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75 治癒魔法の効果(ミコト視点)

どうぞよろしくお願いします。

 エドガーとライカンはシアやユミエラと相談すると家に帰ることになった。

 エドガーも髪の毛を隠すのにフードを被って移動しているんだよ。私とお揃いだね。


「気をつけてね!

 ホークとユミエラとシアに、お疲れ様って!」


 私の声にエドガーは微笑んで去って行った。

 なんかこちらも微笑んでしまう。

 ふと視線に気づいてそちらを見るとメグミ様で……。


「……そういえば、なんであの時、部屋に鍵をかけて……、出て行っちゃったんですか!?」

「あら……そういう雰囲気ではなかったの?」

「……あんな状態でふたりっきりにされて!

 しかも、わざとふたりっきりになるようにしたから、エドガーがっ!」


 その先は恥ずかしくて言えない。


「エドガーが?」


 メグミ様がニヤニヤしながら聞き返すからっ!?


「もうっ!

 私とエドガーで遊ばないでっ!」


 そう言っちゃったよ……。

 ザイマさんが言った。


「エドガー、うれしそうでしたね。

 ひょんなことから結婚が早まって!

 おめでたいですね!」

「もう、ザイマさん!

 ひょんなことって!?

 エドガーの一大事でしょがっ!

 ……はあ、なんか、私だけ空回りしてる?」


 なんかがっくりきて、ソファに座りこんだ。

 ザイマさんが笑って部屋を出て行った。

 メグミ様が「さあ、もう少し仕事頑張りましょう!」と微笑んだ。

 もう……。

 まあいろいろ考えちゃうよりは仕事……、ですね!


 窓の外が少し暗くなってきた。


「そろそろ片付けて、家に戻りましょうか」


 メグミ様の言葉に広げていた書類を片付けて、二人で部屋を出ると鍵を掛けた。

 廊下を歩き出しながら話をする。


「今日の夕食は何にしましょうか?

 スープは食堂に頼んであるから受け取って行かないと。

 後は……、収納してある肉料理があるから……」

「お肉いいですね!

 焼いてある奴ですか?」

「そうね、付け合わせに野菜を添えましょうか」


 なんて夕食のことを考えながら食堂に向かって歩いていたのだけれど、ザイマさんが走ってきた。

 すごく慌ててる、大変なことが起きたようだ!


「メグミ様! ミコト!

 怪我人が多勢!!

 至急、騎士団の方へ!!」


 メグミ様と私は顔を見合わせ、走り出した。

 ザイマさんが案内するかのように少し先を走る。

 私は魔法塔を出る時にフードを被った。視界が狭くなる。走りずらい……。

 ザイマさんがそんな私を見て、ペースを落とす。


「おふたりで先に!

 騎士団ですよね!」


 私は先に行ってもらおうと叫んだ。


「騎士団の施設の方だ!

 練習試合をしていて、怪我を!」

「先に行って下さい!!」


 ザイマさんとメグミ様がペースを戻し、走っていく。

 私はフードの横の部分を手で押さえた。うん、この方が見える。

 視界を少しでも広げるようにして、私もスピードを上げた。

 途中、「ミコト!!」と呼ばれ、見るとキリコさんで!


「キリコさん!

 騎士団で急患で!

 騎士団までザイマさんはもう行ってるの!」

「私も一緒に行くわ!」


 キリコさんが一緒に走ってくれる。心強い。

 騎士団の施設に到着すると、騎士達の方が何人か門の辺りにいて、いろいろ指示している言葉が飛び交っている。

 私を見ると「こちらです!」と素早く案内を始めてくれた。


 キリコさんと一緒に奥の広い部屋に向かう。

 倒れている騎士。他にも怪我をしている人も複数人いるようだ。

 ミコト様が一番奥でたぶん重傷な人の手当てをしていて、その周囲に傷を布で止血されたり、応急的な治癒魔法を掛けてもらっている怪我人が多数……。


「何が原因? 怪我人は?」


 近くにいた騎士が答えてくれた。


「練習試合中に風魔法が暴走し、武器置き場を吹き飛ばして。

 それで、ナイフや剣が飛び散り、怪我を!」


 私は部屋の真ん中に立つとフードを下ろし、深呼吸を2回してから、大きな声で歌い始めた。


「流れる血よ~止まりなさい♪ 

 身体の中に留まって♪

 傷からの血は止まります♪

 傷は消えて血は止まる♪

 傷は塞がり治ります♪ 

 きれいにきれいに治ります♪

 傷は塞がり~痛みは消える♪ 

 きれいにきれいに治ります♪」


 ちょっとみんなぽかん顔なんだけど!?

 恥ずかしさを堪えて一応歌い切る。


「あ、血が止まりました!!」

「傷が塞がった!?

 歌による治癒魔法!?

 そうか! 声だから広範囲に!!」

「もう大丈夫だ!!」


 そんな声が聞こえてきて、ほっとした。


「どうですか?

 まだ血が止まらない方います?」


 周囲を見回すと、まだ止血の動作をしている人がいる。

 イサクさん!?

 えっと、イサクさんとは知り合いでいたら変なんだよね。

 会ってないことになってるわけで……。

 でも、まだ押さえてるの気になる。

 私はイサクさんの隣に行くと座りこんで止血されてる人を見た。

 肩のあたりの傷を止血しているけど、足にも傷がある。

 足の方は血が止まっていた。


「まだ止血されてますけど、止まってない?」

「えっ?」


 イサクさんがそっと肩の傷から布を外した。

 血は止まってたけど、まだ傷が痛々しい。

 動いたら、また血が滲みそうな……。

 私は怪我をしている人の手を取り、祈ってみた。

 ……なんだろう。祈りが、治癒の魔法が入りにくいな。

 私は彼の手を握りながら、背中の傷に手をかざして歌った。


「傷よ治れ♪ 傷よ治れ♪

 身体の組織は元に戻れ♪

 痛みも傷もなくなれなくなれ♪」


 その彼がくすくすっと笑った。

 うん……、笑える元気があるなら大丈夫だな。

 私はにっこり微笑んだ。

 彼は私を見て「黒い瞳……」と呟いた。

 あれ?

 この人、魔法塔の人じゃない……。

 イサクさんといるということは……、護衛のシドとやらでは!?

 会わないように気を付けてたのに!!

 がっくり。

 でも、ちゃんと治さないと。

 止血の布は血塗れで、けっこう出血があったみたい。

 今日は動かさない方がいいかも。

 

「シーザー王国の方ですね。

 治癒魔法に慣れていないからか、効果が出にくかったようです。

 個別に掛けました」


 イサクがほっとしている。


「ありがとう!

 シドは私を庇ってくれて……」


 へー、護衛とはいえ、イサクさんを見張っているというか利用している感じなのかと思っていたけれど。

 思ってたよりいい人なのかな?


「シドさん、ですね?

 出血も止まりましたし、傷も治しています。

 足と肩、肩の方の出血が多かったみたいで。今日は大事を取ってこのまま休んで下さい。

 大丈夫と思いますが、明日、魔法塔の魔法使いに見てもらって下さい。

 えーと……」


 私はザイマさんか騎士の人にでも引き継ごうと、彼から手を離し、キョロキョロ辺りを見回した。

 騎士のひとりが気づいて来てくれた。

 その時、また手を握られる感触にぎょっとした。

 シドさんがまた握ってきている。


「どうしました?」

「こうしてると楽なんだ……」


 痛みが和らぐのかな?

 まだあんまり効いてないのかもしれない。


「ミコト様?」

 騎士が来てくれた。


「シーザー王国からの視察の方ですよね。

 肩と足の2カ所の怪我を治療しました。

 治癒魔法が効きにくいようです。さらに出血も多かったようですし。

 今夜は騎士団の方でこのまま休んで頂くことはできませんか?」


 騎士が団長に聞いてくると奥へ行った。

 メグミ様と団長さんに確認してくれてるみたい。

 私はシドさんの手を握りながら……、不思議な気持ちになった。

 なんだろう……、エドガーと同じくらいの大人の男の人なのに、まるで、子どもに手を握られてるみたい。

読んで下さり、ありがとうございます。

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