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80 家族(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 シドさんへの治療を終えて部屋を出る時に、イサクさんがドアの外までついてきた。


「結婚は、もちろん、兄さんとですよね?」


 私は頷いた。


「私達は、一度、シーザー王国へ行こうと考えてます」

「それは!

 エドワード王子に会いに!?」

「……んー、まだどうなるかわかりませんが、一応そのつもりで。

 でも、今のままだと、シーザー王国に、王家に、無理やり従わせられることが起きるかもしれない……。

 起こりえることに対してはできるだけ予防というか、準備してから行きたいんです」

「結婚がその予防になると……」

「はい。

 ギルドと魔法塔と。

 国を越えてのしっかりした組織への正式な手続きです。

 王国としても無視はできないでしょう」


 名前を新しくすることは内緒。


「……わかりました。

 兄さんは喜んでいるんでしょうね。

 こんなかわいいお嫁さんが来てくれるなんて。

 家族として、僕からもお礼を。

 ミコトさん、兄さんと結婚してくれてありがとうございます」


 私は少し恥ずかしくなる。

 イサクさん……、うーん、ちょっと利用というか、隠していることもあるし。

 でも、イサクさんは義弟だもんね。

 初めての弟! 年上だけど!


「よろしくお願いします……」


 私はそうお礼というか、挨拶というかとりあえず絞り出し、それから、騎士団のエントランスの方に向かった。

 エントランスにはもうメグミ様がいて、私とザイマさんを見るとほっとした顔をした。


「護衛のシドは大丈夫でしたか?」

「はい、もう状態も良く、明日には宿に移動できるでしょう」

 

 ザイマさんが答えてくれる。


「そう、良かったわ。

 逆に今日はまだ動けないということね。

 ミコト!

 一度、家に帰ってきたら?

 ザイマ、頼んでもいいかしら?」


 

 ということで、私はザイマさんと一緒に家に向かっていた。

 誰かいるかな?

 シアとライカンとエドガーの誰かしらはいそう。

 そういえば、ホークとディーもいて、ユミエラと狩りに行っているんだっけ!?


 家に到着すると、シアがいた。

 ライカンとエドガーはギルドの方に婚姻の書類を取りに行ってるとか。

 ユミエラ達ももう少ししたら、帰ってくるとか。


 ザイマさんとシアをリビングに残し、私は自分の部屋を見に行き、窓を開けた。

 うう、シーツ。

 でも、替えたら、エドガーのこと嫌がってるみたいかな?

 収納に入れてた物を少し整理してからベッドに腰かけた。

 ん?

 結婚したら、この部屋とはバイバイ?

 いや、まだ全然暮らしてないんだけど!?

 というか、大きな部屋ないんだから、私がエドガーの部屋に通えばいいんじゃない?

 そう考えて、自分で『通うって何よ』っと突っ込んだ。

 ひとりで赤くなったり、しょんぼりしたり考え込んでたら、いつの間にかシアが来て、ドアの隙間から見てたみたいで、笑い声で気づいた。


「シア……」

「何ひとりで、考え込んでるの?」

「だって……、私まだこの部屋でほとんど暮らしてない……」

「そうね。

 本当に……、いろんなことが早くなっちゃったね」

「うん、嫌ではないの。

 でも、なんか、もっといろいろ経験しておいた方が良かったことがあるんじゃないかなとか……」

「うんうん、エドガーとでもそれはできると思うわよ。

 たぶん、結婚してもしばらくはエドガーとミコトの関係は深まるだけで、変わらないと思うの。

 ミコトはここで暮らせばいいし、好きな時にエドガーの部屋に行けばいい。

 私ももう少し、ミコトやユミエラと暮らしたいわ」


 私はシアににぎゅっと抱きついた。

 シアが私の頭を、髪の毛を、やさしく撫でてくれる。

 なんだかうっとりしちゃう。

 シアといるとすごく安心……。


 玄関のドアが開く音がして、シアは私にウインクすると「先に出てるわね」と部屋から出て行く。

 エドガーとライカンの声がした。

 あれ、ユミエラの声もするような。

 私は窓に向かい大きく息をしてから閉めて、リビングに出て行った。


「ミコト!!」


 ユミエラが飛んできた。

 本当にぴょんぴょーんってジャンプしてきたよ。


「エドガーと結婚するって!?」


 私は頷いた。


「うん。明後日」

「な、本当のことだろう。

 ミコト、ギルドで書類を貰ってきた。

 こちらで書けるところは埋めておくが……」


 エドガーが話し始めてぎょっとして黙った。

 ユミエラがぼろぼろ涙をこぼし始めたかと思うと「わーんっ!!」と大きな声で泣き始めたのだ。

 私もぎょっとしたよ。


「やだー!!

 ミコトがエドガーのものになるのー!!」


 いやいや、ものじゃないし!?


「ユミエラ!

 結婚って、その、そういうことじゃなくて……」


 オロオロ私が言いかけるとエドガーが来て、私とユミエラを引き離そうとした。


「もうっ!

 エドガー!

 ミコトを泣かせたら、殺すからね!」

「なんだよそれっ!

 泣かすわけないだろ!!」

「ユミエラ、落ち着いて!

 私から、結婚しようって言ったの!

 それに、結婚ってそういう、ものとか違う。

 もし、名前とかで言うなら……、エドガーが私の名前になってくれる。

 つまり、エドガーが私のお婿さんになってくれるってこと!」

「婿……。

 エドガーがミコトのものになるの!?

 それならいいかー!」

「「いいのかよっ!」」


 エドガーとホークがなぜかそう突っ込んだ。



 はい、また私の部屋で今度はユミエラと面談中です。


「落ち着いた?」

「うん、ごめん、なんか一気にこみ上げるものがあって。

 ……ミコトにはなんだかきれいなままでいて欲しいなって気持ちと、エドガーと結婚はうれしいことなんだけど、ミコトを取られるような気がしたり、なんだか一気に感情が……、爆発した……」


 私が清純でいることが、その……、身体も心も踏みにじられたユミエラの精神安定みたいなところもあったのは聞いたことある。

 結婚でのその……。それは清純とは言わないのか!?

 そもそも私は、こんないろいろなこと知っちゃってる私は、清純なのか!?


「ユミエラ……、ありがとう。

 私を守ってくれてたもんね。

 自分がされて嫌なことから、私を守ってくれた。

 大好き。強くて優しいユミエラが……。

 エドガーなら、私を任せられるでしょ?」

「う、うーん。まあ」

「それに、さっきも言ったけど、エドガーが私の姓を名乗ってくれるの。

 エドガーの王子としての姓を捨てるんだ。

 そのための結婚だから。

 私から提案した」

「う、うん……。

 わかった。

 その……、ミコトは幸せなんだよね?」

「うん、幸せ」


 私はにっこり笑って見せた。

 すると、またユミエラの瞳に涙が……。


「えっ? どうして?」

「え、あ、なんでだろう……。

 うれしいのかな。ん、やっぱりなんか複雑ー!!」

「ははは、ユミエラ。

 おもしろい。なんだかお兄ちゃんみたい」

「お兄ちゃん!?

 確かに……、大切な妹を取られるみたいな!?」

「でも、いいじゃん。

 まあお嫁に行ったら、この家から出ちゃうけど。

 エドガーとだから、この家から出て行かないよ」

「そっか!

 それは……、安心だ」

「ね」


 私はユミエラに笑いかけた。

 ドアがノックされ、細く開いて、エドガーが顔を覗かせた。

 私の表情でエドガーだとわかったんだろう。

 ユミエラが振り向いて「絶対! 幸せにすんだよ!!」と凄んだ。


「言われなくてもそのつもり」


 エドガーがそう言って、ドアがもう少し開いてディーが顔を覗かせた。


「えっ!?

 ディー、なんで!?」


 恥じらうユミエラ。


「俺も入っていい?」


 ディーの言葉にユミエラは「え?」と固まり、私はそんなユミエラの隣からするっと抜け出し、ディーとバトンタッチした。


「部屋、貸してあげる」

「ありがとう、ミコト」

「え?」

 

 何が何だかわからないという表情のユミエラとちょっと真剣なディーを私の部屋に残してドアを閉めた。

 そして、エドガーにうふっと笑いかける。

 エドガーは苦笑気味にでも温かい感じで小さくため息をついた。


「もう一回ギルドに行って、書類もらって来なくちゃいけないかもな」


読んで下さり、ありがとうございます。

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