68 「も?」(ミコト視点)
どうぞよろしくお願いします。
エドガーが少し不安そうに切り出した。
「ライカンとも話したんだが……。
イサクとシドがジュノーに入る前に、ミコト、メグミ様の所に行かないか?」
「メグミ様の所?
お家へってこと?
あ、前に預けるとか言ってた……」
エドガーが頷いた。
「ああ、俺とミコトが一緒に暮らしているってことは伏せておいた方がいいと思う。
エリオット王子が後から聞いて、何を考えるかわからないし」
あ、視察をやり過ごした後の話でもあるのか!?
私は渋々頷いた。
残念……。私の部屋で生活始めたばかりなのにな……。
「でも、魔法塔では姿を確認し合えるしな」
は、エドガーと離れるのも寂しいよな。
私の反応に眉を寄せるエドガー。
「ん? 違うこと考えてた?」
「んっ、エドガーと一緒にいられないのも寂しいけど、せっかく新しい部屋で寝起き始めたばかりなのにな……、なんて」
重ねている私の手を強くつかむエドガー。
「……も?」
あ、まずった。
「エドガーのことは信用してるもの。
で、魔法塔で会えるし。
せっかくのひとり部屋生活を楽しんでいたところだったのになー、なんて?」
微笑んで首を傾げて見せ、私の左手をエドガーの右手の上に乗せた。
どうだ!
ちょっとため息みたいな感じで息を吐いたエドガーが「食べてしまおう」と言った。
私達は手を離して食事を済ませようとし、その時、エドガーが「食べ終えたら庭を歩こう」と言ったので特に何も考えずに「うん」と返事した。
属性魔法の練習に私達は遅れて、メグミ様に怒られた。
エドガーのせいだよ……。
でも、私も責任はあるか……。
昼食の後、庭へ行ったら、人気のないところ、さらに大きな木の陰で、抱きしめられてキスされた。
びっくりして抵抗しようとしたら、「も?」と聞かれて……。
抵抗できなくなった。
やっぱり気にしてたのか……。
最近いつも一緒にいるけど、そういう雰囲気になることがほとんどなかったかも。
魔法塔ではライカンがいるし、家に帰ればユミエラとシアがいるし。
それで、メグミ様の所へ行ったら、確かに一緒にいられる時間が少なくなる……。
もっと寂しがって欲しかったのかな?
長いキスのというか連続のキスの後、エドガーは私の胸に顔を寄せてじっとしていた。
私はエドガーの黒い髪の毛を指で梳いて、軽く抱きしめた。
「メグミ様の所に行くよ。
それはエドガーの足手まといになりたくないから。
エドガーが心配していること、わかったから」
「うう……。
わかってるのに、なんか、すんなり了承されて、俺の方が『も』扱いなのが……」
「……それはごめん。
その、言い方が悪かった。
うーん、そんなにいじけないでよ」
「……じゃあ、これが無事に終わったら、どこかにふたりで出かけよう」
「うん、そうしよう。お互い頑張ろうね」
「うん、そのことを励みに頑張る」
なんか、エドガーの方が私より小さい子みたいじゃない!?
私は笑っちゃって……。
「笑うなよ」
エドガーにまた唇を塞がれた。
そんなことしていたから、遅くなったんです、はい。すみません。
属性魔法の練習の時に、メグミ様に、明日から私をメグミ様の所へ預けたいとエドガーが再度お願いした。
前から、そんな話は出ていたし、私の知らないうちに詳しい話もできてたよう。
「わかったわ。
ミコト、明日からうちに泊まりに来なさい」
「はい、よろしくお願いします。
明日、お泊りの荷物持ってきます!」
「そうね。みんなにもしっかり話をしておかないとね」
「はい!」
そういや、メグミ様の家ってどこなんだろう?
家にエドガーと帰り、シアとライカンとユミエラと何故か来ているホークに、明日からメグミ様の所でお泊りすることを話した。
「えー、ミコトがいないんなら、ミコトのベッドで俺泊ってもいい?」
ホークが言って……。
「「ダメ!」」
私とエドガーが同時に言った。
「ケチ!」
ホークに言われたけど、シアとライカンは笑ってた。
いや、私のベッドにって、女性ならともかく、男性は嫌だ!
エドガーもそう思ってくれたのかな。ちょっとうれしい。
「メグミ様の家ってどこなの?」
ユミエラが言って。
私も知らない。
「魔法塔の敷地の中と聞いたことがある」
ライカンが教えてくれた。
「あー、それなら安心ね!」
ユミエラの言葉に私は頷いた。
そういえば視察のふたりはどこに泊まるのだ?
「視察のふたりはどこに泊まるの?」
「前は魔法塔のそばの宿に泊まっていたそうだ。同じだと思う」
エドガーが教えてくれた。
なるほど、魔法塔の中の宿舎に泊まるとかじゃないのね。
日中だけ気を付ければいいってことか。了解!
自分の部屋で荷物を整理して、持って行く物を収納しているとエドガーが来た。
「さっきは……、ああ言ったけど」
なんのことだ!?
私がきょとんとしたのを見て、エドガーが少し恥ずかしそうにした。
「ホークがミコトのベッドで寝るって……」
「あ、反対してくれてありがとう!
私も嫌だったから」
「ん……、俺だったらいい?」
「え?」
「俺だったら、ミコトのベッドで寝てもいいか?」
え?
まあ、エドガーなら、許すか。
「うん、エドガーなら、いい」
「じゃあ、寂しい時、ミコトのベッドで寝るかもしれない」
「……ん、わかった。
明日、シーツ替えとく」
「いや、そのままで……」
「……わかった」
帰って来て寝る時に替えればいいか。
そんなことがありながら、次の日はライカンとエドガーと一緒に魔法塔へ。
シアとユミエラはホークとギルドで待ち合わせて狩りに行くという。
お弁当をみんなで作り、シアとユミエラは私をぎゅむぎゅむ抱きしめた。
「気を付けてね!
メグミ様によろしくね」とシア。
「何か欲しいものがあったら、エドガーにすぐ言うんだよ。
エドガーに持って行かせるから」とユミエラ。
ユミエラの言葉はわかるんだけど、全然ユミエラ関係なくない!?
魔法塔に到着して、今日から私とエドガーも別メニューで動くことを聞く。
そろそろ視察のふたりがいつ到着するか、というところだからだな。
私はエドガーに抱きついて、一度、ぎゅっと抱きしめてもらった。
大きな手のひらで頭から首のあたりを抱えられると安心する。
昨日は私がエドガーの頭を抱えていたのにな。
そう思ったら、幸せな気持ちになった。
エドガーも私も、お互いに与えて、与えてもらっている。
お互いにお互いを欲しながら、でも、自分の世界も持っている。
ライカンはその時が来るまでメグミ様の護衛につく時もあれば、全体の警護に当たる時もあるという感じで動くそう。
「ミコトのことは気に掛けるから、危ないことになったら、自分でも判断して逃げるように」
そう言ってくれた。
先に私とメグミ様とザイマさんで、メグミ様の家に行くことになり、そこでライカンとエドガーとは一時、お別れだ。
「行ってきます!
ライカン!
エドガー!
気を付けてね!」
メグミ様の家は敷地内の外れの方で、周囲に何軒か同じような家があるうちのひとつだった。
隣がザイマさんちらしい。
ザイマさんちには奥様がいるとのことで、先にご挨拶した。
キリエさんという魔法使いだそう。
魔道具の研究者だそう。
私の左手の指輪を見て目を輝かせた。
「これが噂の指輪ね」
「え?」
「シーザー王家の指輪よね!?」
そんなことが噂に!?
私はザイマさんを見た。
「キリエ……、そんな噂が?」
キリエさんは頷いた。
「魔道具の所では噂になってるよ。
見たら、わかるし」
メグミ様がザイマさんに言ってくれた。
「ザイマ、キリエと一緒に魔道具の所へ行って、説明して来て」
ザイマさんはキリエさんと魔法塔の施設に戻っていき、私とメグミ様は、メグミ様の家に入った。
読んで下さり、ありがとうございます。




