はさすがに一人っ子って事は無いだろうし、第一、第二王子的な人とかも来るんだろうか。


「それって誰が参加するの?」


「今回のお茶会は新入生の交流会って話だから、結構色んな貴族が集まるな。

……そんな心配しなくても、入園から暫く経ってからのお茶会だからある程度の派閥に別れるだろうし、そんな積極的に話しかけてくる事は無いと思うぞ」


「あ、そう言えば今度の休日は出かける用事があったっけ。ごめん兄さん、そう言う事だから会長によろしく伝えといて」


もう脊髄反射の如く行く気が失せてしまった。

ただでさえコミュ力が無いのに、相手が不特定多数の貴族とかハードルが高過ぎる。


「おお、第一王女からの名指しのお誘いを名誉子爵の四男が断るとは、アルは将来大物になるな!」


「嘘です言ってみただけです。すいません……」


「じょ、冗談だって。そんなに落ち込むなよ……」


まあ、行かないって選択肢は無いんだろうなぁとは漠然と思っていたが、そうか。

第一王女のご指名を断るとか普通に重罪だろう。


「会長が今回の新入生との交流会にアルを呼んだのは、お前がC組に行っても貴族社会で不自由しないようにって配慮だぞ?

とりあえず、お茶会の時は俺たち兄弟全員も呼ばれてるし、基本的にその内の誰かと一緒にいれば良いさ。そうすりゃ下手なちょっかいや派閥の引き入れも無いだろう」


まあ、冒険者になる!って言ったって、別に家を出奔するわけでも無いし、この機会に貴族の付き合いというのは勉強した方が良いんだろうなぁ。


とりあえず、カルロス兄さんとエリシア姉さんは生徒会みたいなのに所属してるらしいから色々貴族の人と話す事も多いだろうし、クライン兄さんかガロム兄さんと一緒にいよう。


と言うより、そもそもこっちに来てからガロム兄さんに会ってなかったな。


「ん、ガロム兄さんも来るの?」


「ああ、あいつは授業か何かでダンジョンに行ってるけど、その日までには帰れるはずだ。

あいつもアルと同じで貴族との付き合いが苦手だったけど、直ってたりして無いかなぁ……」


「んー、必要になったら貴族のマナーとか覚えそうだけど、どうかな。一応ガロム兄さんもA組なんだから身につけてると思うけど」


ガロム兄さんは普段は無口で無愛想な感じだがとても器用な人で、大抵の事はちょっと経験すれば直ぐにそつなくこなすようになる。

欠点としてはちょっと戦闘狂なところがあるくらいか。


まあ、その器用さで貴族社会も上手く渡っていけると家族の誰もが思っていたが、どうやら貴族間のルールみたいなものが好きになれなかったらしく、貴族の友人はいないらしい。


しかし、ガロム兄さんにはカリスマ的なものがあるのか、カルロス兄さんに聞いた話では騎士や冒険者志望の生徒や一部の女子生徒によるファンクラブのようなものがあるらしい。


というかこっちの世界にもファンクラブの概念があるとは思わなかった。


「カルロス兄さんにはガロム兄さんのようなファンクラブとか無いの?」


「俺か?いや、残念ながら聞いたこと無いなぁ」


カルロス兄さんは否定してるが、別にカルロス兄さんにファンクラブがあっても驚かない。

この人ありえないくらい鈍感だし。


「まあ、ガロムの心配もあるが、アルもお茶会の準備だけはしとけよ。

俺もエリシアもお茶会の時はずっと一緒にいれるわけじゃ無いからな」


「わかったよ。じゃあまた後で」


ちょうど教室棟に着いたので、カルロス兄さんとはここで別れる。


「そういえばミューナが静かだったな」


「ミューナ様は少しお疲れのようでして……」


「ぐぅ………」


後ろを振り返ると、爺やと手を繋いだ状態のままミューナは目を閉じて眠ってしまっている。

爺やが手を引けばちゃんとついてくるので、完全に寝ているわけではないようだが、さすがにもう目を覚ました方が良いだろう。


「ミューナ、そろそろ起きないと皆んなに笑われるぞー」


「うゅ……起きた……」


一応、ミューナの方がステータス的には俺より断然体力があるはずなのだが、一体エリシア姉さんの特訓でどれほどスパルタだったんだろうか。


「んじゃ、爺やもまた後でね」


「ええ、ではまた後ほど」


教室の近くまで来たので、爺やともここで別れる。

昨日話し合ったのだが、C組にまで使用人を連れて行くとか貴族アピールが激し過ぎるので、爺やには授業の時は自由にしてもらう事にしたのだ。

俺としてはせっかく学園まで付いてきてもらったのに申し訳ないと思ったが、爺やによると、父さんの家に行って手伝いとかをする時もあるらしいし、学内の設備がとても充実しているため、暇を持て余すわけでは無いらしい。


「さて、俺たちも教室行くか」


「はーい……」


おっと、ミューナはまだ眠そうだな、授業中に寝てたら注意してやらないと。




教室の前まで来たら、ちょっと一呼吸。

初日の挨拶は先生にペースを乱されてちょっとグダってしまったが、今日はしっかり決めねばなるまい。


ガララ……


「おは「来たなアルギウス・グランバード!」よう……アッシュ君」


俺の挨拶が今日も綺麗に決まらなかったのはひとまず置いておこう。


教室の扉を開けた俺の目の前には、何故か前回と打って変わって好意的な目を向けてくるアッシュ君がいた。

理由が思い当たらなさすぎてむしろ怖い。





もしかして変な物でも食べたのかな。


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