79 フィオナのこと(ディー視点)
どうぞよろしくお願いします。
引き続きのディー視点。
フィオナとのその後、気になってたんですよ。
ライカンから今、ジュノーの『魔法塔』で騎士をしていて、シアと結婚するという手紙が届いた。
シアと……。
ユミエラの告白を聞いて、もしかしたらシアもそういう過去がある人ではと思ったが……。
シアもユミエラも……、何も悪いことはしていない。
ライカンはシアを守りたいと思ったのだろう。
俺もユミエラを守りたい。
俺は両親に言った。
「ジュノーにしばらく……、行って来ていいか?
ライカンとシアに結婚のお祝いを言いたいし、それにユミエラに会って話をしたい」
「ユミエラさんね。
いい子だったわね。明るくて、素直で!」
母さんが笑う。
「うん、あの時に好きになってたみたいだ。
ちゃんと思いを伝えたいと思う」
「行ってこい!
俺達はお前が選んだ女性なら、何も言わん」
父さんがそう言ってくれた。
俺はソーマに自分の気持ちを打ち明けた。
「ユミエラに会って、自分の気持ちを伝えてくる」
「おー、いいな。
とうとう運命の人に出会ったってことか!
ユミエラね。
二日間ぐらいしか俺一緒にいなかったけど、ユミエラ、いい子だったよな。
フィオナとは違ってさ」
「なんでここでフィオナが出てくる?」
「お前、本当に気づいていなかったの?
フィオナはお前のことが好きだったと思うよ」
「え? 俺?
だって、そう思える奴とまだ出会ってないって」
ソーマは目を細めて笑った。
「強がりというか……、お前から言って欲しかったんだろな。フィオナは」
「……というか、俺はそんな風にフィオナを見たことがない」
「だろうな。
フィオナとお前じゃ合わないとは思ってた。
あの後、俺達がフィオナを狩りに誘わなくなっただろ」
「ああ。
そういえば、最近フィオナの話、聞かないな」
俺は気が付いてそう言った。
「ああ、最近、女性冒険者が何人かこっちに来ててさ。
腕の差で、フィオナは他の奴らに声を掛けられなくなった。
それに最近人気がある姉妹がいて、下の子は16歳なんだよな。
腕も良くて、性格も良くて、若くてかわいいって」
「それって……」
「そ、フィオナは冒険者としてもう無理だろうな。
男なら、どこかのパーティに入れてもらって鍛えるとかできただろうけど、女じゃ、しかもフィオナの性格じゃ無理だろな。
自分がお姫様のようにちやほやされたいってタイプだしな。
まあ、これは俺もお前も含めて、周囲の奴らがフィオナに甘かったってこともあるかもな」
「……でも、それは……」
「ああ、俺達のせいではないよ。
厳しいことを言うようだが、許されてやさしくして貰ってたのを勘違いしたフィオナの自業自得だ」
「フィオナは今は?」
「本当に何も聞いてないんだな。
ギルドに顔を出してることもあるが、家の手伝いしてるよ」
「あ、鍛冶屋の?」
「ああ、看板娘だな。
職人からもててるみたいだぜ。
まあ、そこらで手を打つか、どうするか」
俺は考え込んでしまった。
このままにしておいてもいいんだろうか?
「おいおい、フィオナに会いに行くとか考えてるんじゃないだろうな!?」
ソーマに見透かされたように言われた。
「いや、ちゃんとどうにかした方がいいのかと……」
「やめとけって。
お前が『話がある』なんて現れたら、フィオナは期待するぞ。
そこをまた地獄へ突き落すのかよ」
「地獄って……」
「もし、また出会うことがあったら、ただの幼馴染だったという態度を取り続けるしかないな。
それが、フィオナにとってもいいと思う。
告白もしてないのに、お前、俺のこと好きだったんだよな、なんて振られるなんて、自分でも嫌だろ!?」
「……そう、だな」
「ユミエラにちゃんと話をしてこい!
俺はお前が振られて、早々に戻ってくることを祈ってるぜ!」
「なんだよそれ!!」
そんな話をソーマとした後、家に帰ると母さんに頼まれた。
「この鍋、直してもらってきてくれない!
大至急!!」
間が悪いというか、なんというか……。
俺は鍋を抱えて鍛冶屋に向かった。
店番はおばさんで。
「あら、いらっしゃい!
久しぶりね! ディー!!
今日は鍋?
ディーもそろそろ宿を継ぐ準備を?」
「いえ、これは母に頼まれて、どれくらいかかりますか?」
「そうねえ。
すぐに直りそうだけど、掛かりは四分の一ギニーてとこね」
「じゃあ、お願いします。
後で取りに来ます」
「そうね、すぐ取り掛かるわ。
あんた!
鍋の修理!!」
おばさんの声におじさんが顔を出した。
「ディーじゃないか!
久しぶり!
鍋か!
ディーも家を継ぐ準備を始めたのか?」
ディーも?
ということはフィオナは鍛冶屋を継ぐということか!
俺はほっとしながら首を振る。
「いえ、俺は冒険者を続けます。
今度、首都に行ってみる予定で」
おじさんは少し残念そうな顔をした。
「そうか、マイネから出るのか……。
フィオナは家にいるから、話しでもしてやってくれ」
おばさんも立ち上がり「お茶でも入れるわ。どうぞ」と……。
俺は観念しておばさんの後について行った。
「フィオナ!
ディーが来てくれたよ!」
いや、来たわけでなく、鍋の修理のついでで!
「あら、ディー、いらっしゃい!」
フィオナが台所にいて、料理なんぞしていた。
そして、女性の格好をしている。
ワンピースにエプロンをして、髪はきっちりと結い上げて。
そして、少し太ったか?
「どうぞ、座って!」
フィオナとおばさんに挟まれるようにして、椅子に座り、お茶を出される。
「ディーは首都に行くんですって」
「わあ、いいわね!
お土産、楽しみにしてるわ!」
フィオナに言われてしまう。
「どれくらいの期間行ってるか、わからなくて。
でも、まあ、お土産、何がいいんだ?」
「そうねー、何がいいかしら?」
「首都なら素敵な食器とかあるんじゃないかい?」
おばさんが口を挟んだ。
「食器?」
「フィオナの新居をね。
タロウスと結婚するからね」
「もう!
まだ、決まりじゃないし!」
フィオナが少し赤くなりながら言った。
タロウスは鍛冶屋の弟子のひとりだ。
俺より少し年上で、腕のいい職人。
「それはおめでとう!」
俺はほっとして言った。
フィオナは少し目を細めて俺を見てから、目を伏せた。
「……ありがとう」
「良かったわよ。
ディーに憧れて冒険者になったっていうのに、冒険者としては成功できなくて……。
でも、タロウスが嫁に貰ってくれるってなって!」
「やだ、お母さん!
違うよ。
タロウスに『結婚して欲しい』って前から何度も申し込まれてて!
それで……」
「良かったよ。
フィオナの『そういう人』は近くにいたんだな」
フィオナが俺を見据えるように顔を上げて言った。
「そういうディーはどうなのよ!」
俺は静かに言った。
「首都に行って、結婚を申し込もうと思う」
「へ? 誰に?」
「俺の『そういう人』に。
親にも伝えた。
俺が選んだ人なら応援してくれると」
「まあ! それで首都へ!
ロマンチックな話ねー!」
おばさんが両頬に手を当てて笑った。
俺はフィオナとタロウスの結婚祝いに食器を首都から贈ると約束した。
久しぶりに会ったユミエラは髪を短くしていて、前よりかっこよく、きれいになっていて。
俺は……。
ユミエラの隣に若い冒険者がいた。
話をしていて気づいた。
前に聞いたことがある、実力のある若い冒険者ってこいつか!?
ユミエラとホークの親し気な様子に、少し気持ちが凹んだ。
でも、俺は……、ユミエラを……。
そう、もう引いたりしない。
読んで下さり、ありがとうございます。




