入園試験!①
一週間(数時間オーバー)で書けて良かった……。
このペースを続けたいですなぁ……。
「――そこでなんと、死んだはずの幼竜が動きだしまして、アル様にブレスを撃とうとしていたのです」
「そこでミューナがね、ヨウリューの頭をドーンってキックしたら、バーンッってなったの!」
「ミューナ、凄いですね!」
王国近辺の街道を、貴族は馬車がゴトゴトゴトゴト……はい、俺たちグランバード家組です。わかったよね?
ようやく俺たちは学園へと向かったわけだが、ここでも紆余曲折があった。
ヘリスにはメイドさんが付くのだが、俺とミューナの使用人として爺やが実家からやって来た。
何故爺やが使用人なのか聞くと『6才にして幼竜と戦闘になるなど、これから先が思いやられますので』と言われてしまった。
他所の家の使用人がこんな発言をしたら大問題だろう。まあそこはグランバード家が特殊なのは認める。俺も使用人さんはこれくらいの距離感が嬉しい。
後は、とうとう出発という時に父さんが一緒に来そうになった。
これに関しても『アルって意外と抜けてるとこあるしあまり運が良い方じゃないし……』と当事者は供述している。
俺が悪いの?ねぇ。
……そんな事があって、既に3時間は心身ともに療養中。
なんて事は無い!
今の俺はそんな些細な事なんて気にならない理由がある!
それは父さんから貰った『TUE』!……じゃなくて杖だ!
杖、それは魔法使いが魔力を操作する時に媒体となる事によって、魔法構築・魔力操作、等の補助をしてくれる物だ。
ファンタジー系の物語では有名なそれだが、これまで俺は杖の存在意義に疑問を抱いていた……それは杖が無くても十分満足いくレベルで操作できたからだ。
「では何故今更杖にはしゃいでいるのか?それは俺には想像できなかった、魔力操作の更なる境地があったからだよミューナ君!」
「おおー!アルも強くなったのー?」
「フフフ……強くなったのは確かだが……それ以上に根本的な何かが変化した!」
「じゃあもう怪我しないねー♪」
「ぜ、善処します……」
「そこで確約してくれると安心できるのですが……」
ヘリスとミューナには悪いが、さすがにそこまで人生イージーモードなんて事は無いだろう。これまでは全てイージーモードのチュートリアル。それぐらいの気持ちでやらないと駄目だ。
何しろ、ラスボスがいるのは分かっているけど正体さえ知らないんだから。
「それで、杖の使い心地は如何でしょうか?」
「想像以上だな」
爺やの質問に言葉少なに答え、俺は杖の先に意識を集中させる。
「やっぱり何も見えなーい」
「残念ながら私も魔力眼は持っていませんね……」
二人の言う通り一見何も起きていないように見えるが、これを魔力眼で見てみると、俺の身体から放出された純粋な魔力が杖の先に集まっているのが分かる。
それをちょっと杖で操作するだけで……
スライム、幼竜、ゴブリン、オーガ、ゴブリンキング……等々、魔力を自在に形作る事ができる。
「何度も言いますが、アルが魔力のステータスがレベルと比べると異常に高いだけで本来、杖はそこまで効果のあるものではありませんからね?他の人に同じレベルを要求しないで下さいね?」
ヘリスに本気で心配されてしまっているが、俺は聞き分けの無い子供ではない。リアルな話をすると、俺の精神年齢は単純計算で22歳。成人男性だ。
まあ、16歳が0~6歳までの経験をもう一度したからと言って、22歳の精神を獲得できるとは思えないし、最悪、身体や生活に精神が引っ張られて16歳以下の精神かもしれない。
とりあえず杖最強説。ただし魔力のステータスが高い俺みたいなやつがより顕著に効果が現れる。って感じだな。
「そういえば杖……っていうかこういう便利装備で思い出したけどヘリスが造った銃と刀、幼竜討伐と変異種殲滅では使っていない効果があったな」
たしか刀は斬撃を飛ばすのと相手を斬れば魔力回復、銃は状態異常付与だっけ?うん、鑑定眼で確認したが正解のようだ。
刀……は斬撃を飛ばすのは却下。この馬車じゃ止めないと外に出れないし、中でやったら大惨事だ。
後は魔力が刀の中に入っているはずだが……あっ少しだけあった。そういえば刀で止め刺した奴あんまりいないし、幼竜も体力があるというより防御力が高かっただけだっけ。
後は銃の状態異常付与。たしかヘリス謹製コートには状態異常無効がついていたな。
「えい」
パスッ
最低まで威力を落として撃ったからか、空気が抜けるような音がした。そして結果はと言うと、コートが銃の攻撃を完全に無効化した。
「あ、危ない事しないで下さい!」
「おわっ!?」
ずいっと俺の目の前にヘリスの顔が迫ってくる。ただ、怒っているので目が綺麗だなぁとか頬っぺたプニプニしてそうとか髪の毛から良い匂いがとかは、考えてはいけないのだろう。
「話を聞いてますか!!」
「可愛い……」
「っ……!むーーーっ!!」
ついうっかり声に出てしまった!だが、ヘリスはどうやら恥ずかしさと怒りで顔が真っ赤になったままフリーズしてしまった。
どうやら人に褒められるのは慣れていないようだ。
「ていっ!」
「え!?ってミューナ!」
ヘリスの頬をつつこうとすると、いきなりミューナに銃を取り上げられた!!
「危ない物はぼっしゅー!」
「それは……いや、待てよ?」
この時、俺の脳内である疑問が生まれた。ミューナは俺の半身的存在。なら、俺と製作者のヘリスしか使えないこの武器もミューナなら使えるんじゃないのか?と。
「ミューナ、その銃でこの小窓から外に撃ってくれないか?」
「んー?わかった!」
さすがに刀を振り回せるほどではないが、この馬車にも小窓はついている。さすがに外も見えない状態で長旅とか精神的に無理だし。
「ミューナ、ここに銃を構えて……よし、反動は一切無いからそのまま引き金を」
「にゃっ!」
バシューー……ン
「撃つのはやっ!って、成功か……」
これで本当にミューナが俺の半身的存在だと言うことが証明された。
結論としてはその程度の事だ。だが、この事実は決して軽視して良いものでは無いのも事実だろう。
「とりあえずミューナ、その銃は持っといて」
「アル、ありがと!」
魔法が使える俺より、現状近接攻撃しかないミューナの方が持っていた方が良いだろう。
「そうですね……ではアイテムポーチの中に入れておきましょうかミューナ様」
「うにゃっ!」
銃を貰ってご機嫌のミューナは爺やに渡された小さめの魔力ポーチにその銃をしまう。あまり高級な物では無さそうなのでそこまで容量は大きく無いだろうが、ミューナの私物を入れるには丁度良いだろう。
ミューナは自分の腰につけたポーチの中から早速銃を取り出して眺めている。普通の銃と違って、撃とうと思わなければ引き金を引いても弾は出ないし、ミューナが持っていても安全だろう。
「ミューナ、一般人に銃を撃ってはいけませんよ?」
「りょうかいだー!」
いつの間にか復活していたヘリスの忠告にも元気よく答えるミューナ。
心配性のヘリスと、今はとにかく元気の良いミューナの姿を見ていると、馬車がゆっくりと止まった。
「到着致しました」
そういって御者用の窓から顔を出したのはメイドさんだ。
「わかりました。ではアル様、ヘリス様、ミューナ様。準備は宜しいですか?」
馬車から先に降りた爺やが、手を貸してくれる。見栄えを重視しているので、どうしても子供にはキツい段差だ。
「ありがとございます」
「とぉー!」
ヘリスはどこぞの貴族令嬢のような御淑やかさで、ミューナはダイナミックにジャンプで馬車から飛び降りた。
「これが……」
無事に二人が降りたのを見届け、学園に目を向けた俺が最初に出した言葉は、ため息に近いものだった。
「おっきーねー」
「ここが私たちの通う学園ですか……」
土地面積・でかすぎて距離感がおかしくなるくらい。
建物の大きさ・絶対に遭難した生徒はいる。
結果・俺の方向感覚だと遭難必至だろ!
「何これ?俺たちこれからここに通うの?」
「左様にございます」
「豪華ですね……」
「探検行きたい!」
「ミューナ、それはシャレにならない」
一応、遭難して死んだ生徒がいて問題にならないはずがないので、そういうのが起きないようにはなっているのだろう。
「ぼっちゃま、早いうちに受付で用事を済ませましょう、少々時間がかかりますので……」
「では、その間に私は馬車を厩舎に連れていきます」
「分かった。たしかにやることは色々あるしな」
自分の部屋やらクラスやらとなると時間は足りない。後できるなら今日中にリオにも会っておきたいし、それならエリシア姉さんにヘリスを頼みたいし……やることが多すぎるっ!
「ってここ?」
「左様にございます」
意外にも受付は校門(実際には城門?って感じだが)の近くにある普通の建物だった。
爺やがそのまま入って行くので、俺たち3人も後に続く。
「これは……ギルドカウンターみたいだな」
「この形態が書類仕事の効率が良いのでしょう」
ヘリスの言い分は分かるが、実際どうなんだ?似てるって言っても実際の所、素人の俺にはカウンターの雰囲気が似てる事しか分からないんだが……。
ただ、こっちの方が清潔さを感じる。まあギルドは冒険者相手、こっちは学園に足を運ぶ理由がある人なんだし、そこら辺を学園は徹底しているんだろうけど。
なんて考えてたら爺やが受付の女性に話かけた!ちょっと早いよ!
「こんにちは。今回は当学園にどのようなご用でいらっしゃいましたか?」
「こちら、グランバード家当主による書状でございます。話は通っていると思いますが」
「承ります……はい、確認しました。たしかに今日、学園長への面会の予定が入っておりますね。では、学園長室までお連れします」
え?面会すんの?そんな簡単に面会させられるとは思わなかった……て言うか父さんが言うには話が通っているんだよな?なんでわざわざ会うんだ?
「ヘリス、なんでだと思う?」
「アル、学園の事聞かなかったんですか?」
「誰に?」
「使用人さん方に」
「はっきり言ってノーだな」
「のー、ですか?聞いてないって事でいいんですね?」
あら、英語は伝わらないのか?たしかに、何故か魔法名に英語が使われているのは多かったが、日常では少ししか聞かないが……ヘリスの時代にはまだ勇者はあまりいなかったんだろう。ミューナは言わずもがなか。
「(で、ヘリス。どういう事なんだ?)」
「(んー……秘密です)」
「(またかよ……今日の朝もされたよな……ミューナはなんか知ってる?)」
「(ノー!)」
「(うん、分かった……ノーが使いたくて知ってるのに知らないって言ったわけじゃないよな?)」
「(ノー?)」
「(うん、使いたかっただけだな。分かった)」
そんな話をしながら、従業員用の入口から校舎に入り、そのまま螺旋階段をグルグル昇って行き、最上階について少し歩くと超高級そうな扉の前についた。
「では、私はここで」
そのまま受付の女性はもと来た道を帰って行き……。
セキュリティ甘くね?ここが敵陣なら、ラスボスまでに出会った人は非戦闘員の受付さんたちくらいだぞ?
「アルギウス様」
「うん?」
「ここからは、グランバード家の代表としてアルギウス様が学園長殿とお話下さい。なに、6歳の貴族レベルの受け答えができれば十分です」
「わ、分かった」
今の俺は6歳児。ふ、学園長よ。この愛くるしい見た目に惑わされるがいい!
「失礼します。グランバード家4男アルギウス・グランバード、今回の「先ほどから話は聞こえておった。とりあえず、入ってきなさい」あ、はい……」
聞かれてたのか……恥ずかしい!
……頭が恥ずかしさに真っ白になりながらも学園長室への扉を開ける。
「待っていた。ふーむ、他の子は似ておったが、アルギウス君はルイスとあまり似ておらんのぅ」
皆は魔法使い&学園長という人がいたらどのような見た目を想像するだろうか?やっぱり髭の長い髪が白くなるほどのお爺さん?たぶんそうだよね、魔法使いで有名な地球の作品の学園長もそうだったし。
そんな君は不正解の極み!ねえ?今どんな気持ち?ねえねえ。……たぶん俺と同じ気持ちなはずだ!
「教え子の子供がまた私の教え子になる……これがなんとも不思議な感覚で面白いんじゃ。カッカッカ!」
「まさかのロリババア!異世界テンプレありがとうございます!」
「んん?なんじゃ?たしかに儂の見た目を見てびっくりする者はいるが、こんな反応はあまり見ないのぅ……」
そうですが、あまり見ないですか。たぶん数少ないその人たちは転生者だよね。
「アルギウス様、今はグランバード家の代表。あまり取り乱さないで下さい」
「よいよい、子供にそんな小難しい礼儀をやられるのは好きでは無くてなぁ。ほれ、だからこの学園の教育理念もそうなんじゃ」
「その教育理念って実は知らなくて……失礼ですけど教えてもらって良いですか?」
「ふむふむ、アルギウス君はそれが自然な喋り方か、ならそれも良かろう。……後は教育理念だったかの?それは『人の心に貴賤無し。豊かな心は努力から』じゃの」
「へぇ、言い得て妙ですね。人に貴賤無し……は貴族と平民、奴隷があるのであり得ませんが、たしかに人の心は全ての人間が一から育てる物。
豊かな心は努力からも、何かに挑戦し続ける事で人の心も成長しますからね。同じ事を繰り返していても何も変わらない」
「カッカッカ……」
「え?……あっ」
やらかした……。あまりに共感し過ぎて勝手にペラペラ話し過ぎた!
なんか学園長が俯いたし!笑い方が静かだし!
「面白い!」
「すいませ……んぇあ?」
突然学園長がこちらに歩いて来る。
「まさか貴族でそこまで素直に共感するとは!カッカッカ!他の貴族に聞かれたら総スカンを食らうレベルじゃぞ!」
「ち、近い近い!」
気づいたら鼻と鼻がくっつきそうなくらい近づいて来ている!
さすがに絵面的にもヘリスの冷たい目線的にも離れた方が良いって!
改めてよく見ると、サラサラの赤いロングストレートの髪、これまた赤い目に、見た目通りの年齢にしか見えないほど綺麗な肌、服はゴスロリって言うのか?俺のイメージよりは少し落ち着いた感じの服だが……じゃなくて!
「お、おお、つい興奮してしまったわ。これだから年を取るのは……儂の場合、元からじゃがの!」
「そ、そうなんですか……」
「話を戻すか。えーと……入園の件じゃが、教育理念の通り、いくら教え子で今や貴族でもあるルイスの頼みと言えど特別扱いはできん。儂としては個人的に気に入ったし入れてやりたいんじゃが、今の身分じゃと少し影響力が強すぎての……」
やっぱり父さんはここに通ってたのか……じゃあギルドマスターも一緒に通ってたのかな?……じゃなくて、どうするんだよ!!学園生活終了!?何もしてないんですが!?
「まあ、そう慌てるな。やはりそこは若者らしいのぉ。一つだけ、入る方法がある」
「その方法は……?」
「ズバリ、実力を示す事じゃな。普通は勉学の進行度やその他の事情的にも入園式がある月に入るもんじゃが、それが出来ない者も少なからず居るものじゃ。そこで入園試験よりは少し難しいが途中入園ができる制度がある」
やるしかない……けど問題がある。ヘリスはとにかく、ミューナは勉強出来るのか?いや、たぶん出来ない。ミューナには悪いが。
「すいません。一人、まだ勉強を教えた事の無い子もいるんですが……」
「大丈夫じゃ、もともと勉学は学園で教えるものじゃし。勉学でも武力でも、どちらか好きな方を選択すればよい」
「そうですか。ありがとうございます」
「私からも、ありがとうございます。ほら、ミューナも」
「んー?ありがとー!」
当事者のミューナも、ヘリスに言われてしっかりと感謝を述べる。
「ふむふむ、良い返事じゃ。やはり子供は元気が一番じゃなぁ」
そういう事ならミューナは学園長の子供像の理想形だろうな。俺も鼻が高い。
「そういう事なら早速訓練所に行こう。その後も部屋の割り振り等があるからの」
学園長の方がすっかり受かる気満々だ。もしかしてある程度俺たちの実力とか分かってるんだろうか?
「ほれ、ここに乗るのじゃ」
「何ですかこれ?」
学園長に言われて乗ったのは部屋の隅にあった丸められて紙を広げられた物。そこには魔方陣のような物が描かれているが……まさか!?
「これは転移の魔方陣……?自信は無いですが」
「初転移キタ!出来る事ならもうちょっと心の準備してからが良かったけど!」
「アルギウス様、あまり他所ではそのような行動は慎んで下さい……まったく、こういう未知への反応は旦那様そっくりなんですから」
「ほれ、飛ぶぞ」
っと学園長の声でした時には景色が変わっていた。何がおきた?
「転移したのじゃ」
「ここは訓練所の空き倉庫ですな」
「そう言えばなんで爺やはそんなに詳しいの?」
「ルイス様の付き人としてこの学園に来ていましたからな」
「む?もしかしてお主、ジールか!?カッカッカ!老けたのぉ~!」
「学園長殿は相変わらずのようで」
「まあのぉ、それより、そろそろ呼んでいた生徒も来るじゃろう。早く訓練所の用意をせんとのう」
学園長と倉庫から出ると、そこはかなり広いだけの空間にしか見えなかった。床は砂が敷いているようだが、本当にただそれだけ。本当に訓練所って言う目的の為なのだろう。
「学園長、ただ今参りました」
「ふむ、良いタイミングじゃったな」
「どうせ俺たちがいつ来るか知っていたんでしょう?」
訓練所の入口から入って来た人影が3人……ん!?
「カルロス兄さん!?エリシア姉さん!?」
「久しぶりだな。元気にしてたか?」
「アル、感動の再開にお姉ちゃんの胸に飛び込んで来てもバチは当たらないわよ?」
「いや、今は遠慮しとくよ……」
「今は……ね?」
「し、暫く遠慮しとくね!」
まさかの再開……まあ数ヶ月会っていなかっただけなんだけど。
「3人を呼んだのは他でもない。この子たちの入園試験のために呼んだんじゃ。グランバード子爵からできれば武力を中心に見てやってくれと言われてるでの。
顔を知らん者もいるじゃろうし、一応自己紹介をしてもらおうか」
「では私から」
そう言って前に出たのは凄い美人な人。カルロス兄さんと同い年か?
金髪のグルグルロール……名前が出てこないが、この髪型をリアルで見たのは初めてだな。
「学園では生徒会会長をしています、シルディア・M・レルガンと申します。何か分からない事があれば何でもご質問下さいね?」
「次は俺だな、生徒会副会長をしているカルロス・グランバードと申します。以後、お見知りおきを……なんつって」
「もう、カルロス兄さんったら……エリシア・グランバードよ。生徒会執行部に務めているわ。そっちの二人はこれからもよろしくね?」
ん~……カルロス兄さんは初めて会った時のイメージが強すぎて、今だに大人びた雰囲気をしているのにビックリだ。
エリシア姉さんはこんな無愛想な喋り方だけど、とても優しくて、ちょっと可愛い人形なんかが好きなのだ。今もミューナを見て手がワキワキしている。
最後にシルディアさん……良い人そうだね!美人!胸がデカイ!
いや、本当にヘリスに勝るとも劣らないレベルで美人なんですが。
「次は俺から……アルギウス・グランバード。この試験、兄さんには勝ちたいね!」
「なんで俺だけ!?」
「私は……ヘリスと言います。今回の試験、宜しくお願いいたします」
「ヘリス、ちゃんと家名も言っておきなさい」
「は、はい!ヘリス・グランバードです!宜しくお願いいたしましゅっ!」
「……噛んだわね」
「あぅ……」
姉さんはやっぱり良い人だ。まあ、いきなり家族が増えても、平静でいるのはちょっと心配なんだけど……。
「ミューナだよ!ミューナが一番強いから全員やっつけるもん!」
「ふふ、元気が良いですね」
「よし、一通り自己紹介も終わった所で早速試験を始めるかの」
学園長がそう言うと、訓練所内の空気が変わった……気がした。
慌てて魔力眼で見てみると、俺たちを中心に結界のような物が出来上がっている。いったいいつの間に!?……今学園長が作りあげたんだろう。ヤバい。
「まず一試合目は「はい!ミューナ行きたい!」ではミューナ君対カルロス君で行くとするかのぉ」
「小さい子と戦うのは気が進まないが……話は聞いてるし、手加減したらこっちがやられかねんな」
「よーし、行っくよー!」
「試合は儂が審判をしよう。武器に関しては自分の獲物を使うがよいし、魔法も全然大丈夫じゃ。当てても肉体的損壊は出ないようになっておるからの。では他の者は下がって……では試合開始じゃ」
何十歩も下がった所で試合が始まったが、両者動かない。ミューナは俺が渡した大剣を握っており、カルロス兄さんは少し刃が大きい普通の長剣。
接近戦になりすぎるとミューナが不利だが、逆に遠すぎればカルロス兄さんは魔法を放ってくるだろう。
「ていっ!」
先に動いたのはやはりミューナ。その場から消えたかのようなスピードでカルロス兄さんに接近する。
「っ!はやいな!」
バキッ!
そんな音と共にミューナが振り下ろした大剣によって地面が少し割れる。
だが、当然のようにカルロス兄さんは避けていく。
「これは本気で戦わないと正直キツいかね……!?」
「せいっ!」
ブウォンッ!
「砂っ!?」
ミューナが慣性の法則を無視したような動きで大剣を斬り上げるのをカルロス兄さんは後ろにジャンプをして避けるが、大剣と一緒に巻き上げられた砂がカルロス飛んできて、咄嗟にカルロス兄さんは顔を手で覆った。
「にゅあっ!」
グワァァァンッ!
「うおぉぉっ!?」
ミューナが上に上がった大剣をそのままゴルフの打ち方のように一回転、斜め下からもう一度カルロス兄さんを斬りつけると、剣でガードしたカルロス兄さんがぶっ飛んでいく!
これはこのまま勝てるんじゃないか?なんて思ってしまうのも仕方がない。
「ってて……」
「うみゃぁ……大丈夫?」
「こんな小さな女の子にボコボコにされるのは予想以上に凹むな……そろそろ終わらせないと、カッコ悪いしな。あんまり本気出さずに終われると嬉しかったんだけどなぁ」
カルロス兄さんが何やらブツブツ言っているが、全然聞き取れない。
女の子、ボコボコ、カッコ悪い、……嬉しい?……カルロス兄さんヤベェんじゃねえの?学園って結構ヤバい所なのかなぁ……。
「来い、ミューナ。ちょっと優しいカルロスお兄様が格好いい所見せてやる」
「分かった!行くよー……うりゃ!」
「属性付与!」
ミューナの大剣とカルロス兄さんの剣がぶつかる瞬間、確かに聞こえた。
『擬似聖剣化』と……。
「はあっ!」
「とりゃー!」
ギィィィィーー……ン
「うお!眩し!?」
「きゃっ!?」
あまりの光に真っ白に塗り潰された視界が、段々と色を取り戻し始めて見えてきたのは
「ふぅ、勝てて良かった」
「うにゃー……」
涼しい顔のカルロス兄さんと、気絶して倒れたミューナの姿だった。
学園長と生徒会会長はヒロイン予定はありませぬ!
少なくとも生徒会会長は無いです。
……あ、だからと言って受付の人もヒロインでは無いよ?




