ちょっとしたサプライズ
最終更新日を見て背中が冷えました。
月日が経つのは早い……。
「この問題、そのままテストに出しまーす……いや、これじゃあ簡単過ぎるかな?……やっぱりこの問題の次にある発展問題を少し変えて出しまーす」
「「えぇ………」」
今喋っている男性は数学の教師――姓は倉塚だったか。その倉塚の曖昧なテスト範囲のヒントにクラス全員が思わず声を漏らす。
まぁ実際に言った範囲はちゃんとテストに出してくれるし、他の科目の教師よりヒントをくれるから生徒からの好感度は低くない。
キーンコーンカーンコーン
「はい、次の授業からは新しい範囲に入りまーす」
そう言って先生が出ていくとすぐに教室が騒がしくなり、我先にと教室を出ていく者も何人かいた。
丁度今の授業が4限目だったからだろう。
カバンから弁当を取りだしながらそんな日常風景に何故か感慨深さを感じていると、突如視界が暗闇に覆われる。
「この手は……楓か?」
「ピンポーン、大正解よ」
その声とともに、視界を覆う手が離れていく。
その手を目で追って、後ろを振り返ると二人が後ろに立っていた。
いつもと変わらない風景。
「腹へった、大城も楓もさっさと飯食おーぜ」
と言ったところで、二人が今にも笑いだすのを堪えているのに気づく。
「楓の手、どうだった?」
「いや、真っ暗でよく見えなかったけど……綺麗な手だったんじゃないか?」
「よせや、照れるぜ」
「何でお前が照れてんの!?」
俺が楓の手を綺麗と言ったら、大城が喜んだ……何だ?こいつら付き合ってんの?
……と言うのは冗談にして、今の反応からするに
「大城の手か……!?」
「そ、んで楓が真の声に答えた」
「真ってば、どや顔で答えるから危うく声を出して笑うところだったじゃない」
二人の悪戯にまんまと引っかかった自分に、思わずため息がこぼれる。
元凶の二人はこちらに勝ち誇った笑みを向けながら、近くから引っ張ってきた椅子に着く。
当たり前の日常、後3年は続く風景。
「大城と楓には今度お返しをしないとなぁ?」
「え、遠慮しとくぜ」
「変な事しないでよ……?」
誰ともなしに笑いだす。
ただの友情、と呼ぶにはあまりにも深い関係。
大城とおかずを巡った攻防戦を繰り広げ、それに呆れた楓が女子が食べるには些か大きな自分の弁当箱から俺と大城におかずをくれる。
野菜を押しつけあう攻防戦が始まれば楓が『栄養が偏る』と怒りだす。
そしていつも最後は3人で笑っている。
いつもの1日、幸せな日常。
―――
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―――――――――。
「まだ日が昇り始めたばかりか……どんだけ学園楽しみなんだよ俺」
さっきの夢。俺はあの頃に戻りたいんだろうか?
……多分、それはない。
この世界でアルギウス・グランバードとして生きてきた中で、大切な人ができた。守りたい存在。
前世での唯一の心残りは両親くらいだが、とうの昔――まだハイハイもできないくらいの時に割りきった。
なら、何故あんな夢を見たのか……それは多分、分からないままなんだろう。
「あー、こんな重い気持ちじゃあ学園で友達なんかできないぞ俺」
意識を切り替える為と、ついでに眠気覚ましも兼ねて頬を叩こうとして――気づく。
「身体が動かない……それに熱い!」
これが所謂金縛り?この世界だと呪いとかで実際にありそうだから怖いなー。と考えているところで、金縛りの正体が目には入る。
「おーい、ミューナー……まだ起きるには早いし寝かしておくか?」
そっとミューナから離れようとするが、今日は一段と拘束が強い。そのせいで、スライムの特性で冷たいはずのミューナとくっついていても、俺から発せられる熱がこもって熱い。
「ふう、漸く抜け出せた……うわっ、汗だくじゃん」
ミューナは汗をかかないし、ヘリスは少し離れた所で寝ていたから、純度100%俺の汗だなこりゃ。
「汗、流すか」
てなわけで今、俺はパンツ一丁で井戸の前にいる。風呂に入ろうかとも思ったけど、用意する手間とまだ文明が未発達のこの世界では風呂一回で結構金がかかるのを考慮した結果、こっちに来た。
貧乏性の貴族というのもなかなか奇天烈だな。没落貴族にはある話か?
井戸での水浴びは特に何も無く終わった。
ただ、井戸水が予想以上に冷たかったから、一気に浴びたせいで危うく悲鳴をあげそうになった事か。
叫ばなかったからノーカンだ!
流石に井戸でそんな事をしていたら、日も昇ってきたようで空には燦々と朝日が輝きはじめている。
食堂に行く前に部屋によると、ヘリスとミューナがプリプリと二人揃って怒っていた。
「「むぅー……」」
「いや、悪かったって。ただ汗を流しに行っただけだから」
たしかに、昨日の今日でまたいなくなったら心配されるわな。
後、数日は早朝に部屋を離れられないな……。
今日は見送りに父さんが来てくれるようで、朝食も父さんと一緒にとっていた。
「アル、ヘリス、ミューナ。朝食を食べて少ししたら出発だけど、何も忘れ物は無いね?」
「流石にあれだけ持っていかされたら足りない物はないでしょ……まぁ、ありがとう」
「まだ数日しか経っていませんが、私やミューナにもまるで家族のように接してくれてありがとうございます……お父様」
「おとーさーん!グッジョーブッ!」
「なんて良い子達なんだ……この子達の親は誰だ!僕だよ!」
父さんは感極まった顔をして後ろ向いてしまった。まぁ、今回はヘリスが主犯だな。
……そしてミューナはどこでそんな言葉覚えるんだ?召喚した時にでも俺の記憶で学んだのか?この世界には無い英語だし。
「あー、恥ずかしいところをみせたね。忘れ物は無いようだし、3人とも食べ終わったら応接室に来てくれ」
学園の話か?もっと前に日に言ってくれれば良かったのに。
「……そういえば父さんって、ほとんど仕事に行ってたっけ。会社勤めご苦労様です」
「そう言ってくれると僕としても頑張っている甲斐があるねぇ」
成人男性が照れるのは気持ち悪いはずだが、父さんがすると絵になる。
……なるほど、これが世にいう『ただしイケメンに限る』ってやつか。
想像以上の効果だな。地球でもそれで罪を免れたイケメンどもがいそうだが……ぎるてぃ!
「ごちそうさまでした」
「ちょうど朝食も食べ終わったし、一緒に応接室に行こうか」
応接室がどこにあるか知らなかったから父さんが案内してくれるのは助かる。
父さんの後を追って部屋を出たけど、無言であるのかは辛いし……あ、話す事あるじゃん!
「応接室で話すって、学園の事?」
「まぁ、学園の事ではあるね」
なんか父さんにしては歯切れが悪いような?
「なんか不安なんだけど……」
「アル様、悪い報せならお父様が隠すはずありませんよ?」
「あ、そうそう……」
ヘリスが喋り終えると同時、父さんが立ち止まってヘリスの方を向く。……ヘリスに用事?
「ヘリス、君はアルを敬称で呼んでいるようだけど、これからは呼び捨てにしてほしいんだ」
「呼び捨て……ですか?」
「そう、周りには、ヘリスはグランバード家においてアルや他の子たちとは血の繋がった実の兄弟姉妹となるわけだ。姉が弟に敬称というのも中々おかしな話だと思わないかい?」
そういえば昨日、メイドさんがそんな事を言っていた気がする。
でも、たしかにそうだ。あくまで"血の繋がった"関係として公表する以上、不自然な点は過剰なくらい注意すべきだろう。
一見、バレなさそうだから軽い話に見えたが、バレた時のデメリットはかなりデカイだろう。
悪い言い方をすれば、王様や国の重鎮たちを騙しているわけなのだから。
「そうですね……わかりました。ア……アル。これで、良いですかね……?」
「滅茶苦茶固いけど、まぁ直ぐに慣れるだろうから大丈夫だって」
「ミューナも言うの~?」
先程から、話についてこれてなさそうだったミューナが、やっと自分にも分かる話になったのだろう。と思ったのか、すかさず話に入ってきた。
……まぁ、この様子ではまだ分かっていないようだ。
「ミューナはもともと呼び捨てだっただろ?」
「僕も父親としてじゃなく、この家の主として言わしてもらうと、ミューナは学園では従者として行ってもらうのだから、できればアルやヘリスの事は敬称で呼んでもらいたいんだけどね……」
「けーしょー?よびすてー?難しい!」
「んー、学園にはミューナも従者兼生徒として入れようか。そうすれば勉強中という事で素行には目を瞑ってもらえるし、ミューナ自身も学園で学んでもらえるだろう。まさに『一矢にて二兎捕らえん』ってね」
「ん?」
なんだその似非ことわざは?もしかしてまた他の転生者達か?
「それなら『一石二鳥』とかじゃないの?ことわざじゃないけど」
「ふむ……『一石二鳥』とは、随分とアルの元の世界の人達は強かったんだねぇ。僕も自分に奢らず精進しないと」
「少なくともこの世界の住人よりは弱いよ!?」
たしかに地球人が『一石二鳥』を実際にしようと思ったら、それはもう1個の事で2個得するなんてレベルじゃないよな。
奇跡と書いて『一石二鳥』……字のイメージと全然合わないな。
「えーと、そんな事は正直どうでもよくて……。そんな急にミューナを学園に入れる事ってできるの?って話が本題だった」
「僕としては興味深かったんだけどね。ミューナに関してだけど、今さら一人増えても構わないと思うよ」
父さんはさも当然のように言って、そのまま歩きだしていく。
「ってちょっと待った!そんなアバウトな学園信頼できないでしょ!?」
「やっぱりそう思うよね……。学園に行ったら分かる。今はこれだけかな、言える事は」
「嫌な予感しかしねぇ……」
この6年で学んだ。父さんがこういうはぐらかし方をする時は大抵面倒臭い事を隠している。本人はサプライズのつもりのようで、悪気が無いのが余計にたちが悪い。
「よかったですね、ミューナ」
「べんきょー?アルとヘリスも一緒なの?」
父さんの事を知らない二人は後ろで楽しそうにはしゃいでいる。
「そんな話をしてる内に着いたし……」
父さんと話ながら(後半は追いかけながらだが)歩いていたけど、どうやら応接室に着いたようだった。
扉がやたら豪華だし、本来の目的を考えればこれであっているはずだ。
「それじゃあ入るけど、中で少し待っててもらえるかな?」
「え?話するだけじゃないの?」
「それも含めて秘密だよ」
ここに来て予想が外れたか……。
「あ!……いえ、なんでもありません」
「どうした?」
いきなりヘリスが声を上げたから反射的に質問してしまったが、俺には分かる。父さんの言った謎が解けたんだろう。
数日しか一緒にいなくて、しかも6歳までボッチでスライムを狩り続けた俺にでも分かるんだ。ヘリスは嘘をつくのが良くも悪くも壊滅的に下手だという事も分かった。
「教えては……くれないよな」
「なんの事ですか?」
しかも完全にはぐらかせたと思っているのか、俺が別の話をしていると思ったらしい。
……本当にどうしようこの子。危なすぎて一人で外に出せない。
「とりあえず座って待っててね。直ぐに戻るから」
応接室にあるソファに促されるままに座ると、父さんはそのまま部屋を出て行ってしまった。
「ミューナも学園で勉強するのか。でもそうなるとクラスは違うのかな?」
「え~、一緒が良いー!」
「外見年齢は殆ど同じですから……ミューナが特待生として入れるかどうかではないでしょうか?」
特待生というものが果たしてそう簡単になれる物かは知らないが、ミューナがいきなり特待生になっても勉強に追い付けないと思う。
俺は地理や歴史何かは平均……未満だが、数学となると同学年トップは狙える自信がある。というか取れないと困る。
転生者何だから地理や歴史くらい分かるだろ!と言われそうだが、カルロス兄さん、クライン兄さん、イルシア姉さんは、しっかりと学園に入る前に勉強していたらしい。
対象的に、ガロム兄さんは『俺は最強の戦士になる!』と毎日毎日、木剣を振り回していたので学力はそこそこだった。ただ、今は学力なんかも強さに必要だと気づいたらしく、普通に成績は良い――と本人から聞いた。
俺もガロム兄さんと同じようなものだ。ずっと神(仮)と戦う事ばかり考えていたが、そのための訓練も楽しかったのと、地球にいたときに勉強は散々やらされたので今さら勉強をする気になれなかった。
「そう思うと、ガロム兄さんの話もしっかり聞いておけば良かったな」
ヘリスとミューナはガロム兄さん、というか兄弟全員に会った事がないので、二人ともキョトンとした顔をしている。学園に行ったら二人にも兄弟を紹介したいところだ。
……と言っても、兄さんたちや姉さんの性格上ヘリスやミューナの事は放っておかないだろう。 まぁ、全員良い人ばかりだし、普通に家族として受け入れてくれると思う。
「待ったかい?少し話が長引いてしまってね」
ヘリスたちにガロム兄さんの話をしようとしたところで父さんが扉を開けて入ってくる。
というか、殆ど時間はたっていないと思いますけどねぇ……
「さ、どうぞ、遠慮しないで入って下さい」
「は、はい!失礼します……」
父さんの後ろから、恐々と応接室に入ってくる男。少し痩せているが、体つきはしっかりとしているので、何か力仕事をしていると推測できる。ただ、いかんせん顔がザ・平民というか、あまり特徴がなく覇気がないので直ぐに忘れてしまいそうな顔だ。
「えーと、そちらの方は……?」
まさか、誰か来るとは思わなかった。しかも平民のような人が名誉子爵に招かれてなんて。
「ああ、こちらの方はリンド商会の従業員でね。今回は依頼した物を届けに来てもらったんだ」
「へぇ、お初にお目にかかります。まぁ、従業員と言ってもまだ使いっぱしりですがね。……グランバード家のご子息様方はどなたもお美しいですなぁ」
リンド商会……この国では有名なのかな?だとしたら後で調べないとなぁ。
「アルさ……アル。トルトスから王都までの道のりで乗せていただいた、ベルドさんの所属している商会ですよ」
ん……ああ!ベルドさんか。王都での内容が濃すぎてすっかり忘れていた。
「リンド商会の商人にアルがお世話になったらしいからね。少し話していたんだ」
「と言っても、あっしは殆ど何も知らないんで、たいした事は話せませんでしたよ」
父さんの情報網が謎なのはこの際貴族だからで置いとこう。
「あの……」
遠慮がちにヘリスが声を上げる。ヘリスの目線を追うと、なるほど、父さんに質問があるらしい。
「どうしたんだい?ヘリス」
「こんな事を言うのはそちらの方に失礼だと思いますが……仮にも貴族の屋敷に来るのなら幹部以上の方等ではないのですか?」
一瞬、従業員さんが気を悪くしないか肝が冷えたが、どうやらヘリスは不満ではなく純粋に知的好奇心から聞いたようだ。
ヘリスのいた時代は……というかヘリスは王宮にいたのだから、そりゃ商人も一番偉い人が来たんだろうな。
「今回は急な依頼だったからね。代表の方々の都合がつかなかっただけさ」
「申し訳ありませんねぇ、こんな貧相な者で」
そう言って男は自分の発言がよほどツボに入ったのか、声を殺して笑いだす。
自虐的過ぎだろ!
それよりも、このままじゃ話が進まないな。さっさと本題に入ろう。
「で、今回来てもらった理由を聞いても?」
「ああ、今回はアルの入園祝いを依頼していたんだ。アルのはオーダーメイドでお願いしたんだけど、ヘリスとミューナは急だからね、二人には申し訳ないが既製品で我慢してもらえるかな?オーダーメイドが出来上がったら学園に送るから」
「い、いえ!私たちはこれで充分です!」
父さんってば、早速ヘリスとミューナにも親バカを発揮し始めた。
父さんがチョロ過ぎてめっちゃ心配。
「ええっと……話を進めさせて頂いてもよろしいですかい?」
「ああ、よろしく頼むよ」
「従業員さんマジGJ!」
この面子、というか父さんとグランバード家の誰かが揃うといつもこうなる。主に父さんが暴走してだが。
「まずは既製品の物品ですが……レルガン王国版の教科書ですね」
「はい、質問。教科書って学園で配布されるんじゃないの?
というか、何で学園の教科書をわざわざリンド商会から買うの?
「わざわざ学園ひとつひとつに造本技術を保有するのはかなりコストがかかるんだ。
それに、例えばだけど学園が自国を敵視するような教育をされたら国が甚大な被害を被る事になる。だから、国が自国の学園に出資し、教科書等の学園専用の道具なんかの販売に国一番の商会を噛ませる。商会はその見返りに学園に出資……どこの国もそんな物だよ」
実際はもっと複雑な仕組みなんだろうけど、父さんが噛み砕いて説明してくれたおかげで分かりやすかった。
「と言うことは、複数の国からなる学園等は成立しないのでしょうか?」
「たしかにヘリスの言うとおりだな。俺も少し興味があるかも」
「うぅ~ん?」
ミューナが知恵熱でも起こすんじゃないかってくらい考えこんでいる。
いきなりこんな話は理解出来ないだろうが、これだけ学習意欲があるなら将来が楽しみだ。
「あまりそういうのは無いけれど最近、レルガン王国と近隣諸国でそういう話があるみたいだよ?」
「……本当ですかい!?」
父さんの話に、リンド商会の従業員さんがものすごい勢いで食いついてきた。たしかに、商会にとってこの話がどれだけの価値を持つかは無知な俺でも分かる。
「父さんってば、こればらしても大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。寧ろ、我が国としても自国の商会に噛んでもらえれば大きなメリットになるしね……といってもまだ発案段階だけどね」
「いえいえ、貴重な情報ありがとうございやす!」
めちゃくちゃ喜んでいるけど、もしかしたらこの情報でこの人昇格出来たりするんだろうか?だとしたら頑張ってほしい。悪いことはして欲しくないけど。
「と、とりあえず教科書ですね……っしょと、不備等は全て確認させて頂きましたんで、使用人に確認させる必要はねーかと思いやす」
使用人はアイテムポーチ……にしては大きいからアイテムバッグ?から教科書の山を2つ取り出す。あ、そういえばミューナの分はどうするんだ?
「君、すまないがもう1セット教科書を頼んでも良いかい?この子も学園に通うことになってね。初等部のを頼むよ」
「へい、そう言うことなら不備があった場合の予備として持ってきているのでどうぞ……しょと」
意外と簡単に問題はクリアしたけど……一山だけ種類が違うような?
「もしかして、私はアル様と違う学年で入るのですか!?」
「まあ、君の年齢的にもそうせざるをえないだろう。それに、お互いに違う事を勉強するんだ、効率が良くなるだろう?」
まあ、これは仕方ないだろう。ヘリスに群がるであろう悪い虫はエリシア姉さんに任せたいところだ。後、ヘリス。また名前が様付けになってる。
「はい、次行こ次~。何時になったら学園に行けるんだよこれ……」
「うぅ……」
「ヘリス、大丈夫かー?」
「大丈夫ですよ……心配なのはアル様です。悪い人に引っ掛からなければ良いのですが……ミューナ、アル様を守って下さいね!!」
「任されたー!でも、アル強いよ~?」
いじけたヘリスがミューナに何やら吹き込んでいるが、今はいいや。
「次はそちらのお嬢様が使われる杖ですね。属性の偏りが殆ど無い万能的な品です。そしてこちらがもう一方のお嬢様が使われる超大型の大剣……本当ですか?」
杖がヘリス、大剣はミューナの物のようだ。
「ヘリスは魔法が得意だから良いとして、ミューナはそこまでデカイ大剣だと使いにくいんじゃない?」
「いや、そこはアルよりも戦闘経験豊富な父さんを信じてくれ。ミューナはこれくらい大きい大剣の方が使いやすいはずだ」
「へぇ~」
「そして、オーダーメイド品ですが、アルギウス様用の杖です」
従業員さんから渡された杖を見てみると、木製のようだが、剣で言う柄のような部分に透明な水晶のようなものが嵌め込まれている。見ているとなんだか吸い込まれそうな錯覚に陥る。
「キレイだなぁ……これは何の石なの?」
「それは魔石だね。かなり高度な技術を使って複数の魔石を合成させた物さ。これならアルの大きな魔力にも耐えられるだろう。その分、杖の機能は平均的になってしまったけど……」
「いや、ありがとう。この魔石、父さんが作ったんだよね?」
魔力眼で石を見ると、まだ父さんの魔力が少し残っていた。父さんの魔力が入ってまだあまり日が経っていない証拠で、この日の為に急いでやってくれたんだろう。
「さすがだね、アル。魔力が見えるのか」
ここまでしてくれたんだ。やっぱり言うことがあるだろう。
「……ありがとう、父さん」
「……」
また男泣きされるのかと思ったけど、返ってきたのは優しい、微笑みだった。
「……」
今日見た夢を思い出して、こっちが泣きそうになる。これがボクシングなら綺麗に顎にカウンターが入った事だろう。
「……はぁー。よし、プレゼント受け取った!感謝した!準備完了!!そろそろ学園行くか!」
それでも全部は我慢出来なかったようで、顔を見られないよう逃げるように部屋を出る。
「玄関どこだっけ?」
もしかして俺は、綺麗に話を締めれない星の元に生まれたのだろうか?
次は学園……着くかな!?
ちょっと安心してください、学園一日目のプロットは書いてますよ!!
(とにかく明るい成金猫)




