78 ユミエラのこと(ディー視点)
どうぞよろしくお願いします。
ブックマーク、ありがとうございます。
今回と次回はディー視点です。
20~24話のマイネでの出来事の振り返り、その後のことをディー視点で語ってます。
騎士のライカン様が冒険者になったと仲間を連れてうちの宿に来てくれた時は、驚いた。
騎士をやめて、冒険者!?
その仲間ってのが俺と同じくらいのエドガーとユミエラ、年上の女性のシア、そして年下のミコト……。
ミコトがライカン様の親友の娘みたいな?
正直、羨ましかった。
時々、仕事でマイネに来ると、騎士宿舎ではなく、うちを定宿にしてくれているライカン様はとても気持ちのいい方だ。
俺をかわいがってくれて、剣を教えてくれたこともあるし、親父と料理の話をして、その材料になる魔物を狩って来てくれたこともある。
偉ぶってないし、優しいし。尊敬できる人だ。
俺も仲間に入れてもらいたいくらいだけど、俺は旅には……。
今回は一緒に狩りにという話になり、俺は幼馴染のソーマと、女の子が多いからとフィオナにも声を掛けた。
ソーマは少し年上の頼れる冒険者だ。一緒に行動することが多い。
フィオナは幼馴染ではあるが、マイネの冒険者仲間では有名な女性冒険者だ。
なんていうか……、強いわけではないし、何か特別な能力があるわけでもない。
周囲の冒険者で『フィオナちゃん、かわいいよな』と言っている奴も多いし、実際、パーティに誘われたり、付き合わないかとか声を掛けられることも多いようだ。
ただ、若いと言ってもそろそろ結婚なんて歳だと思うんだよな。冒険者が向いてるとはそこまで思えないし。
フィオナの両親も早く身を固めて欲しいなんて思ってるんだろうが……。
なかなかフィオナが気に入る、そういう相手に出会わないと、フィオナ自身が話していた。
「ディーはそういう人はいないの?」
「俺は……。そういうのはもう少し後でいいや」
「えー。でも……。
おじさんもおばさんも早く安心したいんじゃ……」
「いや、まだふたりとも元気だし。
俺もまだそういう相手には出会ってないしな」
フィオナは「そうなんだ」と低い声で言って、離れていく。
行った先で他の冒険者に声を掛けられて、高い声で楽しそうに話を始めている。
……なんだか、最近、こんなことを繰り返している気がする。
早くフィオナが納得する『そういう男』が現れるといいなと心の底から年下の幼馴染の幸せを祈る気持ちになる。
ライカン達との狩りは……、フィオナの様子が変で。
でも、フィオナを呼んだのは俺だし、一応責任を取らなきゃとフィオナのいる組に俺は入るようにしたのだが……、散々だった。
いつも女性冒険者はフィオナしかいない状況で、その時にはそこまで気にならなかったフィオナの我儘さとか、狩りへの適当な態度、男と女への態度の違いとか、目の当たりにして……。
あんな小さなミコトにまでツンツンして、そう見えないようにしているようだが敵意を抱いていることが手に取る様にわかる。
ミコトは子どものように見えるが俺と同い年のエドガーの恋人なのだそうだ。
それも驚いたけど。
フィオナにしてみれば、自分よりも若くて、女性らしくないのに、もう、そういう相手を見つけてるってことや、エドガーがいい男っていうことへの嫉妬というかやっかみ、羨ましさから来る気持ちなのかなと思った。
まあ、ミコトやシアが大人な対応で、ユミエラとは子どもみたいな言い合いをしてたけど。
フィオナがミコトに対抗意識を燃やしているのか、『子ども、子ども!』と言って、置いていくことを提案した時も言い返していたのはユミエラで。
仲間のために怒れる人というのは、いいなと俺は思った。
その時、同い年で、力のある冒険者で、性格もさっぱりとしているのに女性らしい気遣いや優しさを感じるユミエラのことを少し特別な気持ちで見始めていたのかもしれない。
ミコトの次は一緒に組んだシアにもなんだか敵意を向けていたフィオナ。
今度はシアが年上であることをちくちく攻撃しだして……。
ああ、フィオナはこういう奴だったのか!
確かにこういう我儘な女性が好きだという男もいるかもしれないな……と俺は他人事のように考えてた。
いや、呼んだのは俺だから、なんとかしないと……。
最終的にライカン達と別行動して打ち上げをしたいとか我儘を言い出して、ミコトに絡んで、言い返されて、泣いて飛び出して行った。でも、その時はもう狩りが終わり、得た金を分配した後で。
なんだかなー。
家の宿で打ち上げをしたんだけど、ソーマもフィオナの態度には困っていたみたいだ。
次の日はエドガーとミコトが不在で、ライカン、シア、ユミエラ、俺とソーマで狩りに行った。
とても楽しく、充実した狩りだった。
みんなで連携を取り、役割を自然に分担して、素早く行動する。
頼りになるライカン、シアとユミエラは俺達が何も言わないうちにさっと動いてくれるし、それで俺とソーマは手薄だと思うところにつけばいい。
順調に狩りを続けていて、昼食になると、ライカンの収納からうちの宿の弁当と、ユミエラが火魔法でお茶を入れてくれて、なんだか、ほっとする。
狩りの帰りに、知り合いのパーティと行き会った。
見知らぬ冒険者がいる。
パーティのリーダーと話をしたら、昨日マイネに来た冒険者を臨時で仲間に入れたのだそう。
シーザー王国の方から来た奴らしい。
俺とライカンはそのリーダーと話していて、シアはソーマと他のメンバーと話をしていて。
気づいたら、ユミエラはそのシーザー王国から来たという冒険者と二人きりで何か話していた。ユミエラの顔が強張っている。どうしたんだ? 知り合い?
もう少し狩りを続けるというそのパーティと別れ、ギルドに向かい、獲物を提出して買取を待つ間に、ライカンが「先に宿に戻っている」と言って、ユミエラとシアと一緒に戻ってしまった。
ソーマと俺は金額を5等分に分け、三人の分をまとめて預かった。ソーマと別れて宿に戻ると、もう、五人はいなかった。
両親によると急に首都に行く用事ができたとかで、たった今、慌ただしく発ったところなのだと。
俺は慌てて、ジュノーへの道になる門へ走った。
いた!
良かった!
門番と話しをしている!!
「ライカン! ユミエラ! シア!」
俺は叫んで駆け寄ぅた。
「家に帰ったら、急いで出て行ったって!
今日の狩りの金!」
買取の金の入った皮袋をライカンに手渡す。
「三人分入ってる。
なんで、買取の金を待たずに急に発つなんて……」
「ありがとう。すまない、いろいろ事情があって」
ライカンが少し困ったように言う。
「また、マイネに来たら、うちの宿に来てくれよな!」
俺は精一杯の笑顔で言った。
ユミエラがすっと近づいてきた。
「本当に……、そう思っててくれる?」
「え? そう思ってるよ」
「私が何者でも?」
「……何か訳ありなんだろうなとは思ってた。
でも、俺は……、一緒に過ごしたみんなが、ユミエラがいい奴だって知ってる」
ユミエラがふわっと微笑んでくれた。すごくかわいい。
女の子を、女性を、こんなにかわいいと思ったのは初めてだった。
ユミエラは少し悲しそうな表情をした。
「ありがとう……。
後で他人から変な風に言われたら嫌だから言っとく」
ユミエラが俺に内緒話をするように近づく。子どもの時、みたいだ。
「私……、シーザー王国では、娼婦だったの。
親に売られて。
それで、自分で冒険者の副業をしてお金を貯めて、自由になったの。
でも、私の過去を知っていて、脅迫されて……。
ごめん、だから、私とみんなを守るために逃げるわ。
ディーと一緒にいるのはとても楽しかった。ありがとう」
俺はユミエラを見た。
ユミエラを守りたいと思った。
「……もう自由なんだよな」
「うん、でも、こんなふうに過去は消えないから」
でも、今の俺には……。
「ぜひ、また宿に来てくれ」
「いいの?」
俺は頷いた。
読んで下さり、ありがとうございます。




