9 風魔法でできること(ミコト視点)
評価とリアクション、ありがとうございます!
とてもうれしかったです!
これからもどうぞよろしくお願いします。
「ロバートさんは風魔法できたのに戦えなかった?」
私は村の端っこの方に歩きながら聞いた。
「私の風魔法のレベルではとてもとても!
私、☆2つなんですよ。
攻撃だと『ウインドカッター』の弱めなのくらいで。
短槍も持っていましたが、逃げながらだと出して使えませんでした」
「そうなんですか?
でも、『ウインドカッター』かっこいい!!
教えて欲しいです!!」
「はい、ではここらなら大丈夫でしょう」
ロバートさんがくるっと周囲を見回した。
私とクルトが一緒だ。
ロバートさんが右手を上にあげると村の外の方に向かって「ウインドカッター!」と振り下ろした。
右手の振り下ろしにより起きた風が丸く渦を巻くようになり、三つほどの塊になり前へ進んで行って木の葉が揺れ、破けた葉が数枚。
「……脅かすくらいはできるんですけどね。
あんなに大きなボア、足留めにもならなかったです……」
えーと、もっと大きく回転するのをイメージしたらいいんじゃないだろうか?
上から下であんな感じなら、もっと手を振り回すとか?
私は右手を上から下へ、左手は右から左に振ってみた。
「……ミコト、何やってんだ?」とクルトが怪訝そうな顔で言った。
「いや、もっと動いたら威力が上がるんじゃないかと」
「んー、回転して撃つ人を見たことがある」
「あ、いいかも!」
私は「ウインドカッター」と小さく言ってピルエットみたいにくるくる回って、手を振り回してポーズしてみた。
「あぶなっ!」
「わぁ! なんか通り過ぎましたよ!」
クルトとロバートさんの声に焦る。
抑えめにしてて良かった。
360度飛んでったみたいだな。
「たくさんはだめ!
一発でよく狙った方がいい」
クルトが怒ったように言って、私は「ごめんなさい」と謝り、再び、外の木に狙いを定めた。
上から下に右手を振り下ろすだけにする。
「ウインドカッター!」
木の枝の細い部分がスパッスパッと斬れて葉付きの絵だがぽとぽと落ちてきた。
「あ! けっこう成功したんじゃない!?」
私はぴょんと飛び上がって喜び、ロバートさんとクルトを見た。
「すごいです! ミコトさん!」とロバートさんは褒めてくれたけど、クルトは「コントロールが……、不安だな……」と言った。
まあ、これは練習できる時にということになり、風魔法の空間魔法を教えてもらう。
これは風魔法で空間に切り口を作り風を送り込んで膨らませるイメージだと言われる。
「小さな風魔法を指先に、スーッと空間を切って、風を送りこむと新たな空間ができて、そこに物を入れると……」
ロバートさんが説明してくれながら、指を動かし、空中にできたスペースに本を入れて閉じた。
「閉じるのは?
で、開けるのは?」
「これから説明しますから!
物を入れて間もなく勝手に閉じる。
自然に閉じます。
この魔法を使う時は、ここから移動して出すよね。
取り出したい物を思い浮かべて……」
さっきの場所とは明らかに位置が違う場所に指を滑らせるロバートさん。
空いた空間にはさっきの本があって、取り出す。そして、空間が閉じるように消えた。
「収納したものを忘れちゃったら……」
「そうですね、出せなくなります。
または記憶の片隅に引っかかってみたいで、何か入れるために空間を開けたらのに、なんか入っているということもありますよ」
「……他の人の空間を開けちゃうとかいうことはないですか?」
「その人の魔力によって作られた空間ですからね。
それは聞いたことがありません。
個人の魔力が鍵のような感じなんでしょう」
「となると、なんでもかんでも収納して忘れたら大変ですね」
「はい、このようにメモをつけるとか。
覚えていられる物、数だけして早く取り出すようにする、ですね。
覚えていられるなら量や大きさはたくさんでも平気です。
大きく切ってたくさん風を入れれば!
さっきのボア3頭ぐらいは入れたことがあります。後は大きなタンスや本棚を入れたこともありますね。
それ以上は試したことがないですが、できると思いますよ。
さっきのメモのことですが、私はこのようにしています」
ロバートさんがポケットから小さめのノートとノートに挟んでいる鉛筆を見せてくれた。
私は頷いて、ハンカチを取り出すと、指に魔力を込めてすっと動かして、そして風を送り込む。
小っちゃな棚みたいな?
そこにハンカチを入れると閉じて見えなくなる。
なんか不思議。
数歩歩いて、反対側にまた指を滑らせ風を……。
あ、ハンカチ取り出せた!
空間の切れ目はまるで傷が治るようにくっつくというか、切れ目がすーっと消えていくように見えたというか。
「できた、のか?」とクルト。
「うん、できたみたい!
やったー!!
ロバートさん、ありがとうございます!!」
「ミコトさんは覚えが早いですね! 素晴らしい!」
『素晴らしい!』貰いました!
なんかうれしい!
「これで獲物ぶら下げて歩かなくてよくなるね!」
「それは本当に助かる!!」
クルトもそう言ってくれた。
そこでロバートさんが真剣な顔で言った。
「注意点を!
空間を閉じてしまうとその空間の時間は止まります。
なので、生き物は入れないように!
時間が止まるなら、その生き物の時間は止まっているわけで寝ているようなものだとも考えられますが、実際に実験した人がいます。
その人によると、結論は生きていて大丈夫なんですが、その瞬間、空間が閉じた時の絶望や息苦しさ、一度死んだんじゃないかと思うくらいのストレスを感じたそうですよ」
「そっ、それは怖いですね!?
絶対に入れません!!」
その日の夜は村長さんの家で一角ウサギのシチューとボアのステーキが出て、ごちそうだった。
シチューは茶色くてびっくりした。
カノンの『エスタ』では牛乳の白いシチューだったんだけど、ここらへんは牛を育ててなくて牛乳が手に入りにくいんだそう。
なので、根菜をじっくり炒めて作るシチューなんだってさ。
でも、それもおいしかった!
プリシラとミカエラと一緒の女子部屋で過ごすことができて、空間に収納魔法ができるようになったことと注意点をおさらいというか、ふたりにも知ってもらった。
それから風魔法も少しできるようになったんだけど、コントロールがいまいち難しくてクルトに『不安だ……』と言われたと話した。
「ふふふっ、クルトがねっ!」
ミカエラが言って。
プリシラが少し……何か言いたそうな?
でも、何も言わない。
「まあ、クルトが私のお兄ちゃんってことになってるし。
他の人に怪我させないように心配してるんだろう……。
あ、自分が怪我するかも? かな?」
私がそう言うと、ミカエラが残念そうに言った。
「あら、プリシラと親子ってのはもうやんないのね。残念!」
「……あ、あの時か!
クルトとミカエラ、夫婦かって聞かれてたね」
私がそう言うとミカエラが笑って「そんな風に見えるのかな?」と言った。
ミカエラは……、うれしいんだな。
クルトと夫婦に見えると言われて……。
ちょっと心の中でもやっとして……。うん? なんでだ!?
私はそれをなんか隠さないとと、曖昧に笑ってしまった。
読んで下さり、ありがとうございます。




