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74 再会?(ユミエラ視点)

どうぞよろしくお願いします。

 エドガーっていうか、クルトを探しているらしいって聞いた。

 シーザー王国の王妃様が探していて、そのためにクルトの弟のイサクが動いていて、マイルズ共和国まで来ているらしい。

 弟のイサクって……、クルトが働いて上級学校に行かせてやった弟だよね!?

 それが王家のしかもエドガーのお母さんのスミレ様を嫌ってた王妃様の手先になって、クルト=エドガー王子を探してるなんて。

 ライカンとエドガーが言うには、王妃様や王家としてはミコトのことにはまだ気づいてないようだと。

 イサクもただ兄のクルトを探してこいと言われただけの可能性もあるとは聞いたけど……。



 私にも弟と妹がいる。

 私のひとつ下の弟は14歳になってすぐ家を出た。

 父さんは私と弟が働ければ、もう少し余裕ができるからと家業の問屋の仕入れを借金までして増やしたりし始めた。

 私は12歳から、近所の食料品店の店番としても働いていて。でも、14歳で成人を迎えても、賃金はほとんど変わらず、それほどの稼ぎにはならなかった。

 でも、家の手伝いをやめて、店番の方をメインにしていれば……。

 私ひとりなら細々と暮らせたかもしれない。

 だから、弟のことは責められない。


 弟が稼いでくるのを当てにしていた父は、職人になるために遠くの師匠に弟子入りを自ら決めてきた弟を殴った。

 そのまま、弟は飛び出して、家を出ていった。

 資金繰りに困った父さんは、とうとう私を売ることにしたんだ。

 ひとり残されたミレニアはどうしているだろう。

 私を売ったお金で、借金を返して、家業は何とか建て直して、幸せに暮らしていると思いたい。

 けれど……、ミレニアは今14歳だ。ミコトと同じ。

 なんだか、嫌な予感もするのだ。

 私を売って、一気に大金を手にして、顔を赤くして、汗ばんで、変な笑いを浮かべていた父さんの歪んだ笑顔……。


 

「ユミエラ! こんなんでどうだ!?」

 

 ホークの言葉で我に返る。

 目の前にはエドガーに似せて短髪にして、エドガーの冒険者の時の防具を身につけたホークがいた。


「どう? 兄さんに似てる?」

「似てないよっ!

 別に似る必要はないんだよ!?

 クルトって名乗ればいいんだけなんだから」


 ホークは濃い茶色の髪で青い目をしている。

 まあ、名前がクルト被りなら、もしかして黒じゃなくて濃い茶色でも暗い色だからとかもしやと思ってなんて言えるよな。

 間違ったと言っても、それほど変には思わないだろう。


「ライカン、うまくやってるかな?

 ひとりだけ連れてきたら、それは兄さんの弟の方じゃなくて、護衛の方ってことだよな!?」

「ほら、落ち着けって!

 あんたは別にクルトって名乗って、ライカンの友人って体(てい)でいればいいんだから!

 もう少し大人っぽくしてて!」


 ライカンとエドガーに頼まれて、私とホークはギルドの貸し部屋で待機していた。

 外のエントランスとか店とかだと、ホークがクルトって名乗っているのを怪訝に思ったり、変な表情で見てくる人もいるかもしれないもんね。

 

 エドガーは赤ちゃんの時に、こっそり王城を出され……。ひどい話だよ。双子だからって。そして今更……、そう今更……。

 エドガーをいなかった者として、クルトとして生きていたのに、今更、エドガー王子としてだなんて、な。


 私だってそうだ。

 今更、父さんに娘だと迎えられたくはない。

 もう放っておいて欲しい。

 一度だけ……、家のため、父と妹のために、この身と心を泥の中に沈めた。

 光が見えない生活の中で、シアとエドガーに助けられ、ミコトに出会い、自分を取り戻した。

 自由になった! と見せつけてやりたい気もするけど……。


 ドアがノックされた。

 ホークが緊張して「ひゃい!」と声が裏返ってる……。

 ドアが開いた。

 ライカンがドアを押さえ、男性がひとり入ってきた。

 シーザー王国の服装だ。でも、騎士という感じではなく。 

 護衛って言ってたけど……、ただの護衛ではないってことがわかる。

 たぶん、騎士としての剣技も身につけたうえで、それ以外の……なんていうか強い冒険者が持つ雰囲気ってのを感じた。


「シーザー王国護衛官のシド様だ。

 クルトという名の冒険者を探していると話してた。

 シド様、こちらが私の友人のクルトです」


 シドは鋭い目でホークを見て、それから、ちらりと私を見て、少し驚いた顔で二度見した。

 なんだ?

 私のことを知ってる?

 でも、私には覚えがない。

 なんというか、女性がいて驚いたってとこかしら?


 シドはホークをまたじっくりと観察しながら言った。


「シドだ。

 黒髪、青目の『クルト』という名の冒険者を探している。

 だか……、君は『クルト』ではないな?」


 ホークが少しムッとして言った。


「クルトです!

 髪も暗い茶色なので、黒に間違えられることがある!

 だから……」


 シドはライカンを見た。


「どうやら俺が探している『クルト』とは違うようだ。

 他の色味がかかることなく、真っ黒な髪色だと聞いている。

 それに……、少し若いようだ。違うと思う」


 ライカンは穏やかに、でも、申し訳なさそうに言った。


「それは申し訳ない。

 クルトという名でそうではないかと!」

「いえいえ、誰にでも勘違いはありますから」


 シドが少し微笑んで、私を見た。


「そのお嬢さんを紹介して頂けますか?」


 ライカンが私を見た。


「彼女は私の家族のような……。

 ユミエラという」

「ユミエラです。どうぞよろしく」


 私は少し不愛想にそう挨拶した。


「彼女は強そうだな」


 シドがそう言って、部屋を出て行こうとしてライカンが慌ててドアを開けた。


「ク(・)ル(・)ト(・)さん、ユミエラさん。

 失礼した」


 エドがそう言って身を翻して外へ出て行く。

 ライカンは私とホークに軽く頷いてからドアを閉めた。


「ってー、あいつ何!?」


 ホークが眉を寄せて吐き出すように言った。


「全部見抜かれてたじゃん。

 せめて年齢くらい惑わせたかったね。

 まあ……、ホークにしたら、頑張ったよ!」

「ホークにしたらって、どういう!?

 誉め言葉じゃないよな!!

 ユミエラだって、強そうだって言われてた!」

「あら、それは誉め言葉じゃないの?」

「そうかなー。

 なんか裏がありそうだけど……」

「どんな裏だよ?

 初対面の美女に裏なんかありませんよ」

「……なんか、ユミエラのこと知ってるんじゃないの?」

「知らない人なんだけど……」

「なんか、ユミエラを見て顔色変えてた気がした」

「うーん、二度見はされたね。まあ、美女だから」

「……そういうところが強いんじゃない?」


 私とホークは貸し部屋の中を整えてから出て、ギルドのカウンターへ鍵を返しに行った。

 その時、「ユミエラ!?」と呼ばれた。

 うん?

 振り返ると……、ディー!?


「えっ? ディー!?

 え、なんで!

 ジュノーに仕事!?」


 ディーはほっとした表情で私の所に駆け寄ってくると「髪を切ったんだね。似合ってる」と微笑んだ。


「……ありがとう。

 えっと、ひとり?」

「ああ、ひとりで来た。

 ライカンに手紙をもらって……」

「ああ、到着したばかりなの!?

 お腹空いてるよね!

 一緒に昼ごはん食べない?

 これはホークっていう名で、エドガーの弟分の冒険者なの!」


 私はホークを紹介した。


「これって、ひどいなー。

 ホークっす。

 ディーさんですか?

 ユミエラとはどんな関係?」

「ばっ! 

 何言ってるのよ!」


 私はホークの頭を叩いた。

読んで下さり、ありがとうございます。

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