77 タイミング(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
私とエドガーは居間に戻り、みんなに「名前決まった」とだけ報告した。
明後日、結婚式をして、名前を整えて、そして、時期を見てシーザー王国へ行くことに。
シアも一度シーザー王国へ行って、きちんと過去を清算してきたいと話していたそう。
うん、みんなで行くなら、心強いかな!?
「ユミエラは……」
私の言葉にシアが言った。
「今日、家で聞いてみるわ。
ミコトとエドガーが結婚して、名前を新しくして。
私とライカンと共に過去を清算するためにシーザー王国に一度行くことを考えていることを、ね」
エドガーとライカンとシアは帰ることになった。
私とエドガーの結婚の準備をするとかで……。書類とか?
私の服はマルミさんの白いドレスがあるとかでメグミ様と一緒に私が準備することになった。
私達は三人を送りがてら、騎士団の方へ行った。
怪我した人のその後も気になるしね。
午前中に聖魔法持ちの魔法使いが回ってくれたみたいで、一番重傷だった騎士以外はもう起きて動き回っているそう。
メグミ様は重傷だった騎士の所へ。私はザイマさんとイサクさんとシドさんの様子を見に行くことになった。
部屋を訪ねるとイサクさんがドアを開けてくれた。
「ミコトさん! 来てくれたんですね!」
「シドさんの様子はどうです?」
「午前中に他の魔法使いの方が治療魔法を掛けてくれたんですけど、あまり変化がなくて、身体が重いと」
私はベッドに近づき、シドさんの手を取った。
シドさんが目を開ける。
「あ……、ミコト……」
「シドさん、お話しできます?
どこか痛いとか辛いとかあれば、教えて下さい」
シドさんは目を一度閉じてから、ゆっくりと開いた。
「手を……、握っていてもらいたい」
「……それは治療ではないですけど」
私が苦笑すると、シドさんも苦笑した。
「すみません」
「いえいえ、異国で大怪我して……、心細いですよね……」
ザイマさんが椅子を運んできてくれたのでそれに座って、治癒魔法を掛け始める。
昨日よりは素直な反応だ。魔法の効果が出ている感じがする。
あれ?
でも、さっきの話だと他の魔法使いの治療はあんまり効かなかったとか?
うん、足の方はもう大丈夫。
肩の方も……。
私は立ち上がって、シドさんに半身を起こしてもらおうと抱き起そうとした。
イサクさんとザイマさんも手伝ってくれて、背中に枕やクッションを置いて、必要あればもたれ掛かれるようにする。
「肩の様子を見せて下さい」
包帯の上からそっと触ってみる。
うん、大丈夫そうだけど、護衛の仕事としてはきちんと治さないと支障が出てしまうだろう。
「少し動かせますか?
私の手を怪我した方で握れます?」
シドさんは言われるがままに私の手を握り直してきた。
うん、大丈夫そう。
「力は入りますね。
少し腕を上げられる?」
そう伝えると、横に広げるみたいに腕を持ち上げ、さらに前にも動かして見せてくれる。
見ていて痛いとか顔に出ていないから、大丈夫だろう。
「大丈夫そうですね!
剣を扱うのも問題なさそうです。
今日はゆっくりと休んで。
体力が戻れば、しんどさはなくなると思います。
明日は他の魔法使いの治療をちゃんと受け入れて下さいね!
シドさんが受け入れないと、早く治りませんからね!」
「……明日、ミコト……さんは、来ないのか?」
私は申し訳なさそうに頷いた。
そう、明日、明後日はいろいろ準備もあるし、来れるとは約束できない。
ザイマさんが代わりに言ってくれた。
「ミコトは明後日、結婚するんだ。
書類をギルドに届けたり、いろいろ手続きや準備もあるしな」
「けっ?」とシドさんが目を見開きびっくりしたように言いかけたが「結婚!?」とイサクさんがまるで代わりのように大きな声で叫んだ。
「ミコトさん!?
え? あの、その……、婚約者の方と!?」
「はい、そうです。
もう少し、ゆっくりとは思っていたんですけどね。
予定を早めることになって!」
「そ、それにしても早過ぎでは!?
ミコトさんっていくつですか!?」
あ、ちゃんと言ってなかったか?
「私は14歳です。
一応……、成人したとして認められている年齢ではありますから」
うん、プチ成人というか、個人で何かを契約したりということができる年齢だ。
王族とかだと、幼い頃からの長い婚約から結婚したなんて普通に聞くことのある年齢でもある。
普通の貴族や平民だとだと16~20歳くらいが結婚適齢期って奴かな?
「14って……。
いくらなんでも早過ぎませんか!?」
イサクさんが慌てている。
確かに兄さんのお嫁さんが年下の14歳の少女じゃびっくりするか!?
「私は婚約者と5年以上一緒に過ごしています。
まあ、恋人というかそういう関係になったのは最近ですけど。
彼のことをよく知っているし、愛してますから」
安心して下さい。
エドガーなら、そう、無理強いはしてこないと思う……けど、うん。
「……ミコトさん、不安なことでも?」
シドに言われた。
はっ!
ちょっと不安が洩れてしまったか!?
「いえいえ、不安はないと言えばないんですけど。
やっぱりその……、自分はまだまだ大人とは言えない感じなので……、その……。
うん、大丈夫です。なるようにしかならないから!」
私は自分で何と言っていいか悩んで、でも、最終的に自分でも、なるようにしかならないという言葉に落ち着いた。
うん、エドガーに任すしかない。だから、自分で悩んでもしょうがない。
イサクさんは何だか心配そうだ。
「なんで結婚が早まったんだ?」
シドさんが聞いてきた。
「えっと……」
『シーザー王家に対抗するためです!』、却下!
『エドガーを守るためです!』、却下!
うー、うー。
「えっと……、私を守るためですかね……」
「ミコトさんを?」
「……はい。
私、アサニヤ王国からも、シーザー王国からも狙われてたみたいで。
だから、ですかね?」
イサクさんがびっくりした顔をした。
「ミコトさん、転移者なんですか!?」
あ、それはイサクさんは知らなかったのか!
シドさんもイサクさんほどではないにしろ驚いているようだ。
「はい、コタンにいた時にはアサニヤ王国の王族が追いかけてきたりして、まあ、けっこう大変でした。
シーザー王国からも、なんか追手が来てたり、ありましたしね」
イサクさんは「えっ?」と戸惑うが、シドさんは頷いた。
「はい、エリオット王子ですね」
「シド!? なんでそんなことを!!」
イサクさんが驚いている。
「エリオット第2王子がある少女をマイルズ共和国まで追いかけさせていたのは、王家関係の使用人の中で、ある程度噂になっていますし。
イサクも知っていたのか?」
「いや……。それは……」
イサクさん、嘘が下手だな……。
ん! 『追いかけさせていた』!
この表現だと、過去形!
あきらめたってことかな? 良かった!
「アサニヤ王国が嫌なら、シーザー王国に保護を……」
シドが言いかけてから、何かに気づいて黙った。
「はい、私は自由を奪われるのが嫌で、シーザーもアサニヤもダメなので、マイルズ共和国に逃げて『魔法塔』に保護してもらったんです」
「そうだったのですね……」
イサクさんが驚いたように言った。
無理やり国や王子が追いかけて来ていたってのはわかったみたいだ。
ただ、アサニヤ王国やシーザー王国の人にしてみれば、自国が保護してくれるのは良いことで、正しいことだと思っているんだろう……。
「だから……、急な結婚なのですか!?」
「はい、イサクさん。
そうです。私達はお互いを守るために……、結婚します。
そのタイミングが、今になったというだけです」
「相手は……、どんな?」
シドさんが言った。
「魔法塔の魔法使いです」
私は幸せな気持ちで微笑んだ。
読んで下さり、ありがとうございます。




