表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/20

8 人助け(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

「マイルズ川の支流だね。

 きっとこの小川にも名前があるんだろうな」


 だいぶ歩いて来て、もう昼過ぎ。

 私は小さな橋を渡りながら隣を歩くクルトに話し掛けた。


「こういう川のおかげで、農地が豊かなんだろうな」

「シーザー王国もマイルズ川沿いなのにね。

 あんまりうまく水を活かせてない?」

「あー、地形かな?

 シーザー王国の方が山地寄りって感じだからな。

 用水路造ったり、水路の工夫をすればいいのかもな……」

「そっか!

 でも、プリシラが、緩やかな山地だから放牧が盛んだということも言ってた。

 チーズはシーザー王国の山の方のが有名で、船でこっちまで運ばれてるもんね」

「ミコトはよく見てるな」

「食べ物のことは興味がある!」


 クルトは微笑んで言った。


「一角ウサギのシチューうまいよな!」

「うん、おいしいよね。

 私も好き!

 あ、水の魔法教えて!」

「……唐突だな。

 そうだな。

 水を集めるのをやってみたら?」

「集める?

 周囲の空気から?」

「ああ、そんな感じ」


 私は歩きながら右手の平を上に向けて、その周辺の空気から水を集めるというか取り出すというかイメージをしてみた。

 何となく結露が思い出された。

 水がぽたぽた……。

 んー、なんて言うかな?


「ウォータードリップ?」


 手のひらの少し上、空中で水か集まってきて、手のひらにぽちょんと垂れた。


「できた! 次は?」


 クルトは呆れている。


「ドリップってなんだ?」

「えー、コーヒーがぽたぽたするのドリップって言うよね?」

「あー、まあそうか。

 自分がイメージしやすい言葉をつけるんだもんな……。

 んじゃ、その水球を投げる」

「アクアバレット?」

「そこまで強くなくていい。

 ポーンと投げる感じ」

「えー、イメージ逆に難しい……。

 うーん、ウォータードロップ!

 ドリップからのドロップ!」

「……なんかうまそうだな」

「うう、自分でもそう思う。

 でも、できたよ!

 こんなんでいいの?」

「ああ、いいんじゃないか。

 でも、ミコトの魔法の言葉は面白いな。本当に」

「うん、私、オリジナルの魔法!」


 クククッとクルトに笑われてしまった。


「その、ドロップとやらはたくさん出せるか?」

「あー、練習してみるね」


 私はプリシラとミカエラを振り返った。

 その時、クルトが少し前に出ると剣を抜いた。


「止まれ、ミコト」


 私は立ち止まりクルトが見てる方を見る。

 走ってくる人がいる。商人、かな?

 その人がすごい必死な顔ですごい勢いでこちらに走ってくる。

 その後ろ、なんか砂ぼこりすごくない!?


「……ボア!?」


 私の言葉にクルトが頷いた。


「けっこう大物だ」


 商人が私達を見て「たっ、助けっ、て!」と口を動かすが声がなかなか出てこない。

 ミカエラもクルトの隣に立つと剣を構えた。

 私はプリシラの所まで後ろ向きのまま下がり、商人にこちらまで走って来るように手を振って合図する。

 商人がクルトとミカエラの間に飛びこんで来て「ああ!」と息継ぎをして止まるので、私とプリシラで引っ張ってさらに下がってもらう。


 ボア 対 クルトとミカエラだ。


 ミカエラがボアを挑発する様に剣を揺らす。

 ボアがミカエラに突進するのをクルトが横腹を狙って剣を突き出す。

 ボアの腹から血が吹き出す。

 怒り狂ったボアはクルトに向かい、今度は狙われていないミカエラが上から首を切りつけた。

 浅くしか傷つけられなかったが、ガクッと前足を折るように、崩れ気味で止まるボア。

 クルトがミカエラが傷つけた上から剣を突き刺した。

 少しボアは暴れて……、静かになった。


「……あ、ありが、とう……」


 商人はまだ息が荒く、顔色も悪かったが、私とプリシラにそう言って、自分の腰から竹の水筒を取って水を飲んだ。


「竹!?」


 私は叫んでしまい、びっくりされちゃった。


「竹を知っている?」

 

 商人に聞かれた。


「はい、本で読んだことが!」

 

 私は慌てて誤魔化した。

 シーザー王国のカノンでは竹は見たことない。

 渡ってケレスでもないよな?


「アサニア王国の竹細工です。

 軽くて便利なんですよ」


 商人がそう言って笑うけど、まだ顔色が悪い。


「大丈夫ですか?」


 プリシラが声を掛け、ボアの方を見た。

 商人が「あ、デュランに向かわれるところだった?」と言って考えている。


「……私はこの先の村から出て来たばかりで……。

 でも、一度戻って休んでからにしようと思います。

 村まで一緒に行ってくれませんか?

 また襲われたら怖いですし……」


 ミカエラが「いいですよ!」とすぐ返事した。

 クルトが「近いってどれくらいですか?」と聞いた。


「歩いて15分ほどでしょうか?」

「それは近いですね。

 ボアを引きずって行くか……。

 このボアは俺達が頂いても?」

「どうぞどうぞ!

 恩人です。助けて頂いて!」


 商人はロバートさんというマイルズ共和国の人だった。

 もっと南でアサニア王国とも提携して商売をしているのだとか。

 なので、シーザー王国の特産品チーズと岩塩を買い付けに行くところなのだそう。

 私達と逆ルートだ。

 ケラスまで行くのだそう。


「15分なら、棒にくくりつければ、なんとか運べるかな?」


 クルトの言葉に「お手伝いします!」とロバートさん。


 なんと、空間に手を突っ込みその空間にボアを入れてしまう。

 消えたというか、収納したというか!?


「収納魔法です。

 便利なんですよ」


「うわ、すごい!!」


 私はびっくりして目を見張った。


「空間魔法です。

 風魔法の一種になります」

「風魔法!!

 私もできるかな!?」

「お嬢さん、風魔法の適性が?」

「はい、あるみたいですっ!」


 私は村までロバートさんに話し掛けて竹の水筒と風魔法の話を聞いた。

 アサニヤ王国って、竹があるのか!

 そうすると、日本、たぶん昔の日本にも似ているのかも!?


「私の拠点はマイネなんですよ。

 デュランの先、共和国の首都ジュノンの、こちらからなら手前ですね。

 ちょうど真ん中くらいの」」

「マイネ!?」


 地図を思い出すけど、地名までは思い出せない……。

 何かを思い出してるような私にロバートさんは言った。


「今日は一日村で休んでから、ケラスに向かいます。

 村でボアや獲物を換金することができますよ。

 まあ、換金というか、物々交換とかサービスを受ける、とかですけどね」

「サービス?」

 プリシラが聞いた。


「ええ、ボア一頭差し出せば、一晩の宿と食事は出してくれると思いますよ。

 私が交渉しましょうか?」


 プリシラがクルトと見合って頷き、お願いする。


「ええ、お願いできますか?

 えーと、ロバートさんも御一緒に!」

「いえ、私は!」

「いえいえ、こちら男手はクルトだけなんです。

 えーと、その代わり……、この子に空間魔法を教えてあげて下さい!

 適性はあるのでできると思うんです!」


 私は急に言われて驚いたけど、自分でもさっき言ったし、覚えたい!!


「いいですよ」


 

 そのまま無事に村に入り、ロバートさんが事情を説明してボアを出すと、村長さんの家に泊めてもらえることになった。

 一角ウサギの肉だけ買ってもらうことになり、毛皮と角がこちらに戻された。

 これはシチューにして食べさせてくれるって!

 やったあ!!


読んで下さり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ