↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男流棋士無双 ~貞操逆転将棋界で俺の棒銀が勝利も美少女名人も手に入れる~  作者: アライコウ
第一部 男流棋士デビュー

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/33

4-5 A級棋士より解説できる聞き手

 男流名人戦はまだまだ続くが、あいにくとライバルたちの対策だけで過ごすわけにはいかない。他の仕事もいろいろあるのだ。

 しかし今回の仕事はとても楽しみだし、オファーを光栄に思っていた。


「それでは登場していただきましょう。解説の三笠《みかさ》晶《あきら》九段、聞き手の最上銀河男流初段です!」


 司会に呼ばれて登場すると、たくさんの女性の歓声が俺に押し寄せてきた。


「きゃあああああ!」

「銀河くーん!」

「抱いてー!」


 マイクを持たされた俺は、ひとまず無難に挨拶した。


「えー、どうも。最上です。よろしくお願いします」

「固いわね~。もっとはっちゃけてもいいのよ?」

「三笠先生、勘弁してください」


 そんなやり取りも微笑ましく映るようで、客席の女性たちは笑顔で盛り上がっている。司会の人も興奮気味だ。


「さあ、琉王戦七番勝負第四局の二日目が始まりました! ここまで三連勝の永久玉輝琉王がストレートで防衛なるか。それとも挑戦者の荒木《あらき》愛子《あいこ》八段が一矢報いるか?」


 今回の俺の仕事は、大盤解説会の聞き手というものだ。


 名人《めいじん》、琉王《りゅうおう》、瑛王《えいおう》、桜位《おうい》、桜座《おうざ》、棋星《きせい》、棋桜《きおう》、桜将《おうしょう》――将棋界に八つあるタイトル戦。

 これらのタイトルのうち、玉輝さんがいま「琉王」のタイトル防衛に向けて戦っている。


 玉輝さんは普段は名人とだけ呼ばれているが、実際は六つものタイトルを保持している。つまり永久玉輝六冠だ。

 このうち琉王は、名人に次ぐ歴史を持つ。多くの棋士の憧れとなっている大タイトルなのである。


(すごいよな、玉輝さんは)


 で、タイトル戦は全国各地の有名ホテルや旅館で行われるのだけど、その解説会には現地のファンが多く集まる。中にはわざわざ遠方から駆けつける人もいる。

 そんなありがたい将棋ファンたちのために、大きな将棋盤を使って局面をできるだけわかりやすく解説する。それが求められているわけだ。


 しかし俺は、あくまでも聞き手。解説担当の先輩を立てなければならない。


「局面は今、こうなっています。一目、難解だわね~」


 三笠晶九段は五十代のベテランにして、現A級棋士のひとり。確かな実力者だろうから、普通に対応していればいいとは思う。


「ところで最上くんは、永久琉王の研究会に入っているとか?」

「ええ、幸運にも入れていただきまして」

「そのおかげもあって、先日のデビュー戦も飾れたわけね!」


 将棋の対局はフィジカルスポーツのように激しい動きはないので、手持ち無沙汰にならないよう、大盤解説会ではこうした雑談も大事になる。いじられるのも、今のうちに慣れておかないとな。


 さて、今は先手の玉輝さん――永久琉王の手番だ。

 かなり長考している。はたしてこの先の方針は決まっているのか。それとも……?


「難解な局面ねぇ。私もさっきから見えてないんだけど、最上くんだったらどうする?」

「いや、三笠先生が見えていないのを俺なんかが……」

「そんな遠慮しないで、思い切って言ってごらんなさい! 皆さんも聞きたいでしょ?」


 わーっと、また拍手が巻き起こる。

 男流棋士の発言機会を増やしてあげるのも、先輩の役割ということだろう。

 ならば、遠慮せずに言ってしまおうか。


「……こういう手が、いいと思います」


 俺がその手を示すと、三笠九段は驚愕した。

 それは後輩の俺に見せ場を与えるのではなく、本気の驚愕であるらしかった。


「これじゃ、銀がただで取られるけど……?」

「はい。でもこうして、こうなれば……銀損はしますけど代わりに飛車角が働くようになるので、いいんじゃないかと」


 三笠九段は俺の考えたとおりに、大盤上で駒を動かしていく。


「………………本当に、良さそうねこれ。いや、もうこれしかないかも。琉王はどうするのかしら」


 三笠九段のその言葉を合図にしたかのようだった。


「琉王、指しました!」


 スマホをチェックしている司会の人が、離れた対局場にいる玉輝さんの手を教えてくれる。


 ――指したのは、銀捨て。俺が言ったのと同じだった。


「すっごーい! 大的中よ最上くん!」


 万雷の拍手が客席から届いた。三笠九段は腕組みしながら何度も頷き、感心している。


「いや、私ね、本当に見えてなかったのよ。解説と聞き手、今から交代する?」


 どっと笑いが起こった。さすがにそこまで大それたことはしたくない。

 ともあれ――永久琉王の渾身の一手に、今度は挑戦者の荒木八段が長考に沈んだ。


 そこからは玉輝さんの盤石の駒運びが光った。間違いなくあの手が、勝負の流れを引き寄せたのだ。

 やがて、決着が付いた。三笠九段が感嘆の声を漏らす。


「荒木八段、ここで投了しました……!」


 永久琉王、四連勝で琉王防衛。

 六冠を堅持し、第一人者としての存在感をアピールしてみせたのだった。


「うーん、終わってみれば圧巻の四タテ。さすが永久琉王だったわね」

「はい。本当にすごいです」

「すごいのは最上くんもよ。琉王とまったく同じ、勝利の手を考えていたんだから!」


 男流棋士を侮る棋士も多いらしい中、三笠九段はずいぶん素直に褒めてくれる。

 でも一番に褒めてほしいのは、玉輝さんだった。早く顔を見たくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。