94 懐かしい!(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
ちょっとだけイチャイチャします。
苦手な方は気をつけて下さい。
エドガーとライカンが帰ってきて、少し話を聞いた。
フィオナとその冒険者は、まあ、できてしまってたらしい。
だから、ディーが気にすることは何もないと。
親が気に入っている真面目なタロウスと結婚をすることにはしたが……。
このまま、鍛冶屋のおかみさんとしての人生を考えて、心が揺れていたのだろう。
そんな時に、羽振りのいい冒険者が現れた。
タロウスの客として現れ、タロウスに指示を出すその若い容姿のいい冒険者に……。
フィオナは心ときめいてしまったのだろう。
そして、そのような人に使われる立場のタロウスに幻滅したというか、がっかりしたというか……。
職人なんだから、そういう上下とかの話ではないんだけどね。
でも、フィオナの中では、タロウスはその冒険者よりつまらない人間だという風になってしまったんだろう。
そのタロウスと結婚する……。
フィオナはタロウスを裏切り、その冒険者の元に走ったってところか。
ディーは少しほっとしたようだが、私を見て言った。
「とはいえ、フィオナは幼馴染で、鍛冶屋のおばさんやおじさんが心配しているのはよくわかる。
ミコト、申し訳ないが、また、フィオナを探すのを……、手伝って欲しい」
私は頷いた。
「うん、手伝うよ。
フィオナのお父さんとお母さんに、無事です、幸せにやってるようですよって言えるように、ね」
それぞれの部屋に引き揚げる。
私とエドガーはもちろん同室です。
ここの風呂って、お湯、浴びるだけだったんだよな……。
ちらっと考えてしまった。いや、その、二人部屋だからしなきゃいけないわけではないとかなんというか……。
フィオナの魔力を帯びた小石をハンカチで包んでカバンの中にしまった。
「ディーも辛いな。
いくら、関係ないとはいえ、自分が振った女性が不幸になるというのは……」
「うん、幼馴染だしね。
アサニヤ王国側に渡ったみたいだよ。
だから、ケレスとかカノンでまた魔力を探してみようと思う」
「……ミコトの力、強くなってる?」
「それはあるかも。魔法塔で修業したしね。
それに今回は自分が行ったことのある場所だったから、より見えたみたい。
でも、無事みたいで良かったよ」
「そうだな。それはいい知らせだな」
「うん」
私は頷いて、エドガーに抱き寄せられた。
キスされる。
う……、するの?
「いや?」
私が躊躇したのを感じ取ったのか、エドガーが囁いた。
いや、いやではないけど、その後が……。
風呂は下の階にあるけど……。
ま、なんとかなるか!
私は「嫌じゃない」と囁き返して、エドガーにキスした。
変な感じ……。見慣れない天井を見上げてる。一応、宿のシーツを汚さないように持参したシーツを上に敷きました……。
ここでこんなことしてるなんて……。
早く目覚めた私は、収納から桶を出して水魔法で水を入れ、手を突っ込んで熱魔法でお湯にすると、布を浸して絞り、身体を拭いた。
気持ちいい。
気が付くとベッドからエドガーがこっちを見ていて。
私は恥ずかしくなった。
「うーん、あんまり見ないで」
「いや、きれいだから。
朝日の中で身体を清める乙女って感じだ」
「誰のせいでこうなっていると……」
「俺のせいってのもうれしい」
「……エドガーだけのせいじゃないしね。
私も……、私のせいでもあるわけだし。
エドガーも拭く?
まだ、お湯きれいだから、布渡そうか?」
「ありがとう」
私は笑って新しい布を出してお湯に浸して絞るとエドガーに渡した。
「……拭き合いっこする?」
私は首を振った。
そんなのそれだけじゃ終わらなくなりそう……。
さっぱりして階段を下りようとすると、シアに呼ばれた。
私はシアの部屋に行き、何も言わずに桶を貸してお湯を作った。
「ありがとう……」
「どういたしまして」
そうなんだよ。ライカンとシアは火魔法使えないからね。
ユミエラの所は? と気にするとディーが身支度したいからと桶にお湯を貰ってる声が聞こえた。
みんな……。
朝食を頂いて、私達は一足先に宿舎に戻ることにした。
ユミエラとディーはもう少しだけ、御両親と話をね。
宿舎に行くとコステロがもう宿舎の庭で剣の訓練をしていて、クラークさ、が稽古をつけてるみたいな。
「おお、騎士が来てくれた!
おはよう!」
「「「「おはようございます」」」」
みんなで挨拶して、私はそのままコステロの剣の練習をぼんやり見ていた。
ライカンとエドガーが相手している。
コステロ……、剣先がふらふらするな……。
「もっと重心を下に!」
ライカンの声。
「はい!」
お、剣先がふらつかなくなった。
上半身が安定したのか。
重心か……。
そのうちに使節団のみんなも出てきて、馬車や馬の用意が始まる。
ユミエラとディーも戻って来た。
鍋とか大きな包みとか持ってるし!
「収納するよ! 鍋はお弁当替わり?」
「うん、鍋は煮込みで、こっちの包みがパンに野菜やハムを挟んだものだそうだ」
ディーの言葉に笑っちゃう。
すごい量!!
おばさんとおじさんが張り切って作ってくれたんだろうなってのがわかる!
今回はデュランには寄らずに行く予定だ。
だからこのままケラスを目指す。
途中、あの騎士団の詰所で一泊する。
あはは。なんだか恥ずかしい思い出が……。
ファーストキスの場所だね。
騎士団の詰所に到着。
なんかライカンが歓迎されている。
確かに古巣である。
シアを紹介して、他の騎士さんから手荒い祝福を受けている……。
『この、こんなかわいい奥さんを貰いやがって!! このこの!!』
『いや、成り行きで……』
『成り行きだとー! 俺もそんなこと言ってみてーよ!』
頭の中でアテレコを楽しんでいると、コステロに言われた。
「不気味な微笑みだな」
私はそのままの微笑みをコステロに向けてやった。
おこちゃまの君にはわかるまい。
「ミコト!
散歩しないか!」
「はーい!」
私はエドガーに呼ばれて、そっちへ走っていく。
コステロがなんとなくつまらなそうだ。
確かに一番歳が近いのは私だけど。
なんか突っかかってこられるとそれはそれで、嫌だもんね。
「何、枝拾いするの?」
「何で枝拾い!?」
「うーん、また野営することあるかと」
「まあ、備えあればだな。
拾うか?」
「うん!
魔法の練習にもなるし!」
風魔法で枝を斬ったり、使いやすいサイズにまとめて、収納する。
「もうメモ付けなくても大丈夫なのか?」
「すぐ出す物はね。これはちゃんと書いておく」
私は小さなノートを出して日にちと焚き木と書きつけた。
「テントもあるね」
私がそう言うとテントの方に行って、周囲を見回す。
「ここだ、ここだ!
懐かしー」
そこにコステロが来た。
「いいところに!
ここ、今夜使ってもいいって言われたんだ。焚き木を……」
「あ、拾ってきたよ」
私は今、拾ってきた焚き木を出した。ノートをまた出して、書いたところに線を引いて消しておく。
「あ、ありがとう」
「コステロの属性魔法は?」
「俺は火だ」
「なら、焚火に便利だね」
木を組んで火をつける。
本当に懐かしいな……。
あの時はまだ、恋人になったばかりで……。
キスするだけで溺れそうになってた。
あれ、まだ半年も経っていないのに、もう、あんなことやこんなことまでしちゃってますけど!?
「懐かしいって言ってたけど、ここに泊まったことが?」
コステロにそう言われて油断してた私は思い出しながら話す。
「そう、ここに泊まってさ。
エドガーとの初めてのキスもここだったんだ。
テントの中しか死角がなくてさー。もう押し倒されて!」
「ミコト!?」
焦ったようなエドガーの声に我に返る。
あれ、私、何を口走って……。
コステロを見ると真っ赤になってた。
すまぬ……。少年には刺激が強すぎた……。
読んで下さり、ありがとうございます。




