93 歓迎(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
思ってたより書き進んで、ストックができたので今日はもう一話分投稿します。
「フィオナがマイネを出た?
え? 鍛冶屋は?
タロウスとは!?」
ディーが慌てている。
ソーマは私達を見て「ディーんちに行くんですよね。俺も一緒にいいですか?」と言った。
いいも何も、連れて行きますよ、こんなところで話は終わりにできないっ!
「なんだか悪いな。
ユミエラ、ごめん。
おめでたい話だったのに……」
ソーマが恐縮している。
まあ、ユミエラとディーにしてみれば、これからって時に水を差さされたって感じはするよね。
「それはそれ、これはこれだ。
今はユミエラとディーの結婚のお祝いだ!
ソーマ、いいな」
ライカンが仕切り直すように言ってくれて。
ソーマは口をきゅっと結んで頷き、微笑んだ。
「おじさんにおばさん、喜ぶだろうな!」
そのソーマの言葉通り、おじさんとおばさんは宿の外まで飛び出してきてディーとユミエラを迎えてくれた。
ふふっ、なんだかうれしくて涙が出ちゃう。
シアも涙目だ。
ライカンとエドガーがそんな私達に寄り添って守ってくれる。
ひとしきりユミエラとディーの話が終わった後、おばさんがこちらを見た。
「ライカン様もシアさんと結婚したんですよね!!
おめでたいわー!!」
ライカンが私とエドガーを手で示しながら「ミコトとエドガーも結婚したんだ」と言った。
「「「ええーっ!!」」」
ソーマとおばさんとおじさんが叫んだ。
そんなにびっくりすること!?
宿の中に入り、おじさんおばさんがどんどんご馳走を出してくれる。
共和国の使節団の一部の人が街の視察がてら泊まりにくるぐらいなことしか伝えられてなかったそう。
「いやー、こんなにうれしい日が来るなんてね!」
どっちかというと無口だと思っていたおじさんがすごくうれしそうだ。
私とユミエラとシアはお皿や飲み物などの運ぶのを手伝った。
そして、みんなで乾杯して、食べ始めて、首都の話やユニコーン商会の話などしている時だった。
ドアが開いて、知らないおばさんが立っていた。
「鍛冶屋の……」
ディーが呟いたのが聞こえた。
フィオナって鍛冶屋の娘で、職人と結婚するとかだった……。
ディーのおばさんが立ち上がって、ドアの方へ行く。
「どうしたんだい?」
「ディーが嫁さんを連れて帰ってきたって聞いて……」
ディーとユミエラが立ち上がる。
「違う……、フィオナじゃない……」
鍛冶屋の、フィオナのお母さんであろうおばさんは泣き出して蹲ってしまった。
おばさんはフィオナの母を送って鍛冶屋まで行ってくると出て行った。
ソーマが言った。
「フィオナ、結婚式の前日、ちょうど……二週間前だけど、家出したんだよ。
『やっぱりタロウスとは結婚できない』って書置きがあったとか。
それと、フィオナと同時に姿を消した冒険者がいて、そいつと駆け落ちしたんじゃないかって」
「冒険者?
前からマイネにいた奴?」
ディーの質問に首を振るソーマ。
「いや、どうやらアサニヤの方から流れてきた奴だったみたいだけど。
剣を直すのに鍛冶屋に行って、フィオナと知り合ったらしい。
タロウスが剣を直したとかで、フィオナを交えて何度か話をしたことがあるとかで。
しかも、鍛冶屋以外の所でもそいつとフィオナが会っているのを見た奴もいてさ」
「じゃ、なんで、ユミエラを見てフィオナじゃないなんて……」
「……親心かな。
フィオナがディーのことを好きだという気持ちにおばさんは気づいてたんだろうな。
でも、それは実らなかった。
で、フィオナは堅実な相手としてタロウスを選んで、鍛冶屋を継ぐとまで言ってくれて。
でも、直前で、翻意して、家を飛び出した。
せめて、好きだったディーの所へ行って、結婚してるのではと思いたかったんだろうな」
「そんな……。じゃあフィオナは……」
ソーマは首を振った。
「どこに行ったのか、今、生きているのかすら、わからないよ。
でも、ディーが気に病むことはない。
きちんと初恋は終わらせたんだから。
な、そうだろ?」
「そうだ。
あの時、俺はきちんと伝えた。
フィオナにはタロウスがいると聞いて、おめでとうを伝え、俺もこれから首都に行き、愛している人に結婚を申し込むと言った。あれで、終わりだったはずだ」
「うん、もう関係ないよ。
気にするな」
ソーマはそう言うが……。わかるのだが……。
そう簡単に気持ちは切り替えられないだろう。
私はため息をついた。
おじさんがユミエラとディーの所に来た。
「ユミエラさん、ディーと結婚してくれて本当にありがとう。
私達はうれしいよ。
ディーは私達のことを気に掛けて、自分の気持ちを外に出すのが苦手な子だった。
そのディーが、初めて、自分から、自分の意思を伝えて、ユミエラさんのところに行きたいと言ってくれて……。
妻も私も、これは本物だとね。
これだけは本当だよ。
私も妻も、ユミエラさんを本当に歓迎している」
「ありがとうございます。
私、あの、気の利かないところがありますが、言っていただければきちんと直す素直さだけはあるつもりです!
どうぞ、これからよろしくお願いしますっ!」
そんな感じでお祝いの会食はお開きになり、ライカンとエドガーはソーマと一緒にギルドでフィオナのことを聞いてくると出て行った。
ディーは動かない方がいいからね。
ユミエラとディーの部屋と決められた二人部屋に私とシアは押しかけ、一緒にいた。
いや、ディーはともかく、ユミエラが飛び出して行っちゃうかもしれないし……。
そういう人なんだよ、ユミエラって。
「……そういえば、ミコトって魔力感知できるよね?
フィオナの魔力感知ってできる?」
ユミエラが急に言い出して。
「できると思うけど、近くにいなきゃ無理だよ」
「なんとなく方向とか、わからない?」
「うーん、魔力痕跡ってこと?」
私はフィオナの魔力を思い出そうとする。
うーん、あの狩りの時……。
その時、ディーが「ちょっと待ってて」と部屋を出て行き、戻ってくると手に何か持っている。
「これ、フィオナの魔力が入ってるかも」
受け取るとすべすべした小石で。
確かにじんわりと魔力を感じる。
私は『?』という顔でディーを見た。
「俺が冒険者になりたての頃。
まだ、フィオナは小さくて学校行ってて。
その時にお守りってなんかくれた」
本来は宝石に魔力を込めて作るんだけど、子どもだから、きれいな石を探して拾って作ったんだろう。
私はその小石を右手に握りこんで、精神を集中した。
サライに向かいマイルズ川を渡って、ルーカイへ。
こんなにわかるのは私が行ったことのある場所だからだろう。
その先が怪しくなる……。
シーザー王国の方に近づいている感じはするんだけど。
今も生きているというのはなんとなく感じた。
「サライからマイルズ川を渡ってルーカイへ。
そこからシーザー王国の方に上がっている感じはしたけど……。そこまでだな。
でも、生きてるって感じはしたよ」
私はディーに報告する。
これは私が感じただけのことで、はっきりとしたことじゃない。
ディーなら、不用意に周囲に言わないだろうということがわかっていたから、はっきり伝えた。
「シーザー王国の方に?
そうしたら、もしかして会えるかもしれない?」
私は頷く。
もしかしたらね。
ケレスやカノンあたりでまた捜してみたら、何か反応があるかもしれない。
私は小石を返そうとして躊躇した。
「……私が持っている方がいいかな?」
ディーが頷いた。
「ああ、ミコトに預けていいか?
そして、フィオナに会えたら、返したい……」
「うん、私から返すから、心配しないで」
「……ありがとう」
「ユミエラ、ディーのそばにちゃんといるんだよ」
私の言葉にユミエラが少しだけ目を逸らした。
やっぱり。
ちゃんと見張ってないと、捜しに行っちゃうとこだったか!?
読んで下さり、ありがとうございます。




