入園試験!②
一週間以内達成!来週は諸事情により更新はできないと思います……。
そういえば今日からツイッター始めました。現代っ子のはずなのに操作があまり分からない……。
成金猫で検索すれば出ると思うので、是非フォローしてね!ある程度使いこなせたら更新情報とか、色々載せると思います!
――ほんの一瞬だった。
いや、その一瞬さえ見えていなかったんだ。気づいたら終わっていた、と言うべきだろうか?
「とにかく、あれは大人気無いと思うな兄さん」
とりあえず、事を起こした張本人に述べる感想はこれだろう。
「ごもっともで……」
さすがにやり過ぎだと分かっているのだろう。
そういえば昔からカルロス兄さんは"ちょうど良い"ができない人だったな。
「ミューナ、大丈夫か?」
「うにゅ、大丈夫だった!」
「さっきは悪かったな、ミューナ」
「大丈夫!それよりさっきのピカーッ!てなるやつ、今度教えて!」
さっきまで俺の膝で寝ていたミューナだったが、まだ数分しかたっていないのにもう元気があるようだ。
突然ミューナが立ち上がったせいで、危うく顎を打ち抜かれそうになったけど……。
「さて……次の試合を始めようと思うのじゃが、どうじゃろうか?」
「そうですね、入園した場合はまだまだ予定がありますし、なるべく早く終わらせましょう」
学園長と会長の言う通りだ。後の事を考えたらこの試験に時間を割いてられない。
それに自惚れかもしれないが、この入園試験は正直余裕だろう。ミューナはあっさり負けたが、あれだけ動けて6歳児の入園試験では不合格レベルです!……なんて恐ろしい学園では無いはず。
「次は私の番ね」
そう言って、唐突に名乗りを上げたのはエリシア姉さんだ。
やっぱり会長は最後に出るって事か……。
「なら私が相手します!」
どちらが相手をするか相談しようと思ったが、それより先にヘリスが名乗りを上げてしまった。
まあ、なんかやる気っぽいし止めないけどさ。
「やっぱりヘリスが相手ね。お互い、良い勝負にしましょう?」
「ひぅっ……」
二人の背後に虎と子猫が見える。どちらがどちらかとは言わないけど……。
ヘリスにアドバイスしても良いだろうか?さすがにこの状態で戦っても相手にならないだろうしなぁ。
「ヘリス、ちょっと耳貸して」
「ふぁいっ!?あ、すいません……」
ヘリスがビクビクしながら近寄ってくる。頼むから、なんか俺が悪いことしようとしてるみたいだから震えを止めてほしい。
何はともあれ、ヘリスにエリシア姉さんの弱点……と言うよりは切り札を教えようと思う。対策を教えるのは試験的にセーフか分からないし、今聞いて姉さんに警戒されるのも嫌なので、できればヘリスが考えてくれると良いんだが。
「今ちょっと、エリシア姉さんの威圧感凄いだろ?姉さんは魔法があまり得意じゃないから、その時は大抵―――を使って来るか。それさえ防げば勝機はあるはずだ」
「分かりました……なんとか頑張ってみます!」
どうやらヘリスも元気が出てきたようだ。
何も知らない状態よりも、相手切り札を知っている状態で戦う方が断然勝てる気がするもんだろう。
「アル、私の耳は借りなくて良いの?」
「いや、そもそも敵だからね!?」
「アルに敵扱いされたわ。寝返りはありかしら?」
「ダメに決まっておるからの!?」
「エリシア、遊びはそこまでにしておきましょうね?ヘリスさんはなかなか強いようですよ?」
「分かりました……準備は良いかしら?」
「はい!よろしくお願いします!」
「ゴホンッ……えー、それでは試験開始なのじゃ」
「『大爆発』!」
「上級魔法を無詠唱……それだけで試験突破したようなものだけれど、試合は続けるわよ!」
なんか知らないけど、上級魔法を無詠唱できたら試験突破か……。
姉さんや兄さんには見せてないけど、俺も一応できたりするんだよな。その一つ上の超級までいくとこれまでとは段違いに難しくなるからできないけど。
「はあっ!」
ズドォォォンッ
マジか……姉さんったら、ヘリスの『大爆発』を回避しなかったぞ!?
どうなったか見るために魔力眼で煙の中を探るが、煙自体にヘリスの魔力の残滓がこもっているせいで中の様子が見えない。
だが、ヘリスはもう次の魔法の詠唱をしている。ここで「やったか!?」みたいにフラグを立てなかったのはとても良い判断だ。多分フラグなんて知らないだろうけど。
「ん……?これは壮観だな」
最初に気づいたのはカルロス兄さんだった。他の皆もカルロス兄さんの目線を追って上を見てみると、なんとそこには沢山の土塊が浮いており、今見ている瞬間にもだんだん増えていたのだ!
しかもよく見ると、その全てが槍の形をしている。たぶんヘリスは中級魔法の『土槍』でこれを作ったのだろう。
「ふむ、ただ空中に留めておくだけとはいえ、これだけの数の魔法を同時に操作するか……かなり優秀だとは思ったが、まさかここまでとはのぉ……」
学園長も驚いているようで、どれだけ土槍が増えるのかを興味深そうに見ている。
「皆……もしかして私の事忘れてないかしら?」
その声の主を見てみると、煙がようやく晴れてきたようでうっすら姿が見えて来たが、全くダメージがあるように見えない。
「これで……最後です!『気爆』!」
「あら?魔力が足りなかったのかしら?」
発動しないヘリスの魔法にエリシア姉さんが不思議そうに首を捻るが、俺と……学園長と会長にはヘリスの狙いが分かった。
というかこの二人も魔力眼持ちなのか?
「次は私の番ね……『身体強化』」
来た、姉さんの切り札だ。魔法を一発耐えたと思ったら、もう相手が全力の魔法を放とうとしているのだ。そりゃここで切り札を使うはずだろう。
……だが、それをヘリスに読まれていたとすれば別の話だ。
「あら、身体が軽いわ……何かの魔法?」
「いきますよ……はぁっ!」
「来なさい」
ヘリスの声に呼応して、空中にある土槍が次々と落ちてくる
「遅いわね……っ!?」
最小限の動きでかわそうとしつ姉さんだったが、何かに気づいたのか、全力でその場を離れる。
「遅いです!」
ビュオォォンッ!
「くっ!!」
土槍の着弾地点から離れたはずの姉さんが吹き飛んでいく。
そう、これこそが狙いだ。
エリシア姉さんが煙から出てくる前、ヘリスが土槍を作る時にこっそりと重力魔法の超初級魔法『軽量化』を煙に紛れさせて、がむしゃらに煙の中にかけていた。
当然、魔法が苦手な姉さんは魔法の感知も苦手なため、気づかない内に当たってしまっている。
そしてヘリスの最後に唱えた不発に見えた魔法は、土槍に付与されていた。
後は土槍の着弾時に付与された『気爆』が発動して爆発。
軽くなった姉さんはその余波だけで飛んでいってしまう……当然そんな状態で身体を制御なんてできないので、他の土槍に当たって負け。……という寸法だ。
「これで終わりです!」
「フフ……」
―――土槍が当たる瞬間、姉さんが笑った気がした。
「また土煙か!これも……魔力眼じゃなんも見えねぇ」
「いや、もうそこにはいないぞ。ほら」
カルロス兄さんが指を指す方向を見てみると、
「さすがの私も、ちょっと負けるかもと思ったわ」
「相変わらず、兄弟の中で一番の身体能力を持つだけあるな……」
「えぇ!?クライン兄さんはともかく、ガロム兄さんもカルロス兄さんも勝てないの!?」
「その分というか、兄弟で一番魔力の扱いが下手……なのはアルも知っているだろう」
「なにその脳筋キャラ……」
グランバード家の兄弟の中では紅一点のエリシア姉さんが、まさかの一番の脳筋プレイヤーだったなんて……そりゃいつも喧嘩で他の兄さんがぼこぼこにされてるわけだ。
てっきり「女は殴らねぇ!」みたいな信念が有ったのかと思ってた。
「ただいま兄さん達の株価が下落中」
「別に筋力負けてたからってその扱いは無いだろ!?」
違うよ兄さん……心の問題だよ。
知らぬが仏ってこういう事を指すんだね。
兄さん達(特にカルロス兄さん)の株価が下がっている現在も、ヘリスとエリシア姉さんの攻防は続いている。
俺の目は姉さんの残像が見える程度にしか追いついていないが、なんか姉さんが空中でいきなり方向転換をしており、それをヘリスが土槍で攻撃しようとしているようだ。
一見悶着状態のようだが、その実はヘリスが圧倒的に不利だ。
なんたって目に見える形、残りの土槍の数で戦闘力が減っているのが分かる。土槍が切れた瞬間、姉さんがヘリスに攻撃して終わりだろう。
「これで、どうですか!!」
「あら、やるじゃない」
気づけば、姉さんの周りを球状に土槍が囲んでいる。姉さんは……空中に立っているがそこはもう驚かない。
「解説のカルロス兄さん、エリシア姉さんのあの状態はなんでしょうか?」
「たまにアルのテンションについていけないが……たしか『力場魔法』を使っていると聞いたな。普通は人間一人にかけられるような簡単な魔法では無いはずだが……そこは教えてくれなかったな」
「なんかいつもより真面目な回答ありがとうございました解説のカルロス兄さん。どうやら現場が動きそうですね、それでは現場の方を見てみましょう」
「ほんっとに何なんだ?アルのその変な喋り方は……」
日本とは縁の無い世界に来ると、たまにこう言うネタを入れたくなるんだよな。理解者はいないだろうけど、俺はこれを止める事はできないと思う。きっと。
「止めです!」
「これで終わりよ!」
お互いに声をかけあった瞬間、土槍による球体が一瞬で縮まった。このまま行けば、中心にいるエリシア姉さんはひとたまりも無いだろう。
ビュオォォォォォォォォッ!!
「ぬぉぉおっ!?飛ばされるぅー!」
「アル、ぎゅー!」
土槍が一斉に爆発したせいで、余波がここまで来てしまった!
幸い、飛ばされそうになったところをミューナに支えてもらって事なきを得た。って、飛ばされそうなの俺だけ!?
こうなったら『アイギスの盾』をこっそり使って……学園長と会長にはバレるじゃん!
「ミューナ、ちょっと絞めすぎじゃない!?痛い、いたたた……!」
「終わったー」
まさか俺の人生がかっ!?と思ったが、どうやらミューナは風が止んだのを教えてくれただけらしい。
「ふぅ、ほんのちょびーっとだけ危なかったな……ってこっちも終わりか」
一人つまらない虚勢を張りながら試合を見てみると、どうやらそっちも終わっていたらしい。
「参りました……」
「良い試合だったわ」
どうやらヘリスが負けたようだ。
「解説のカルロス兄さ……」
「分かった分かった!そのノリにはついていけないって!
はぁ……今のはエリシアが手に持っているナイフだな。あれはエリシアの入園時に父さんがくれた物で、『魔絶』っていう効果がある。 その名の通り魔力を絶ち斬るんだが、どちらかと言えば自分の魔力で相殺する物だから、エリシアはそれに殆どの魔力を込めて風を斬り裂きながらヘリスまで一直線……て寸法だ」
「なにその魔法使い殺し」
よく見ると、ヘリスの首筋にエリシア姉さんがナイフを突きつけている。とても綺麗に装飾されているが、かと言って過度な装飾では無い。
さすが父さん、センス良いね。できれば『魔絶』以外の効果にして欲しかったけどさ。
「勝負あり、じゃな。まさかエリシア君とここまで渡り合うとはなぁ。カッカッカッ!将来が楽しみじゃ!」
この次はとうとう俺の番か……。ヘリスがここまでやったんだ。俺も精一杯足掻いてみるとするかね。
「次はよろしくお願いします」
「……」
会長に声をかけるが、ずっと空中を見つめていて返事が無い。……大丈夫だろうか?
「あのー……」
「……ああ、すいません。少しお話をしていたものでして」
「お話……?」
「試合で見せてあげますわね?」
会長が電波少女……って事は無いだろうけど、会話ってどういう事だ?
とにかく戦って探すしかないか……。
腰には杖をさして、手には刀を持つ。ヘリス謹製コートは意味が無いので着ない。
準備万端だ。
「それでは最後の試験を始めるとしようかの。両者前に出て……始めじゃ!」
会長の真意が分からないまま、最後の試験が始まった。
一話につき一回戦闘で終わり……短く感じますか?ってか話が進みませんね。
どうしよ……。




