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82 思い出(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 ギルドの前にエドガー達が用意してある馬車もあったんだけど、念のため、魔法塔の馬車にエドガーと私とメグミ様とクラーク様とザイマさんとキリコさんと乗ることになった。

 ライカンとシアとユミエラとディーとホークは用意した馬車で魔法塔に来てくれるって!


 馬車の中で魔法塔で結婚式の流れと名前を新しく登録する手順をもう一度確認。

 シアの時に見ていたはずなんだけど、自分がするとは思ってなかったから、なんとなくしか覚えてない……。それに魔法塔の魔法使い同士でさらに私が転移者だから、いつものよりいろいろ儀式が追加されてるとか言われる……。


 魔法塔の敷地に馬車が入り、魔法塔のエントランスに到着したら、けっこう人がいてびびった。

 時々、結婚式があるけど、こんなに見物人いないよ!?


「あらあら、転移者と魔法使いの結婚が珍しいからね」


 メグミ様の言葉にクラークさんも頷いている。


「ああ、何か面白いことが起きるかもしれないしな」

「……面白いこと!?」


 私が聞き返すと笑われた。


「ああ、私とメグミの時は空から花びらが降ってきた」

「……それは誰かのサプライズとかじゃなくて?」

「ああ、奇跡だな。誰も何もしていないのに起きたことだ」

「奇跡!?」


 あわわ、何が起こるんだ!?

 ……起こらなかったら、それもなんか怖い……。

 私はエドガーに片手でぎゅっとしがみついた。


 馬車を降りて、エントランスに向かって歩き出す。

 顔見知りの騎士仲間さんや魔法使い、ケリーさんもいた!

 イサクさんとシドさんまでいる!

 シドさんはエドガーを見て、何かイサクさんに言ってる。

 イサクさん、大丈夫かな!?


 その時、「「うおぉぉお!?」」みたいな声が周囲から上がって、魔法塔の方に目をやると、ダルシュカーン様!?

 魔法塔塔主が、姿を現していた。

 えっと、シアとライカンの時はお出ましになりませんでしたよねっ!?

 ひい、あ、これが既に奇跡ということでは!?

 私とエドガーはゆっくりとダルシュカーン様の元へ歩いていった。


「めでたいな」


 ダルシュカーン様がにっこり微笑んで、私達の後ろにいるメグミ様とクラーク様に微笑む。


「懐かしいだろう」


 なんとなく、おふたりが微笑む気配がした。振り返れないから確認できないけどもっ!

 ダルシュカーン様の言葉で私とエドガーは婚姻の誓いを結び、そして名前の登録をした。

 名前はおおっぴらにはできないから、その場で魔法の用紙に記入して、それを魔法でその場で秘密に登録してもらうわけだ。婚姻して名前を登録した事実だけ、みんなにはわかる。

 普通は新婦が新郎の姓を付け加えるとかみたいだから、私達が新婦の姓を選んだとか、新たな名前を付けているとか、それは誰にもわからないはず。

 私とエドガーは考えてあった名前をそれぞれ記入した。

 そして、誰にも見られないように用紙を折り、跪いて、ダルシュカーン様に差し出す。

 ダルシュカーン様が受け取り、その手を高く掲げ、目を閉じると、用紙が強く光って、消えていく。

 ……登録できたってことらしい。

 ほっとする。


「ここに新たな縁を結び、家族となったこのふたりに祝福を!」


 ダルシュカーン様がそう言って、私とエドガーの頭に両手を乗せて宣言してくれた。

 その時、風が吹いてきて、ダルシュカーン様も手を下ろしたので、私は目を開けて周囲を見た。


 魔法塔の上空に不思議な空間が出現していた。

 なんか大きな鏡みたいなのが……。

 写真みたいな……。

 久しぶりに見る家族の姿だ。

 私が赤ちゃんで、お兄ちゃんが支えてくれてて、それを見守る両親の姿。

 それが消えて、これはエドガーの思い出だろうか?

 金髪の赤ちゃんと黒髪の赤ちゃんを抱っこして幸せそうな黒髪黒目のほっそりした若い女性の姿。

 その後ろに金髪の男性がいる。


「もしかして、母さん……?

 じゃあ、さっきのはミコトの家族?」


 エドガーの声。

 私はその女性をしっかりと見た。

 スミレコさん。

 エドガーを産んでくれて、ありがとうございます。


 写真(?)は切り替わっていき、私と兄がソフトクリームを食べていたり、SLに乗っていたり(いや、父が乗り鉄だったもので)、ランドセルを背負って桜の花を見上げていたり……。

 エドガーの方は金髪の男の子と一緒に寝ているところ、手を繋いで豪華な部屋の中に座っていたと思ったら、次はスミレコさんではない女性とガッチリしている逞しそうな男性に抱っこされてて。

 ライザさんと旦那さん、かな。イサクさんの御両親……。そして、赤ちゃんを囲んで覗き込む三人の幸せそうな笑顔……。イサクさんが生まれた時だ。手を繋いであるく兄弟の姿。エドガーがお兄ちゃんって感じ。

 幸せな……思い出……。


 キラキラとその映像は消えていき、森の中で抱き合う私とエドガーの姿。

 うう?

 えーと、これは!?

 ライカンに邪魔された時の!?

 んじゃ、その次はファーストキスの時とか……!?


「うひゃー、勘弁して! もうやめて!」

 

 私は呻いてしまい、そこで映像は消えて、花びらが降ってきた……。

 これが奇跡!?

 まあ、昔の写真は……うれしかった。

 でも、自分の視線じゃないことが気になったけど。

 神様とかの視点なのか!?


 でもおかげでエドガーの赤ちゃんの頃の姿も見れて、うれしいけど……。

 エドガーを見るとなんだか微笑んでいて「恥ずかしかったの?」と聞かれた。


「だって! 

 あのまま進んだら、キスしてるところとかになっちゃうのかなって!」

「そうだな! 

 キスはここでするし!」


 そうだった! キスするんだ!

 ダルシュカーン様を見るとウインクされた。

 それが合図のようにエドガーが抱きしめてきて、キスされた。

 チュッでいいんだよ! 長いよ!!


 やっとやめてくれて、気づいたら、ダルシュカーン様がエドガーの背中を叩いて強制終了させていたらしいことがわかった。

 ありがとうございますだ……。


 周囲がざわざわしている。

 もしや長いキスに引いてた!?

 

「あれ、異世界の映像か?」

「あの、白いのおいしそうだったなー。何のお菓子かな?」

「あの、煙を吐く乗り物……、なんだろうな!?

 かっこいいよな!」


 ああ、向こうの世界の情報の方がインパクト大でございましたか!

 変なことにほっとしてると、シアとライカンとユミエラとディーとホークが来てくれた。

 ライカンが「スミレコは……幸せそうに微笑んでいたな」とエドガーに言って……。


「ああ……、俺達のことを祝福してくれているようで、うれしかった」


 エドガーの言葉にシアとユミエラもウルウルしている。

 ディーがユミエラの肩を支えていて、ライカンとシアも寄り添っている。

 ホークが言った。


「なあ、小さいミコトが食べてたの、あれなんだ?」

「ソフトクリームだよ」

「何だそれ? クリーム? それにしてはしっかり固そうだけど!?」

「固くないよ、アイスクリームを柔らかくしたみたいな!?」

「アイスクリーム?」


 この世界、氷菓子はあるんだよ。

 牛乳と砂糖を凍らせたアイスクリームもどきはあるけど……。

 凍らせて削った感じで、クリームって感じではない。


「ああ、今度似たもの作るよっ!」

「やったー!!」


 ホークが喜んでいる。

 私はちょっと気が抜けた。


「兄さん。おめでとう……」


 イサクさんの声にピリッと緊張が戻った。

 イサクさんとシドさん。

 

「……エドガー王子、全てをご存じで、隠れてたんですね?」


 シドさんの低い声。

読んで下さり、ありがとうございます。

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