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とある勇者の昔話2

 お久しぶりです!


 例のごとく、また更新期間が空いてしまいました……。

「ふむ……それで―――は、その"からおけ"とやらに行った事があるのか?

 1人で行けぬ結界が"からおけ"に張られているならば、同士と行けばよかろう」


「いえ、私は向こうの世界ではその……そうっ!1人が好きだったのよ!だから行った事は無いけど……でも、大体の事は分かるわっ!」


「ん……しかし、やはり実際に行って歌わん事には全て憶測の域を出ないだろう?」


「で、でも、その頃には家庭用のカラオケセットもあったから、そこまで行って確かめる必要は無いと思うのよ!」


「なるほど!その"かてーようからおけ"で、―――は既に"からおけ"のなんたるかは学んでいたのだな!」


「えと……家庭用もまだやった事無いかなぁ~なんて……」


 月夜の下で少女と絶世の美女が語らう姿は、言葉からその情景を想像すれば、さぞ美しい絵に仕上がっている事だろう。

 けれど実際に行われているのは、私の黒歴史をついさっき知り合ったばかりの女性に素で掘り返されているだけだった。 


 この女性、人の姿をしているが実は魔物の類らしく、始めに聞いたときは咄嗟に逃げ出しそうになってしまった。

 まあ、人の姿になれる魔物なんて今の私では全く敵わないのだから仕方無いことだけど。


 それで何故、黒歴史を掘り返されているかと言うと、彼女には私の正体が漠然と分かるらしく、私が何故この女性と喋れるかや、私の元いた世界の事を色々聞いてきた。

 その質問に答えられる範囲の中で答えている内に彼女は歌が好きだと言うので、『地球にはカラオケと言う、演奏団がいなくても曲を流して、本格的に歌える設備がある』と言う話が盛り上がり……気づいたら私の友達0人事情がバレていたのだ。


「あ……そう言えば、貴女の名前を聞いていなかったけど、名前を聞いても良い?」


 そう言えば、彼女に名前を尋ねられたから答えたけれど、そこから質問責めにあったせいで未だに彼女の名前を知らない事に気がついた。


「私の名前か?産まれた時には親がいなかったから、名前は無いのだ」


 親がいない。人間の尺度で考えるのは間違えているのだろうけれど、それでもこの話には一歩引いた方が良いと思ってしまう。


「その、ごめんなさい。少しデリカシーが無かったわね……」


「ん?"でりかしー"?よく分からないが、―――が謝る理由が分からない」


「その……親がいないって話よ。貴女が気にしてるかもしれない事を迂闊に聞いてしまったから」


「んん……?私が事前に話していないのだから、―――が知らないのは当たり前だろう?」


 私の説明を聞いて、彼女はますます分からないという顔をする。人間と魔物ではそこらへんの感覚が違うのだろうか?

 それとも彼女がただ単に、寛容な性格なだけなのだろうか?


 お互いに少しの間顔を見つめ合っていたのが、不意に彼女が「それに――」と言葉を繋げる。



「そもそも、私に親がいたかさえ怪しいのだ。

 私に似た種族の者に色々聞いた事があるが、私達の種族は本来は卵生なのだが、私の記憶では生まれた所に卵の殻が落ちてはいなかったのだ。

 ……それに、私は産まれた時から既に人化の術を持っているが、こんな事は常識的には考えられないらしい」

 

「えっと……卵生じゃ無いなら、よけい親がいないのはおかしいと思うのだけど」


「そうなのか?この前調べたのだがな、下等生物であるスライム共は、魔力が澱んでいる所から自然発生したり、単体で分裂したりして繁殖するらしいのだ!  

 私が下等生物と同じ繁殖法とは思えないが、私も親を必要としない繁殖によって産まれた可能性もあるのだ!」


 したり顔の彼女には悪いが、隠れてスライムを観察している彼女を想像すると、あまりにシュール過ぎて笑ってしまいそうだ。

 

「む……何を笑っている?な、何か私の推測に誤りがあったのか?」


「え?いや、そうじゃなくて……何だか、私達がやっている事って何なのかなーって思ってね」


 人類と魔族で戦って、お互いが傷つき合うだけの戦争。魔族側が一方的に仕掛けたと言われているけど、それも本当か怪しい。

 ただ、真実を見つけたって何かが変わるわけでは無い。

 

 剣を持てる者は戦場へ行き、その命を散らす。


 ずっと続く、こんな馬鹿な事を止める力を持つはずの私達。でも、それだって今すぐに止めれるわけでは無い。

 周囲の戦争への期待、不安、疑念、憤り……全てを背負う勇者と言う立場から見た

、彼女の自由で伸び伸びとした生き様は、なんと美しく見える事だろう。

 

 不思議と、妬ましいなんて負の感情は一切浮かばない。


「……ねえ、友達になってくれない?」


 ふと漏れた言葉。普通は、友達にならない?なんて言って友達になる程、格式張ったものでも無いのだろうけれど、友達を作った経験の無い私にはこれが限界だったのだろう。


 ……というか恥ずかしくて彼女の顔が見れない。


「……友達」


 ぽつりと彼女も言葉を漏らす。それは質問や回答と言う、意思を持ったものでは無く、本当にただ呟いただけのもの。


「友達とは……同士や、仲間のような物か?」


「ま、まあ、そんな所かな?」


 どうやら、友達と言う言葉は知らなかったようだけど、大体の意味は察してくれたようだ。

 

「うん。―――の友達。なかなか悪く無い称号だ。ついでに、友達である―――に、私の名前を名付けてもらいたいのだが、良いだろうか?」


「えぇっ!?そんな大事な役目、私で良いの?」


「同じ名前をつけるなら、初めての友達に名を貰う方が良い」 


「あ、ありがとっ……」


 と言っても、本人は軽く考えているようだけど、さすがに『はい、じゃあこれ』と適当に決めるわけにもいかない。

 かと言って、迷って時間をかけたからと言って、そんな良い名前が出せるとも思わないし……。


「日が昇ってきた。名前もまだ授けて貰っていないし名残惜しいが、人間に姿を見られるわけにもいかない。

 名残惜しいが、今日は帰らせてもらおう」


 辺りを見渡せば、山から顔を出した日によって、たくさんの木漏れ日の筋ができていてとても幻想的になっている。


 って、そうじゃない。次にいつ会えるか分からないのだから、早めに名前を考えなければ!

 そう思い、彼女の方を見ると……


「で、でか……」


「そうか、本来の姿を見せたのはこれが、初めてだったな」


 彼女の魔物としての姿。端的に言えば―――――所謂"ドラゴン"と言う生物だった。


 かなりの大きさを誇る体躯。


 表皮は彼女の頭髪と同じ銀に少し近い……


「……シロ」


 思わず出た言葉。それは彼女の名前として出た言葉なのか、それともただ単に彼女のあまりの白さについ出てしまった、ただの感想なのか、今となっても分からない。


「それは、私の名前か?」


「え?いや、どうなんだろ……それはさすがに安直と言うか、さすがに身体の色が白くて綺麗ってだけで名前もシロって言うのは……」


「いや、シロで良い」


 慌てて言い訳していた私を見ながら、彼女はニマっと笑い(ドラゴンは表情筋が少ないのか、ほんの僅かに口角が上がっただけだが)、シロと言う名前をあっさりと受け入れた。


「え?良いの?私が言うのもなんだけど、思わず出た名前だし安直過ぎるわよ?後から文句言わない?」


「いや、あまり他人に言うものでも無いと黙っていたが、実は――」


 彼女―――シロは、飛び立つ為か私に背を向けながら、なおも言葉を続ける。


「――私もこの鱗の色は昔から自慢に思っていたのだ」


 そう一言告げて、彼女は飛び立って行った……。




















「……どこを出歩いていたのですか?」


「えっと、街の探索と神殿の見物を少々……」


 現在、私は謁見室で王様でもある教皇に質問……と言う名の尋問を受けている。

 

 あの後、慌てて帰って来たのだが、既に城の中では私が行方不明と言う事で、兵士が行き交っていて大混乱だった。

 

「ふぅ、今回はそう言う事に致しましょう。

 しかし、勇者様は人類の希望……どうか勝手な行動は慎まれるようお願いいたします」


「はい……」


 今回はあまり探られていないが、絶対に教皇は私の事を疑っている。

 さすがに、仮にも勇者が魔物と会って友達になった……なんて言えば大問題になるだろう。

 シロにも迷惑がかかるだろうし、それだけは阻止しなければならない。


 朝一の謁見を終わらせた私は、部屋に戻って寝る事にする。今日の訓練は休もうそうしよう。

 ……と思ったのだが、部屋に戻ると天井裏から何者かの気配がする。普段の私では絶対に気づかないけれど、これもいつの間にか手に入れていたスキルの効果だろうか?感知系のスキルには全然見えないけど……。


 とりあえずスキルの把握は置いておいて、問題は天井裏の気配なのだが、十中八九教皇が仕向けた者だろう。


 まあ、そう言う事ならいくらでも見れば良い。

 どうせこの部屋には寝に帰るだけみたいな物だし、見られて困る物があるわけでも無い……。




















 

 ……実際にはそう甘くは無かった。


 訓練中、自由時間、果てには風呂にも着いてくる。

 さすがに風呂に入る時は気配を感じる天井付近を睨みながら、「出ていって!」と強めの語調で言ったら気配も消えたけど……部屋に戻るとまた天井裏に気配があった。

 

 さすがにここまでされると多少強引にでも教皇に直談判した方が良いのだろうけど、なんとなくその時の私はそれをするのが躊躇われた。

 

 その日からはひたすら監視をされる日々。


 けれども私も人である以上、直接的な被害もなく毎日同じように続くと、我慢の限界よりも先に慣れが来る。


 だけど何故か教皇と言うか、この国をあまり好きになれない私は、手の内を見せるつもりが無く、そのせいで新しくスキルを覚えても、監視に見られるわけにはいかない為に一度も使う事の無いまま日々が過ぎていった。

 

 その間、他の勇者の皆も既に教皇側についているであろう今、あまり皆と話してうっかりスキルやあの日の夜の事がバレてもいけない為、食事等の時間をずらして皆と会わないようにもしていた。

 これらが全て私の勝手な被害妄想で、教皇は本当に良い人だったら良いのだけど、どうしても教皇が信じられない。

 

 ……最近は勇者全員の実力も上がってきた為か、訓練も兵士の方との試合なんかが取り入れられてきた。 

 このペースでいけば近々、街……聖都の外での実地訓練も本格化してくるだろう。

 その時に、万が一の為にもレベルをできるだけ上げておきたい。それが自分の、ひいては数多くの命を救う為だと信じて。

 


















 それから数週間が経ったある日、とうとう待ちに待った野外訓練が始まった。

 

 今日、訓練先として選ばれたのは、街から少し離れた所にある、かなり昔に自然発生したと言われている迷宮。


 所謂"ダンジョン"だ。

 

 そのダンジョンは、聖王国が所有している幾つかのダンジョンの中でも、とりわけ攻略難易度が低いとされている。

 

 今回の目的は後日知った事だけど、私達がどれだけ魔物を討伐する事に忌避感を感じないかを見るためのものだ。

 戦闘技術を一通り磨いた私達が次に行うのはレベルを上げる事だけれど、それには魔物を殺さないといけない。耐性が無いと、これからのレベル上げに支障が出る為に、今のうちに個人単位で見ていくと言う事らしい。


 

 暫くの道のりは金や宝石等が装飾された馬車で、護衛の兵士50人前後が周りを固めての移動だ。

 私は、『乗り物酔いが激しいので、皆に迷惑がかかってしまう』等と適当な事を言って、一人で乗せてもらう事にした。

 


 

 他の勇者達は、それぞれ自分のパートナーを連れて馬車に乗り込み、さっさと出発していっている。

 

 ……まさか仮にも勇者である皆が、この数日でこうもあっさり篭絡されるとは思わなかった。




 とりあえず、私も皆に遅れないように馬車に乗って出発したのだけど……。

 

「さすがに警戒され過ぎでしょ……はぁ」


 皆が出発した後、残るは私の馬車だけなのに、やたら兵士が残っていたので半数以上は見送りだけだと思っていたのに……まさか全員私の護衛になるとは想像すらしていなかった。


『この人数はさすがに多すぎませんか?』と、兵士の中で一番偉いであろう格好の人に聞いたけど、『最後尾に戦力を集中させる事で、万が一の状況に対応しやすいのです』と、はぐらかされてしまった。

 ……と言うか、護衛の配置の仕方なんて分からないし、正直本気で言っているのか、本当にはぐらかしているのかも分からない。


 

 そして、こんな状況で出来る事と言ったら考え事くらいで、真っ先に思い浮かぶのがシロの事。


 シロは元気にしてるかな?


 まだスライムの観察でもしてたりして……。


 もしかしたら、歌が好きとか言っていたし、どこかで歌っているかも。シロの歌声は、とても綺麗なんだろうなぁ……。




 ……等々、シロの事で思い耽っている間に、外の太陽はグングン上に上がっていき、早朝に出発した筈なのに、気づいた時には昼に差し掛かっていた。




 ……と言うか今更ながら、私はちょっとシロの事を考え過ぎじゃないだろうか?

 

 出会って数日しか経っていないし、会ったのも最初の日だけ。

 普通、一度会った人の事で頭がいっぱいになったりはしないと思う。


 ――仲間がいない、一人の状況で出会ったから?

 

 ――それとも何か、彼女のスキルに魅了系の類があったり?


 

 コンコンッ


「勇者様。そろそろダンジョンに着きますので、準備を整えておいて下さい」


「っ!?……はい、分かりました。ありがとうございます」


 突然話しかけられて驚いたけど、何の事は無い。私がシロの事で頭がいっぱいになっている間に、もう目的地まで来ていただけだ。


 私は自分の装備と持ち物に不具合が無いか今一度確認しておく。

 

 だけど、騎士の人達の基準ではもっと早く持ち物の点検をするのが当たり前なんだろう。装備を確認し終えた後は持ち物の確認……と思った時には馬車が既に停止していた。


「ど、道具はポーションとマジックポーション、それに解毒用ポーションに麻痺治しの薬草……こ、これだけあれば今回のダンジョン攻略も大丈夫って言ってたわよね……」


 足りなければ、最悪誰か騎士の人から貰えると思うし、そこまで心配する事は無いんだろうけど、私が勝手に敵対してる今、どんなに些細な事でも借りは作りたく無かった。


 荷物も確認し終えたので、皆に遅れないように私も直ぐに馬車を降りる。

 馬車から降りる為の階段は一段一段が高いので、踏み外さないように下を見ながらしっかりと降りていく。


「―――様、ここが我が国の所有するダンジョンでございます……ふむ、体調は万全なようですな」


 突然、傍にいた兵士の方に体調を心配された。


「え?……えぇ、そうですね。思ったよりも馬車の揺れが少なかったおかげかも」


 そう言えば、乗り物酔いが激しいって設定だったっけ


「ほう、それはなによりです。……では改めて、ここが我が国が所有するダンジョンにして、その名も『悪鬼の洞窟』になります」


 その兵士の声を合図に、近くの兵士が皆、私の邪魔にならないように左右に別れてくれる。

 

「これが……」

   

 思わず嘆息を漏らす。


 ダンジョンは名の通り洞窟になっているようだけど、見た目は別に普通の洞窟だ。けど、私が注目したのはそこでは無い。

 このダンジョンは既に最深部まで攻略されており、尚且つ出現する魔物はどれも初心者でも倒せる経験値にも金にも殆どならないモノばかりだ。

 

 ……それなのにも関わらず、そこには様々な屋台型の商店が建ち並び、また、2、30人もの冒険者がいた。


 一応、事前に講義を受けていたけれど、やはりダンジョンと言うのは魔物自体がどれだけ弱く金にならなくても、色々な利益を産むのだろう。

 国名は知らないけど、とある国ではダンジョンを中心に発展した、所謂『ダンジョン都市』と言う所があるらしい。都市と言いいながらそれ単体で国であるのが不思議だけれど。


「では皆様、私に続いて下さい。早速ダンジョンを探索して行きます」


 兵士の一人の号令で、勇者が全員その人の元に集まっていく。

 ……さすがにパートナーはここに残していくようで、誰もパートナーを連れて集まってきていない。


 一応、私達が勇者である事は周知の事実ではあるけれど、余計な騒ぎを起こさない為にさっさと人にあまり出会わないダンジョン内に潜ろうという算段だろう。


「さあ、―――様も、後にお続き下さい」


 先ほどから傍にいた兵士の人に急かされて、私も勇者達の元に集まる。


「ん……?」


 一瞬、他の勇者達から紫のようなピンクのようなモヤが見えた気がする……。


「皆様、全員揃われたので、早速行きましょう。では、私の後についてきてください」


 もう一度その正体を確認するために皆を見るが、全員歩き出したので、私も後に続く。


「まあ、ダンジョン探索が終わってからで良いか……」




 今はそれよりも、やるべき事がある。


 ――この世界で戦っていく為に必須とも言える、レベル上げに。

 今回は主人公一切出てきてませんが、もう暫く出てきません!


 後、活動報告にも手短に書く予定ですが、作者が大学受験の為にまた暫く投稿できないかもしれません……。

 毎回、それでも見ていただいている読者様には感謝してます!

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