90 視察の終わり(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
「アサニヤ王国!?
エレノア王女はシーザー王国になくてはならない方だ!!
僕は……、エレノア王女が王位についたらいいのではとすら……、そう考えたことがあるくらい素晴らしい人なんだ!!」
イサクさんが慌てたように早口でまくし立てた。
シドさんが笑う。
「ああ! 確かに!!
エレノア王女が女王になったら、シーザー王国にとって一番いいかもな」
「エレノア王女って、そんなに素敵な方なんですね。
お会いしてみたいです」
私は呟いた。
「エドガーとミコトさんとシーザー王国に来ればいい」
シドさんが言う。
うん?
エドガーは呼び捨てで、私はさん付け?
エドガーは一応、王子じゃないの?
「そのことで相談がある」
ライカンがやっと話に加わった。
シドさんとイサクさんはお互いに抱えてた物を吐き出すことができた。
シドさんは王妃と大臣の兄妹がエドワード王子の廃嫡を考えたのだが、エラン第3王子を権力から遠ざけるために利用しようと今更ながら捜すということをしていること。
イサクさんからはエドワード王子とエレノア王女がそのことに気づいていて、イサクさんとライザさんのことを気に掛けて守ろうとしてくれていること。
「エドワード王子は……、本当にあの王城で、エレノア王女しか気を許せる方がいないのだと思う」
イサクさんの言葉にシドさんが「お前もいただろ」と言った。
「ほんの……まだ一年も経っていないですし」
「それでもエドワード王子にしてみれば、初めての同世代の友達だよ。きっと」
その言葉にイサクさんはエドガーを見た。
「兄さん……、いや、エドガー王子。
エドワード王子に会って下さい。
あの方は心に大きな傷を負っている。
なんというか、長年かけてずっと傷を……。
僕やエレノア王女でも、もう何ともできない、深い傷を……。
古傷の上に新たな傷を刻んでいるような、ひどい傷を……」
エドガーの表情が曇る。
私はシドさんの手をそっと放すと、シドさんの隣から立ち上がり、向かいのソファのエドガーとライカンの間に無理やり座ってエドガーの手を握った。
座れるのよ、三人で。見た目ほど無理やりじゃないからね!?
ライカンがそんな私に苦笑している。
シドさんの隣のイサクさんが「兄さんは……」と言いかけて黙った。
「何?」
エドガーが聞き返すとイサクさんは笑った。
「いや……、兄さんが羨ましいよ。
そんなにお互いを大切に思い合う人がいて……」
シドさんが口を開いた。
「わかった。
クルトはエドガーと名を改めて、魔法使いになっていたと報告しよう。
名は指輪から?」
「ああ、最初は自分の名だと認識していなかったが……。
ライカンやシアの話から、そうなのだろうと」
「では、まだ王子であることには気づいていないということに。
で、エドガーはマイルズ共和国からの使節団に加わってシーザー王国に来る予定だと。
そのため、それ以上つつくことはやめて様子を見ることにしたと。
それだけでも王妃と大臣は満足するだろう。いずれシーザー王国へエドガー王子本人が何も知らずにのこのこ来ることになるんだからな。
イサクとは兄としての対面はして、クルト本人だと確認は取れたこと。
イサクはまだ本命の王族のことを気にしていたが、それは俺が上手く言いくるめたとでも」
「本命の王族?」
私が聞き返すとシドさんが笑った。
「イサクはそう話をされているんですよ。
クルトと一緒にいる王族の者を捜していると。
そのために、イサクが知っているクルトをまず探すのだとね。
もうイサクは知っていますが、イサクとライザを守るためには……、イサクはそのことに気づいていない方がいいでしょう」
「シドさん! すごい!」
私は感心した。
悪知恵っていうか、賢いっていうか……。
「シドでいいですよ。
イサクももうイサクでいいよな」
「はい! ミコトさん!」
「ミコトでいいですよ」
私はエドガーの手を握りながら言った。
ライカンとザイマさんとシドで話を進めてくれていて。
シドとイサクはエドガーと名乗っていたクルトを見つけたが、イサクがクルト本人だと確認しただけでそれ以上の接触はシドが控えさせ、使節団でシーザー王国に来ることを聞いて、そのまま先に戻って来たということで帰国することを決めた。
「シド、身体は大丈夫?」
私はシドに聞いて、もう一度握手した。
うん、我慢していた子どもがなんだか活き活きと活動を始めて、成長していこうとしている感じがした。
「自分で、自分のしたいことをする気になれた?」
「ああ、なんとなくね。すっきりしたよ」
私とシドは微笑み合った。
その時、シドが目を細めた。
「アサニヤの話だが……。
エレノア王女の話とは別に、ミコトも狙われていたのだろう?」
ザイマさんが答えてくれた。
「ミコトを『聖女』として迎えようとカイラム王弟が狙っていましたが、ミコトがエドガーと恋人になったことを知り、一度諦めたようです。しかし……、この先、どう出てくるかはわかりませんね」
「カイラム……、『エスタ』の調理助手だったか。わかった。そちらも気にしよう」
私はびっくりした。
『エスタ』のこと、カイラムのこと、知ってる!?
「クルトのことを調べる時にね。
カイラムのことと、エリオット第2王子のこともね」
私は苦笑して、頷いた。
「うん、この割合が一番いいね!」
その日の夜。
私とメグミ様と帰ってきたキリコさんとケリーさんで、アイスクリームをいろいろな割合というか牛乳や砂糖の分量を量りながら試作してみた。
一番、食べやすくおいしくできたレシピの分量に赤丸をつける。
「これが基本ね」
メグミ様が笑う。
「はい、これを……、例えばもっと濃い牛乳を使うとか、香りをつけるとかすれば、高級な感じになると思います」
「果物の、特に柑橘系の皮を入れたりしてもおいしそうね!
お皿に旬の果物を並べて、それに添えたりしても良さそう!」
ケリーさんがウキウキしたように言った。
「はい!
いいと思います!
大きめのゴブレットに果物やアイスクリームを重ねるように入れるのもありですよ。
上にクッキー飾ったりして!」
うん、パフェ作れるよね!
「やーん、それいい!!
高級路線のアイデアも楽しそう!!」
ケリーさんが悶絶している。
キリコさんが笑いながら言った。
「ふふっ、ケリー、楽しそう!
高級路線はオルガ商会の方に頼むけれど、アイデアはこちらからも出して行きましょう!
ユニコーン商会の方は、このアイスクリームを安く、子ども達が食べられるとなると……、出店とか?」
「ホークはそんな風に考えていると思うけど……。
コーン、どうしようかな?」
「コーン?」
「あ、私が食べてる時の!
クリームが三角のコーンの上に……」
私は紙に絵を描いて見せる。
「ああ!
この部分もお菓子なのね!?」
メグミ様が唸った。
「はい、コーンと言って、甘みを抑えたクッキー、ワッフル? みたいな。
薄く空洞に巻いてあるみたいな」
「そのコーンにアイスクリームを盛り付ければ容器がいらないのね!?」
キリコさんが感心したように言う。
「そうです」
「うーん、形としてはティヤに似てる?」
ケリーさんの言葉に「ティヤ?」と聞き返す。
「私の故郷のトウモロコシの粉で作った薄めのパンみたいなの。
具材を撒いて食べるのよ。こんな風に三角形になる様に」
「ああ! クレープ?」
「うん? ティヤよ」
読んで下さり、ありがとうございます。
やっぱり一日2話投稿がぐらいが良いみたいですね。




