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普通

 毎回遅れてしまってすいません……。


 こんなにお待たせして物語内の進行時間は数時間。いったい何年したら最終回に行くのでしょうか……?

「疲れた……お腹空いた……」


「ほら、もうすぐなのです。あそこ、建物の屋根が見えているのですよ!」


 おお……たしかに見える!!


 久しく使っていなかった千里眼を使用して見てみると、どうやら町と言ってもそこまで大きくないようだ。

 そもそも、町と村の明確な違いとか分からん。


「てか、なんで俺より体力あるんですか……!?」


 さすがに長距離と言えど歩いただけで息切れするような鍛え方はしていないはずだが、少し歩くリズムが崩れてきた俺と違いレスター先生は町が見えてきたのもあってか、今にもスキップをしだしそうな様子だ。


「そりゃ私は研究の為に普段から色んな所を旅しているのですよ。スキルも基礎体力も、自然と上がっていったのです」


 俺の場合は村の比較的平らな所を走って鍛えていたが、そう言えば今回の道にはあまり平らな道が無かった気がする。一応道を歩いてはいたんだが、馬車の車輪跡なんかが多いせいで凸凹の道を通らざるをえなかった。

 今思えば、たしかに先生は地面の凸凹を余裕で歩いていた気がする。


「その歩き方ってのも今度教えて下さいね」


「分かったのです。……さあ、こうやって他にも今後の課題を見つけていこうなのですよ!!」


「……おー」


 合理的な考えではあるけど、絶対今思いついたんだろうな。先生の事だ、そうじゃなきゃ最初から言ってるだろう。

 

 そこからは町に向かってひたすら歩き続ける。

 

 途中、先生の歩くスピードについていけない俺を見かねてか先生が俺の荷物を持つと提案してくれたが、流石にそれは男として情けないので丁重にお断りした。

 それでも先生がまだ何か言いたさそうだったので、こっそり【制限崩壊】を発動して走ってみせることで事なきを得た。


 

 明日は全身筋肉痛確定だな……



「お、今日はあまり並んでいないのです!」


「へぇ……これで並んでいない方なのか」


 漸く町の前まで来てみると、町の前に数台の商人の馬車と、その間にちらほらと人がいるのを見かけた。


「ここでは馬車も人も同じ所から入るんですね」


「首都の方と違ってこの町は小さいので、首都より人の流れは少ないのです。なので入口が1つでも対応できるのですよ」


「そう言う事だったんですか……」


 まあ、入口と言っても首都のように町が壁で囲まれているわけでは無く、町の周りに水路を敷いたり柵を立てているだけだ。そこに門番の人が2人程立っているだけだが、二人とも私服だし町の自警団とかだろう。

 

「はい次……ああ、レスター先生でしたか。どうぞ、通って良いですよ」


「いつもご苦労様なのです」


 お、先生は顔パスなのか。


 これから行く所は先生お気に入りの場所と言っていたし、何度もここに来たことがあるのだろう。

 それとこの町の検問が、元から緩いとかか。まあ、兵士でも無い人が調べられる情報なんて少ないし、この検問はザルと言えばザルなのかもしれないな。


「とりあえず、ご飯を食べようと思うのです」


 町に入って早々、先生が次の予定を告げてくる。首を傾げながら聞いてきているから、どちらかと言えば提案とか質問の意味が強いのか。


「分かりました。じゃあ、先生のオススメの店で食べましょう」


 先生が食に貪欲かは知らないが、何度も来ているらしいこの町なら、行き付けの店くらいできるだろう。


「まだこの町の料理店を制覇していないのです!この前来たときに気になったお店に行くのですよ!!」


 予想以上に貪欲と言うか、食に対する執念のようなものを感じた。

 心なしか、先生の目に炎が見える気がする……。


「……とりあえず店の外観を見てから決めましょう」


 先生が何度も来た中で最後の方に残った店だ。味は分からないが、少なくとも外観は先生のお気に召さなかったのだと思う。










 ……結論から言うと、極々普通の店だった。


 あまりにも普通過ぎたので店の中での話はいらないだろう。

 料理を食べている時に先生にこの店が後半に選ばれた理由を聞くと、店の外観が『普通』だったかららしい。

 所謂、好奇心から店巡りをしていたんだろう。


 余談だが、先生の食事の仕方がかなり綺麗だった。俺も、貴族マナーで一応そこらへんは教えられた事があるが、その時の講師をしてくれた使用人さんに勝るとも劣らないレベルだ。

 当たり前だが、俺の知らない先生がまだまだあると言うことだろうな。


 但し、絵面は微笑ましい子供の食事風景だが。



 閑話休題……。



「普通に美味しかったのですよ~」


「外観も内装も料理の味も、普通に良かったですねぇ~」


 至って普通の感想を言い合いながら、町の中をぶらぶらする俺と先生。

 あまり目を引く店は無いが、たまに見た事の無い商品があるから飽きはしないな。


「さて、そろそろ町を出るのです」


 ……え?


 咄嗟に先生の顔を見るが、本人は至って真面目な顔つきをしている。


「いくらなんでも早すぎませんか……?」


 この町に来るまで歩きっぱなしだったから、まだまだ足の疲れが抜けていない。

 それにさっき【制限崩壊】を使ったせいで、疲れている足を庇わないペースで歩いたからか尚更疲れている。


 というかもう、痛いってレベルだ。


「さっきゴブリン達と話していたせいで、かなり時間をロスしてしまったのです。このままじゃ途中で日が暮れてしまうのですよ」


「ゴブリンめ……!」


「アルギウス君も自分から関わっていったのですよぉ……」


 あ、そう言えば俺もゴブリンを治したり、食糧を与えてたりしたな。

 

「はぁ……次の村って、ここからどれぐらいかかるんですか?」


「んー、王都からこの町までの距離の半分も無いのですよ」 


 まあそれくらいなら行けるかな……。


 流石に歩いた距離が正確に何キロとは当てられないが、たぶん30キロくらいは歩いたんじゃないだろうか。それも途中に山を挟んだりして。


 これでまだ、動けなくなる状態じゃないんだからつくづく前世に比べて、この身体はハイスペックだと思う。

 というかこの世界の住人は大抵、地球の人間より身体能力高いよな。


「アルギウス君、そろそろ出発したいのですよー!」


「ああ、はい……」


「不味いのです、アルギウス君の目が若干死んでるのですよ……!!」


 そんなに酷い顔になっているのか。


 気分はろくに説明も聞かずに入った会社がブラック企業だったみたいな。

 我が社は万年人手不足で基本肉体労働。給料は基本出ません。後は社長が残念な人です。

 

 うん。ブラックどころか鬼畜企業だな。

 

「先生、これからも二人だけで頑張っていきましょうね」


 これ以上犠牲者を出してはいけない。


「ななななんですか!?い、いきなりそんな事言われても先生困るのですよ……!!」


 あれ?何か勘違いしてるような……。


「それより先生、あの山を越えたりするんですか?」


 俺達の向かっている方向に大きな山があるのだが、これを越えると言われたら流石に帰るつもりだ。


「え!?ああ、流石にあの山は越えないのですよ。距離感が掴みづらいですが実際はかなり遠くにありますし、大きさもここから見るより遥かに大きいのです」


 うーん。言われて見れば、山の頂上の方はうっすらと雲に隠れているな。


「あの山は竜の住処になっているので、一般の方では行けないのですよ」


「竜かぁ……」


 少し前に変異種の幼竜と戦ったのを思い出す。


 今思えば、あの日がきっかけで今ここにいるような物だよなぁ。もしあの時、幼竜に出会わなければ今は何をやっていたのだろうか。

 

 まず学園に通っていなかっただろう。多分、まだスライム狩を続けていた。

 それに転生者って事も皆にはまだ秘密だったのかもしれない。というか、墓まで持っていってたかもしれないな。

 あの時は多少混乱してたせいで、簡単にばらしちゃったけどさ。

 

 物事以外にも、人との出会いもなかったんじゃないだろうか。

 ビルドさん達とも偶然会っただけだし、ギルドマスターはいくら父さんの親友だからって、変異種殲滅戦が無ければあんなに喋る関係じゃ無かったんじゃ無いだろうか?

 遠からず学園に来てただろうけど、レスター先生とも……なんか会いそうな気がするな。主に厄介事として。


 後はヘリスやミューナとまだ出会っていない可能性か。もしかしたら数年は先の話になっていたかもしれないな。

 そう思うと、なんだか幼竜が幸運を運んできたように思える。たしか村の餞別に幼竜の骨もあったし、何かアクセサリを作ってみても良いかもしれないな。


「アルギウス君、聞こえてるのですかー?」


「……え?ああ、はい」


 突然頭に入って来た声に驚き顔を向けると、先生が俺の前でプリプリと怒っていた。どうやら少しトリップしていたようだ。


「いきなり遠い目をしだすから、先生びっくりしたのですよ」


「すいません。懐かしい事思い出したんで」


 懐かしいと言っても数週間前の話だが。


 というか、竜という単語1つでトリップするとか、相当疲れてるな俺。


「途中で休憩をとるので、もう少し頑張るのですよ」

 

「……分かりました」


 真剣に先生に心配されるなんて、もう俺は末期なのかもしれない。





















「ふっ、とうとう着いたぜ……」


「かっこよく決めているところ悪いのですが、足がガクガク震えていてなんというか……見ていて滑稽なのですよ、言い方が悪いのですが」


「ああ悪いですね。今、予想外の所から核ミサイル級の爆弾が俺の心を焦土と変えました」


「核ミサ……?……よく分からないですが、どうやら言ってはいけない事を言ったようなので謝るのです。

 たしか、男にはプライドを捨ててでも守らなければいけない物があるって聞いた事があるのです。先生、忘れていたのです」


「そうですか。俺は捨てずに守っていた物を打ち砕かれたせいで、もう何も残っていませんよ……」


「え……?」


 もう肉体的にも、精神的にも立ってられない。


 まさか先生にこんな顔があったとは。名付けて、『歩くアホ天然発言凶器』だ。元々無いに等しかったネーミングセンスは、既にミューナに全振りしたから期待はしないように。

 

 ……アホというか、天然な性格がこんな凶器と紙一重だったなんて誰が想像できようかっ!!


「と……とりあえず一度、村で休憩をとるのでもう少し頑張るのです!」


「いえ、このまま一気に目的地に行きましょう」


 先生が気を使ってくれるが、ここで休憩を取ると心が完全に折れて本当に帰りたくなるかもしれない。


「アルギウス君がそう言うなら良いのですけど……」


 先生が渋々了承してくれたのでそのまま村を抜け、森の中に入っていく。

 先生によるとこの先に丘があるので、そこにテントを作って1泊するようだ。

 

 後、その近くに小さな遺跡があるらしく、今日か明日にそこを案内したいらしい。俺としては疲れたのでさっさと帰りたいのだが、意外にも真面目な顔で言われたので、とりあえず明日行くことにした。

 なんというか、意外過ぎるせいかその時の先生が少し怖かった。まあ、多分あれだろう。ヤンキーがちょっと良いことしただけで感動する事があるとか……いや、アホがいきなり頭良くなったらそれだけで怖いの方が近いのかな?



「後ちょっとなのです」


「漸くですね」


「……アルギウス君て、疲れている時と疲れていない時があるのですよ」


 そりゃ【制限崩壊】を使っている時と使っていない時の違いだな。


「……まあ、そう言うスキルですよ」


 とりあえず濁しておこう。


「へぇ~、効果時間が安定していないようですが、充分便利な能力なのですよ」


 先生はそう言うが、実際のところ【制限崩壊】は先生が言うほど便利でも無い。このスキルはただ制限(リミッター)を外しているだけなので、必然的に肉体にかかった制限以上の事をするのが目的の技だ。後からリバウンドが来るの前提とか、好き好んで使いたい奴はいないだろう。

 そうは言っても、そもそも先生は能力の詳細は知らないから仕方ないか。



 ふと、先生が足を止めた。


「話をしている間に着いたのですよ」


「そうなんですか?」


 思ったよりも直ぐだったな。てっきり、励ます為にもうすぐと言ってるのかと思った。


「アルギウス君も見てみるのです!!ここが先生お気に入りのスポットなのですよ!」


「へぇ……」


 先生に促されて見てみると、そこには平原が広がっていた。

 全体的にその平原は他の場所よりも隆起している。なるほど、たしかに丘だな。


 たしかに丘だ。丘なんだが……。


「普通……」


「バッサリ言われたのです……!!」


 なんというか、たしかに綺麗だけどそれだけなんだよな。まあ、地球でこんな綺麗な丘は数える程しか無いと思うけどさ。


「まあ普通って言うよりは、普通に綺麗って言い方の方が正しいのかもしれませんね」


「アルギウス君もこの良さを分かってくれるのですか‼連れてきて良かったのですよ」


「感動しているところ悪いですが、日も暮れてきましたしさっさと準備してしまいましょう」


「そ、そうなのでした……」


「とりあえず俺はテントの方張りますね」


「あ、なら先生は料理を作ってるのです!!」


「分かりました」


 果たして先生に料理を任せても良いのか?という考えが一瞬頭をよぎったが、紅茶は凄い美味しかったし大丈夫だろう。

 材料は……これを機に大人の階段を上ろう。食虫植物なんてただの植物だ。虫そのものでは無い!!


「とりあえず袋の中に……おお、あったあった」


 今回は先生もいるのでテント用具はアイテムボックスではなく、アイテムポーチから出す。だが相変わらずこの念じた物が取れる原理が謎だ。

 俺のアイテムボックスはこれの他に、ステータス画面のような物を操作する方法があるから良いが、入れた物を忘れた場合はどうするんだろうか。

 手当たり次第に取るのは俺みたいに抜き身の剣を入れてる奴がいたら危険だし、ひっくり返すとかか?一応、アイテムポーチはそれで中身の物は出てくるけど……。


「……?ア、アルギウス君!?食料も入ってるのですからアイテムポーチをひっくり返そうとしてはダメなのですよ!!」


「そう言えば全部入れてたっけ……」


 危ない危ない。もう少しで食べ物を粗末にするところだった。疲れているのもあるが、もう少し考えて行動しないとな……。


「すいません。ちょっとボーっとしてました」


「いえ、たしかに今日はアルギウス君は頑張ったのです。結果的に食料も無事だったので良いのですよ」


 ちょっと申し訳なかったので、その後は黙々とテント作りをしていく。

 先生もやはり料理は馴れているようで、徐々に良い匂いが漂ってきた。我慢できずに少し覗いてみると、料理の手捌きがかなり手慣れているようだった。

 ただ野菜が多いのがちょっとな……。前世では特別野菜が嫌いというわけでも無く、出されれば一応全部食べていた。ただ、この身体になってから、ちょっと味覚も子供になってるのだ。

 故郷の村の野菜は美味しく感じたが、それもトマトなんかの苦味とかが無かったりする物だ。苦いのは未だに食べる度に顔をしかめてしまう。


 ん~、先生が悲しむのは見たいか見たくないかで言えば見たくない方だし、そこらへんは気をつけるか。

 

 こうして、料理が出来るまでの間、ずっと無表情の練習をしていた。





 ……途中で【万物之贄】に頼りそうになってしまったのは、結果的にはどうでもいい話だろう。

 ある程度話の流れは決まっているのですが、それを書くための会話や行動を上手く表現できずに時間が経ったり、書いてる途中に思いついたりした、ちょっとしたイベントなんかを盛り込もうとして時間が想像以上に過ぎたり……自分の技量の未熟さを嘆く日々です。


 それでも諦めずに頑張るので、これからも何卒よろしくお願いします(/´△`\)

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